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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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第24話 あふれる想い

 

 高校に入って知り合った聖奈と杏の2人とはすぐに意気投合した。お互いに家庭環境に問題があり家族とうまくいってなくて、毎日のように3人で街に繰り出した。ファッションとかもこの2人の影響を受けた。


 聖奈と杏と3人で遊ぶ様になってアタシは変わった、そこには知らなかったものが沢山あった、何よりもあの父親に()いられた生き方に反抗してるようで楽しかった。


「あー、男ほしー、周りにいるのはガキんちょばかりでつまんないんだよねー」

同感だった、自分の事しか考えてないような子供っぽい男ばかりだ。

「わかる、それな。だったらアッチに任せるっス!」


 それからだった、聖奈の提案で大学生と偽り夜の街で大人の男の人目当てのナンパ待ちやら合コンとかをする様になったのは。


 確かに落ち着いた年上の男性は一緒にいると自分も大人になったような気分になる、その雰囲気は嫌いじゃなかった。


    でも求めてくるものは皆同じだった


 それはそれで、いいのかもしれない。だけど大人の余裕の裏側に隠している本音はどいつも一緒、それに気付いてからは男の人に向ける感情は冷めていった。


 遊びでの付き合いもいいのかもしれないけど、割り切れない自分がいた。けど、その気持ちの正体が何か分からなかった。


「また? いい感じに見えてたけど何が悪かったのさ、いいトコ勤めてたじゃんあの人、勿体なくね?」

「なんだろ? 下心見えた瞬間一気に興味なくなるんだよね」

「かわいそ、花音に下心持たない男なんているわけないじゃん、中々一線超えないね花音お嬢様は」


 アタシの生い立ちは誰にも話してはいないけど、そんな風に思われるんだ。もし、そんな関係になる人がいたとしてもアタシの家柄知ったら手なんか出せないでしょうね。


 そんな時出会ったのが隆幸さんだった。若くして成功した人なのに、謙虚でいて、話す言葉からは誠実さも感じられる、紳士とはこの様な人なのかと思う程だった。


 なぜ今また連絡があったのだろう、でも今のアタシには願ってもない人、このお誘いを断る理由なんてないわ。


——— 当日、某レストラン


「久しぶりだね、桐島さん。突然で驚いたでしょ」

「アメリカから帰っていらしたのですね」

「うん、先月戻って来て(ようや)く落ち着いた所さ」


「それにしても凄いお店、私こんなとこ初めてで緊張します。服装これで大丈夫かな?」

「うーん、目立ち過ぎかな?」

「えっ、気合い入れ過ぎました?」

「桐島さんは誰よりも綺麗だからね」

「もう、隆幸さんったら!」

この感じ何かありそうね、切り出してみようかしら。


「夜景も見えて素敵なお店ね、私何か連れてきて

良かったの?」

「初めて出会った春から丁度仕事が忙しくなってしまってね、その後アメリカに行く事になってしまってキミとは縁がないのかと思ってた。でももう一度会いたくて勇気を出して連絡して良かったよ」

「私も隆幸さんにもう一度会いたかった」

ウソじゃないけど、アタシはこの人を利用しようとしている、でもこの人が本当に誠実な人なら、アタシの気持ちが揺らぐ事もあるのかしら。


「あっ、ゴメン電話だ、か、会社かな。ちょっと席外すね」

相変わらず忙しそうね、さあここから、どう切り出そうかしら。もし面倒みてくれる事になったら、お付き合いする事になるのかな。


ガタ(椅子を引く音)

「隆幸さん、会社からの電話‥‥‥じゃなさそうね」

隆幸さんの席には知らない女が座っていた。


「あら意外と冷静な子猫ちゃんね」

まあね、簡単に信じる程アタシもウブじゃない、今回は彼の本音を探ろうと思って来たけどまさか、連れが乗り込んでくるとはね。

 それにしても気の強そうな女‥‥‥こんな所に乗り込んで来るのだから相当ね。


「息巻いていらしたけど、誘ったのはどちらかご存じで?」

「フゥー、怖い怖い。アナタが引いてくれればそれだけでいいわ、ただ2度と隆幸に会わないと約束して」

「それは彼に言うセリフじゃなくて? アタシに言うのはお門違いよ、そんなアナタだから彼は他の女に逃げたんでしょう?」


「こ、この小娘! 私の旦那に色目使ったんでしょうが!」

「色目? ご冗談を私は何もしていないわ。アナタのご主人が私の色香に魅せられただけでしょう? アナタこそ2度とあの男近づかせないで」

「クッ!」


 彼女がいるかもと思ってたけど妻帯者か、興醒めね。

「き、桐島さん、待ってくれ。話しを‥‥‥」

「奥様とお幸せに」


———


 何となく気付いてたけどね、この手の男が仕事や出張で会えなくなる理由なんて女だもの、でももしかしたらアタシを選んだ可能性もあったのかな。あんな男に選ばれても貧乏クジか、多少疑いはしてたけど見る目ないなアタシ。


 アンソレイユの灯りが見えると落ち着くなあ、帰る場所があるって幸せなんだな。

 でも今は響介とギクシャクしちゃって気まずいけどね、でもアタシもアタシだけど何かアイツ、割りとドライじゃない? 何かこうあるでしょうよ、どうかした? とか、何か気に触る事したかな? とか言ってよね……言われてもか。


もう早くお風呂入りたい!


「えっ、ウソ、チョット待って‥‥‥、落とした!?」

お婆ちゃんから貰ったピアス、大事な宝物なんだけど! あーー、家入ってから外せばよかった。何やってんのよ、アタシのバカ、バカ!


「ただいま! シオりん、懐中電灯ある? スマホのライトじゃ探しづらくて!」

「お帰り花音、何か落としたのかしら?」

「お婆ちゃんから貰ったピアス!」

「あのお婆さんの形見のピアスか?」

「美優姉、生きてるわよ! 勝手に殺さないで」

どうしてまたアタシから離れていくの、大切ものはいつも離れていく。


《そんな低俗な物必要ないだろ》


《あの子と遊ぶのはやめなさい、バカが移る》


《そんな服捨てなさい、お前は私達が用意したものだけ身に付けていればいい》


色んなものが奪われた。


そして聞いてしまった。


《あの子は道具だよ、幸い見た目はいい。嫁ぎ先は慎重に選べ、我が社の為にな。場合によっては婚約させて、先にお手付きさせれば交渉も有利になるというもの》

政略結婚!?

お父様は私を娘として見ていなかった、金になる道具としか見ていなかった。

   

 心が壊れていく、心を持ったらダメなんだ。


「花音どうした? ボーとして。明日探した方がいいんじゃないか、見えないから踏んじゃうかもよ」

ポタ、ポタ、ポタ

ウソ、雨? 待って! 探せなくなっちゃう。

ザー!!

「うわ、いきなり? 花音、取り敢えず入ろ、この土砂降りじゃ無理だよ。明日皆んなで探そうよ」


 天気すら邪魔をするのね。

「うん、そうね、そうしよう‥‥‥」

また、諦めろって事?

「案外、素直」

「平気よ、色々諦めてきた人生だから‥‥‥」

また1つ大切な物がアタシの手からこぼれ落ちていった。

手に入れる事や誰かとの関係を育む事は時間が掛かるのに、失う時は一瞬なんだね。



      ==================



「凄い雨ね、明日の朝まで降るみたいよ、花音、落ち込まないできっと見つかるわよ」

「ボクも学校終わったら探すから元気だすにゃ」

「ありがとう皆んな、取り敢えずお風呂入ってくる」



「相当落ち込んでたね花音、アタシ学校休んでも探すから!」

「ダメよ一華、学校は行くの」

「でも、ママ、早く見つけてあげたいんだよ」


「それよりさ、響、どうなのよ?」

「何が?」 

「アンタの態度だよ。距離取る様になったのは花音からだったとしてもアンタまでよそよそしいのは見てらんないんだが? 今だって一言位あっても良くない? そんな男に育てた覚えはないんだけど」

「そんなんじゃないよ、今は入る余地がなかっただけだよ」

「アンタなら土砂降りの中でも探すんじゃないかと思ってたのにさ」

「無茶言うなよ、俺はそんなヤツじゃない、明日早いんだ、おやすみ」


———


 さあて、そろそろ皆んな寝静まった頃か、アイツどんなピアスしてたっけ。

美優さんに言われるまでもない、はなから俺は探す気だったさ、でもあのタイミングで探し始めたら皆んな気まずくなるだろ。



「そして王子は現れたのでした」

「み、美優さん!?」

「いいね、響。期待通りの展開だよ」

「まさか起きて待ってたのか? 皆んなには黙ってて下さいよ」

相変わらず生態不明な人だな、俺が来なきゃどうしてたんだろ? まさか叩き起こされてた!?

「傘使わないの?」

「邪魔になるからいらない」

「ねえ教えて、何でそこまでするの?」

「勿論、花音の為ですけど、あとは小さな奇跡かな」

「小さな奇跡?」

「俺は人を避けて生きてきたから学校でもボッチだったんですよ。色んな事が苦痛だった。だから願うんです、席替えならアイツの近くは嫌だとか音読とか当てないでくれとか遠足や外でやる行事は雨降ってくれとか、しょうもない小さな奇跡を願うんだけど一度も叶わなかった。普通の人からしたら、しょうもない事でしょ?」


「でもね、わかったんだ。奇跡ってのは自分の為じゃなくて人の為に起こすものだって」

「カッコいいじゃん、期待してるよ。もし見つけられなかったら皆んなにバラすからね。探す前こんな事言ってたんだよー、でも見つけられなかったって、恥ずかしいなー」

「性格悪っ!」

「ありがと!」

「褒めてねーし、絶対見つけてやる! 奇跡起こしてやんよ!」



      ==================



 こんな土砂降りの中で見つけられる何て思ってない。それでもいいんだ、アンタなら今の花音助けてあげられると思ってるよ。


——— 翌朝


「おはよ、皆んな‥‥‥」

あー、こりゃ昨晩泣いた顔だな、アイツ見つけられなかったのかな。でもここからだよ響、花音を頼むよ。

「どしたの一華、アタシに何か用?」

「ふふん、花音、これなーんだ?」

「ピアス!! え、え、何で!? 一華が見つけてくれたの!? いつ!? 何で!?」

ん? 待て、おい。


「探してくれたの?」

「探したと言うか、気にして地面を見てたからかな、朝走りに行く時庭で光る物見つけたんだ。もしかしてって思ったらもしかしたの!」

王子様、出番なかったかー、でも奇跡は起きたみたいだな、それはそれで良かったか。


「ありがとう、ホントにありがとう、一華! 次の休み何か奢るね、それとも何か欲しいものある? 何でも言ってね!」

「ホントに! アタシもいいの? やったー、考えとくね」

ん?

「遠慮しないでよ、じゃあ学校行って来るね、一華、ホントにありがとね!」


「あー、良かった、良かった、アタシも学校行こ」


「一華はウソ付いてるにゃ」 

ギクッ

「な、な、何言ってるにゃ?」

「ほら、動揺したにゃ、ねえ美優タン」

「ウ、ウソ何てついてないよ! それとも誰か響介が見つけた所でも見たの? 言いががりはやめてよ!」

「誰も響介の事は話してないんだが?」

「えっ?」

「まさか自爆するにゃんて、一華は焦ったら時折りおバカになるにゃん」

「それにさっき、花音がお礼すると言った時アタシもいいのかって言ったよね、アタシも!って。ネタは挙がってんだよ、とっとと吐きやがれ!」

「はわわ、無理無理無理ー」

「観念せい!」

「わ、わかりましたー、じ、実は……」



      ==================



「はあーふ、皆さん、おはよう。どした? 朝から騒がしいな」

「おはよ、響、今日は随分とゆっくりじゃん? そう言えばピアス見つかったらしいよ、ねえ一華?」

「アタシ行かなきゃ、行ってくるにゃ!」

「修羅場の匂いがするにゃ、離脱!」


ん、んんー!? 何だ、何だ?

リビングに残されたのは俺と仁王立ちした美優さんだった。

「やってくれたな、王子様!」

何だろこれ? HP1でボスに遭遇した感じ。

何か知らんけど俺終わた……。


———


「納得行くように話して貰おうかい!」

「何の事っすか?」

もしかして、一華のヤツバレたのか? アイツが裏切るとは思えない、だとしたら美優さんに見抜かれたか? 侮れないな、てかあの人いつ大学行ってんの?

「私の目を誤魔化すなんざ1億年早いんだよ! 一華が全部吐いたんだ、覚悟しな!」




《雨止んでたので朝練行こうと玄関出たらズブ濡れの響介がいて、アタシがピアス見つけた事にして花音に渡してくれって頼まれたの。最初は断ったよ、でも響介がどうしてもって言うから、それに……》


《それに?》


《札幌でビュッフェ奢ってくれるって言うんだもん、

仕方ないでしょ?》


《買収されおって》




「てな具合さ、随分と男らしくない事するじゃないか! 花音とギクシャクしてるからって何でこんな時に遠回しな事すんのさ! 仲直りしたくないの? チャンスだったじゃない! 発端が花音でも男なら器のデカさ見せなさいよ!」



      ==================



「ヤバッ、携帯忘れた! まだ急げば間に合うわね」

ピアスが見つかって浮かれ過ぎてた、フフ、一華にはホント感謝ね。


 もう皆んな出たかしら?

うわっ、響介の靴あるじゃん、アイツまだいたの? 出会したら気まずいなー、会わないようにコッソリ行こう。


「そんなんじゃねーよ!!」

な、何!? 響介?

「だったらなんなのさ、ハッキリ言いな!」

美優姉!? 喧嘩してんの!? ど、どうしよう、止めなきゃ、でも、アタシまだ響介と上手く話せない‥‥‥。


「花音は‥‥‥花音は、優しいんだよ」

えっ‥‥‥。

「あの時、俺が怪我して帰ってきてから花音の様子がおかしい事には気付いてた。でも声を掛けられなかった、何となく俺が何かしたんだなと思ったから」

響介‥‥‥。


「だったら聞きゃいいじゃん、臆したかよ」

「だってわかんないから検討違いな事言ったらどうしようって、それでもアイツなら俺が傷つかないウソを言って誤魔化すと思ったんだ。だから様子見して正解を探してたんだけど、わかんないまま時間が過ぎちゃって‥‥‥もっと気まずくなってしまったんだよ」


「だったら今回チャンスだったんじゃない? それなのに子供みたいに捻くれて一華に渡す何てないんじゃないか? あんな土砂降りの中、一晩中探して見つけんだろ? 奇跡起こせたじゃないか、今からでも間に合うよ、花音に言うんだ俺が見つけたんだって、もう仲直りしなよ」

響介が見つけた? ピアスを?

あの雨の中探したっていうの!?



「やだよ! 絶対言わない!」

「響‥‥‥この分からず屋が‥‥‥」

まずいって、美優姉切れたら誰も止められないって! でも何で響介はそんなにアタシを避けるの?


「花音は優しいんだって言ってんだろ! だからこんなギクシャクした状態で渡したらどうなる? アイツ絶対素直に喜べない、それでもアイツはありがとうって言って何かお礼をしようとするんだ、どこかやり切れない顔を隠しながら、そんな、そんな社交辞令みたいな事する花音なんて見たくない‥‥‥愛想笑いするアイツを見たくないんだよ!!」

「響介、アンタ……」


「見たかよ一華から渡されたアイツの顔、凄く嬉しそうに笑ってた、朝コッソリ見てたんだよ俺。今の俺じゃダメなんだ、だから誰が見つけても誰が渡してもいいんだよ。アイツの笑顔が見れたら俺はそれでいいんだ‥‥‥」

響介‥‥‥アタシがキミを避けたんだよ? それなのにキミは……。


「痛いんだ、胸が、痛むんだよ。もう慣れた痛みだと思ってた、周りから避けられたり、シカトされたとしても耐えられるようになったんだよ、でも花音がよそよそしい態度取る度にその痛みは増していくんだ」


「俺、ゴリラみたいな及川にも立ち向かったよ? カッター振り回してきた聡士先輩にだって傷付く事すら忘れてやり合ったんだよ? 美優さん、俺、強くなったんだよね? なのに怖いんだよ……これ以上、花音に嫌われたくないんだよ!!!!」


 ダメ! 折角気持ちを整理したんだよ、なのになんで、こんなにも胸がざわつくの? 苦しいのよ……


     もう‥‥‥どうにでもなれ!!


バァァン!!

壊れるかと思うくらい勢いよくドアを開けた、そんな事気にすらならなかった。


「響介!!」


「か、花音!? 学校行ったんじゃ‥‥‥」


「……なるわけないじゃない、響介の事……嫌いになんて、なるわけないじゃない!!!!」


 アタシは響介の胸に飛び込んだ、驚いた顔と困った顔もしてる。それが何かわかってるよ、アタシをどう受け止めようかケガさせないようにって考えてる。

 そういうとこだよ、そんなキミだから


       好きになったんだよ


 前も言ってたねアタシが優しいって、こんなアタシなのに綾香さんの所でも怒ってた、アタシの為に。

ハンバーグの時だってアタシの為に無理して頑張っちゃって。いつもキミは誰かの事になると周りが見えなくなる位一生懸命で必死になるね。


《何で年上に(こだ)るのさ、結局中身じゃん、大人でも、ガキみたいなの一杯いるさね》


 でも同級生や周りの子はやっぱり子供っぽくて冷めてしまう。

聖奈や杏と知り合ってからは夜の街に繰り出すようになった。別にヤバい事をしてたわけじゃない、大学生だと偽って落ち着いた大人の人が通うようなお店に出会いを求めに行ってただけ。


 余裕のある大人は違う、一緒にいると落ち着くし自分も大人になれた気がしてた。

 でも結局皆んな求めるものは同じだった。アタシをアタシとして見てくれていた人なんて1人もいなかった。

 そんな背伸びした生き方に疲れて足を降ろした時その目線の向こうに響介がいたの。

年下でダサくて、子供っぽい事が好きでいや寧ろ子供だなと思う事の方が多くて、まるでアタシの恋愛対象外だったのに一緒にいるのが楽しくなっていった。

ふざけて、いがみ合う関係も好きだった。

でもその時はまだその感情が何かわからなかったの。



でもね今ならわかるよ、アタシは、響介が好き。


ドサッ!

勢い余って床に倒れてしまったけど、やっぱり響介は

アタシをケガしないように守ってくれた。


「どうしたの! 今の音は何!?」

「栞、向こうに行こうぜ。それと頼みがあるんだが、

学校に電話してくんない? 花音と響介休むってさ」


 感じる、響介の体温、息遣い、鼓動、すごく激しいよ、アタシもかな? 


「響介‥‥‥」

「なに?」

 好き


「響介‥‥‥」

「うん」

 好きだよ


「響介!」

「は、はい」

 大好き


「か、花音?」

ギューと力一杯抱きしめた、響介の体温、鼓動を感じながら、あったかい。


 もういいの、このまま響介への気持ちを抱えてあの家に戻されて心が壊れても、いいの。


 響介がアタシを助け出そうとして、あの人を敵に回しちゃってもいいの。


 その時はアタシが守るから、全部投げ出してでも必ず響介を守るから。


 アタシを見てくれなくてもいいよ、キミが笑っていてくれるなら、それだけでアタシは幸せだよ。


   だからせめてキミのそばに居させて‥‥‥


        その時が来るまで



      ==================



「もう学校始まっちゃったな」

「うん」

「サボろうか」

「うん」

「取り敢えずここ出ないと栞さん達にサボりバレちゃうな、起きようか花音」

俺の上で横たわる花音をそっと起こした。


「んっ」

花音は顔を赤らめて恍惚とした表情で俺を見つめていた。

ドクン

なんだろう? 胸が痛む、いや今までの痛みと違う。


「ゴホン!」

「キャッ! 美優姉!?」

驚いた花音は俺から離れる所か抱きついてきた。

か、顔が近い‥‥‥花音は俺の方へ振り向いた、花音‥‥‥まつ毛長いな、琥珀色の大きな瞳に吸い込まれそうになる。花音は綺麗だ、その中に可愛いさも併せて持っている。

ドクン

花音から目が離せない‥‥‥。


「ウオッホン!」

「か、花音!」

思わず花音を引き離した。

切ない顔するなよ、何だ今日の花音可愛い過ぎる。

「キミ達今日は休みな、栞さんには伝えてるから学校に連絡してくれてるはず」


「花音、チョット来な」



      ==================



「誰が誰を好きになろうと構わん、でもここはシェアハウスだ、人前では度が過ぎる事がないようにな? なんの事かわかるよね花音」


「わかってるよ美優姉、響介と人前でイチャ付くなって事でしょ、うん、気を付けるよ。それに大丈夫だよ、響介はアタシと恋愛する気はないだろうから‥‥‥」


 随分としおらしいな、でも2人の関係は私達にも影響出てくるからね、私からも今はこれ位しか言えないけど。


「ヨシ、どこかドライブにでも行こうか!」

「車はどうするの?」

「栞さんに借りたよ!」


———


「海は遠いし、道の駅でも行くか、いいとこ知ってんだ」

「美優さん、何でまたドライブに?」

「家に居てもヒマじゃん、学校サボったから街に出るわけにも行かないしね」

「ありがとう美優姉、天気も良くて最高ね」


 本音はね、あのまま家で2人っきりにさせたくなかったんだよ、何かおっぱじめそうな雰囲気だったじゃん! 車もしれっと2人で後部座席に座るし、お姉さんドキドキもんだよ!


———道の駅


「えー、凄い広ーい!」

「ここはね、パークゴルフやアスレチック、キャンプ場もあってね自然を満喫できるのさ」

「響介、ソフトクリームあるよ、行こ、行こ!」

あれま、手なんか繋いじゃって嬉しそうに。

あんな柔らかい表情出来る様になったんだね、花音。初めてウチに来た時のアンタからじゃ想像つかなかったね。



《入学式までまだ2週間あるわ、改造しちゃわなーい? ナ•メ•ク•ジ•く•ん•を》


フフフ、人生どう変わるか何てわかんないもんだね、感謝してるよ響介、花音を助けてくれたんだから。 



      花音、わかってるかな? 

    アンタを変えてくれた男の子は



     アンタが変えた男の子なんだよ


















ここまで読んでくださってありがとうございました!

ここで一区切りしたいので次回掲載は1週間後を予定しております。

第2章からは更新速度が5日置きになる事をご了承ください。他にも出したい作品のネタが多数あり、中編位でこの作品と並行して作っていきたいと思ってます。

よろしければ、また、読んで頂けると嬉しいです。

指摘や意見等ありましたら遠慮なく申してください、

今後の作品作りに活かしていきたいと思います。


次回は11/18のお昼に更新します!


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