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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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18/26

第18話 誰が為に


「おはよう一華、今日も早いね、調子はどうだい?」

「まあまあですね」

「全道大会準決勝まで行ったんだから凄いよな」

「私なんか、まだまだですよ。1年で全国へ行く人がいるのですから」

玲彩の事か。


「そう言えば、そのキーホルダーって誰かのお土産?」

一華がシューズバックにつけているキーホルダーが気になり聞いてみた、だって道民なのに北海道の形のキーホルダーを付けてるんだもん、あまりいないよ、そんな人。


「えっ? これは小さい時にお父さんに買ってもらったものです。当時この形がなぜか気に入って欲しくてせがんだ記憶があります。お父さんも不思議がってましたが、今は私も同じ気持ちですね、フフ。どうしてあんなに欲しかったんでしょうね」

「子供の時ってそういう事あるよね、後から何で買ったんだ?って思うものがさ。」


「でもお父さんとの思い出があるので今でも付けてるんです。」

「そっか、お父さんとの思い出か、もしかしたらお父さんも一緒に走ってくれてるのかもな」

なんだ? 一華がキョトンとしてる、変な事言ったかな。


「アナタの言葉はたまに、胸に響きますね」

「そ、そうかな」

「シャワー浴びたいのでこれで」


 久しぶりに長く言葉を交わした一華の顔は心なしか穏やかに見えた。

思えばこれは何かの前兆だったのかも知れない、この後そう思えるような出来事が待っていた。


——— 昼休み


「なあ憂太、この前言ってたBBQっていつやんの?」

実は密かに楽しみにしていた、友達とやった事なかったから。

「ああ、場所によっては予約必要なんだもんな、早めに決めないと取れなくなるか」

「アタシは全国大会と合宿があるから、夏休み後半がいいな」


「凄いじゃん玲彩、1年で全国なんてさ」

「へへーん、褒めて褒めて!」

ホントに凄いヤツなんだな玲彩は。あれから玲彩とは少し距離が近づいた気がする、互いに秘密を共有してる様な感じだな。


 一華は全道大会の準決勝までだったがそれも凄いと思う。憂太はサッカー、槇斗は大学目指して塾通ってるし、それに琴子だって、琴子? ‥‥‥はまあ置いといて皆んなそれぞれ頑張ってる。俺にも何か目指すものはないのだろうか。


「あ、それでさ、BBQの話しなんだけど、夏休み後半にやるとしてウチの庭でやってもいいらしいがどうする?」

「響介の所って、確かシェアハウスだろ?」

「うん、そこの人達も参加するんだけど逆にいいかな?」


「僕はいいけど知らない人達だよね」

「妾は構わぬぞ」

「マジか! それって美人オーナー栞さんとBBQってことだよな!? いるのか、いるんだよな栞さん!」

「い、いるよ、ハハ」


「夢野もでしょ」

「えっ、あのクールビューティーも? なんで?」

「あと、まあ、皆んなが知ってる顔が2人ほどね……」

「誰だよ? 響介、勿体振るなよ」

「まあまあ、当日紹介するからさ」


 来愛と花音の事だが今言ってここで騒がれても困るな。

 来愛は学校ではキャラを変えてお嬢様風で通してるらしい。1度見かけたが学校仕様の来愛は誰? と思う程物腰が柔らかくお淑やかだ。抜群のスタイルと端正な顔立ちに加え、清楚系も取り入れた学校仕様はアンソレイユで見る来愛とは別人だ、女神様扱いする者もいるらしい。


 花音はギャル系に加え、あの物言いなので賛否は別れるも、人目を引くには充分な美しさを備えている。

なので学年違えど、この2人を知らない学生はいないだろう、ただ花音の場合、一度玲彩と揉めてるのが心配だが。


「響介、心の友よ! この神セッティングに俺の心は震えているぜ!」

当日の憂太の浮かれ様は容易に想像できるな。

「鈴羽も呼んでいいかな」

「勿論だよ、これからは普通に連れて来なよ槇斗」

この2人の交際は学校内でも噂になった。小鳥遊さんは、あの小鳥遊グループの会長の孫娘だし、成績優秀者の学年1.2位が付き合うんだもんな当たり前か。


 夏が始まる……。

短い夏だからこそ満喫したいな。

今年の夏は楽しそうだ。


———


 いやー、疲れた、さや子師匠の修行はいつも激しい、部活並の運動量じゃないか。


 さあ帰るか、玄関から出るとガラの悪い4人組みとすれ違った。正確に言うとガラの悪い男子生徒3人と女子生徒1人。女の方は陸上部のジャージだ、一華も着てたからすぐわかった。しかしあのような(やから)はどこにでも居るのね。


 と、すれ違った瞬間、違和感を感じて足を止めた。今の連中の男の1人が持っていた小袋に見覚えがあったからだ。

揺れていた、北海道の形をしたキーホルダーが。


ドッドッドッドッ

鼓動が速くなる。


何でアイツ等が?

いや、気のせいだろう。

ホントに北海道の形だったか?

だとしても同じ物持ってる奴だって……。


 いないだろ! こんな狭いエリアに2人もいるか!


また迷う……。


1択じゃなかったのか? 


足が震える。


 でも、相手は(やから)が3人もいるんだぞ。

それに人気(ひとけ)の無い校舎裏に向かって行った。


「カナ、私のシューズ知らない?」

「知らんよ」

「すぐ戻るからここに置いてたんだけど」

「盗まれたんじゃね? なんて、ハハ」

「アレにはキーホルダー付いてんだよ! 大事な物なの」

「ごめん、冗談だから。一緒に探そ!」


 玄関内から都合良く聞こえてきた一華達の会話。

タイミングよ……。

 一華に教えてやるか、いやダメだろう、危ない気がする。なら先生か? 職員室行ってる間に見失うぞ。


       見なかった事にしよう


———


「どうするコレ?」

「カッターで切り刻んで下駄箱に入れときゃいいじゃん」

「お前好きな、カッター。危ないヤツ」

「お前が言うなよカツアゲ常習犯」

ハハハハハハ! ヤツ等のゲスな笑い声が響く。


「何かアレ付いて来てねーか」

「は? んなわきゃねーだろ」

あんなヤツ等とやり合う度胸も無いのに、気付かない振りも出来ない。

 その葛藤(かっとう)に震える心を鼓舞して、自分を誤魔化す様に言い聞かせる、確認するだけだと。


「見られたら面倒くせー、一応追っ払うか。」

「おい、何付いて来てんだコラ!」

スルーしろ、ただ確認するだけだ。違ってたら適当に誤魔化して逃げればいい。


「何だコイツ、シカトしてんじゃねえ!」

ああやっぱり、見間違えるはずなんてない。


 俺は奴等の前で立ち止まった。

「返してもらおうか……それ」

「あっ! 何言ってんかわかんねーぞ、コラ! 因縁つけてんのか、テメー!」


ドッドッドッドッ

言っちまった、これでやるしかねーぞ、覚悟決めろや、アレはアイツの大事なもんだろうが!!


 ガシッ!

先手必勝! 俺は一華のシューズを持ってる奴に体当たりした。相手がよろめいた隙に俺はシューズバックを奪ってやった。


 予想外な俺の攻撃に奴等はたじろぐも、すぐに反撃してきた。

 一瞬やれそうな気がしたが2人に取り押えられてしまった。

 すぐ逃げればよかった。


「アンタ誰よ!」

「お前等こそ、一華のシューズ盗んで何する気だ!」

「一華だってよ? 彼氏かよ、ウケるわ! やっちまおうぜ! オラッ!」


 俺は羽交締(はがい)めにされ一方的に殴られ続けた。何で? 俺強くなったんじゃないのか? 体が思った様に動かない。


《響介、喧嘩はやめ時な、お前は勝てるタイプの人間じゃないからな》


《でも、結構蹴りとかも速くなってきましたよ、紗夜子さん》


《喧嘩はねぇ、腕力も必要だが、胆力なんだよ》 


《胆力?》


《腕っぷし強くてもそれが無けりゃ、ただのサンドバッグさ》


「シューズ寄こせオラ!」

渡すもんか!

ドフ!

強烈な前蹴りを腹に喰らった。

「グェ! チ、チキショウ……」


「ハッハー、頂き! カッコ良かったぜ、王子様? 

最初だけわな!」

奴等の下衆な笑い声が響きわたる。


 ク、クソ、シューズ取られちまった、でもキーホルダーは取り戻したぞ。チェーンは切れちまったけど。

「な、なんでこんな事を……」


「は? 生意気なんだよあの女! 少し位足が速いからって(いき)ってんじゃねえぞ! 愛想もないし、速いのがそんなに偉いんか!」

く、くだらねえ、ただの八つ当たりじゃねえか。


「可哀想に、妹をこんなにしたお前の女が悪い」

チキチキチキチキ

何だアイツ、カッター出しやがったぞ?

やめろ、やめろよ、何する気だよ!?


「切り刻んでやるよ、こんなシューズ!」

「バカ、やめろよ! クソが、ダセー事してんじゃねー!」

「オラ、暴れんじゃねー! 彼氏様は何も出来ず、ただ見ていただけだとさ、ハハハハハ!」


 ザク!

「ヒャハハハハ! 最高だぜ!」

「お兄、もっと盛大にやって下駄箱にぶん投げといてやろうよ!」

 そ、そのシューズとアイツが、どれだけ頑張ってきたと思ってんだ……。

「……のヤロー!」

「おいコラ、大人しくしろ! な、コイツ、急に力が……」


ガン!

羽交締めしてるヤツの顔面に後頭部を叩きつけ、押さえている力が緩んだ隙に振り解く。


 《そんな近くてどうする! 間合いだ、蹴りの間合いを体に叩き込め! 1番力が乗る間合いを覚えろ!》


 間合いを取れ! 後ろへのワンステップからの師匠直伝の後ろ回し蹴り!

「ゴフォッ!」

入った!!

 実践初の後ろ回し蹴りは羽交締めしていたヤツの腹に深々と突き刺さった。


「シゲ! 何やられてんだバカ! こ、この、く、来るんじゃねー!!!」

ザシュ!

えっ!?

ポタ、ポタ、ポタ

「バカ、聡士(さとし)、何やってんだよ!!」

「お、お兄……」

切られた……顔? マジかコイツやりやがった。


「こ、こ、コイツが悪いんだ! 迫ってくるから。俺は悪くない、悪くないぞ!? コイツが勝手に切られたんだよ! 近寄ってきたから! み、見てただろ? お前らも見てたよな!」


「に、刃傷沙汰(にんじょうざた)はマズいだろ? これは聡士がやるって言い出したんだろ? お、俺は関係ねえからな!」

(みつる)、お前……」

「そうだよ、アタシだって、そこまでしてなんて言ってないから!」

「翔子……テメーら、全部……全部俺のせいにするのかよ!」


 切られたのは額か、血が目に染みる。

「そんな事言っていいのか満、あの事学校にバラしたら、どうなるかな、お前!」

「クソが、ホント、腐ってんよ、テメー」

「オラ、バラされたくなかったら、ちゃんとソイツ押さえてろや! 逃げんのは許されねーんだよ!」



「そうかよ、んじゃ、押さえといてやるから、とっとと決着(けり)つけんかい!」

「だ、誰だ? テメー!」

「お、及川?」

及川が満と呼ばれていた男にヘッドロックをかましていた。


「響介ーー!!」

「待て一華、危ないから下がってろ」

紗夜子さんまで、来てくれたのか?

「響介、血、血が! 何されたの!? アナタ達、響介に何をしたのよ!!  離して、先生! 離してってば!」

一華、なんて顔してやがる、俺はお前のシューズ守れなかったんだよ。


「おい、お前、刃物なんざ、ダセー事しくさって覚悟はできてんだろうな?」

紗夜子さんが聡士を威嚇(いかく)する。


 一華が紗夜子さんを振り切って駆け寄って来た。

「バカ、お前何来てんだよ! 巻き込まれるぞ」

「バカはキミでしょ! あの人達がアタシのシューズケース持っていった所を見ていた人が教えてくれたの。何で? どうして? 取り返そうとしてくれたの? アタシのシューズを……こんなになってまで」

見られたくない、あの切り裂かれたシューズ。その時一華はどんな顔するだろうか。悔しさと怒りが胸に渦巻く。


 一華は泣きじゃくりながらハンカチで傷口を押さえてくれている。一華って感情が(たかぶ)ったら1人称がアタシになるのな。


「ヤサグレ教師まで来やがって上等だよ、テメーら! やってやらー! かかって来いよ!」

バン!!

聡士は興奮しシューズを地面に叩きつけ、カッターを振り回し威嚇してきた。


 叩きつけやがった!? 一華の靴を……。


「きょ、響介、ダメ!」

それを見た瞬間俺の血液は沸騰した。一華の手を振り解き反射的に走り出していた、投げ捨てられた靴目掛けて。


 悔しかった、一華が色んな想いを背負いともに駆け抜けてきたシューズ。



 一華を叩きつけられた気がして怒りが込み上げた



「バカヤロー! 何やってんだ、背を向けるな!」

ザシュ!

「グァッ!」

不用意に飛び出した俺は、背中を切られた。


 そうか、アイツ、カッター持ってたっけ、シューズしか目に入っていなかった。



「響介ーー!!」



 血で滲む視界、切られた額と背中の痛み、刃物か。でも、そんなものはどうでもいい、お前は……



          許さない


         


 俺は一華のシューズをそっと地面に置き、立ち上がった。

「そんな使い物にならねえシューズ拾った所でどうなるんだよ! お前もそのシューズの様にしてやらー!!」


「バカヤロー! 真壁! ボーとしてんじゃねー! ちっ、クソが!」

「待ちな、及川、加勢はならん」

「紗夜子、それでもお前は教師か!」

「もう少し見せろ、いらねえもん吹っ切った弟子の姿を、もう少しだけ見たいんだよ」


 聡士がカッターを振り(かざ)しながら、襲ってくる。俺はその振り下ろす腕目掛け間合いを詰めた。

「バカかテメー! わざわざ切られに行くヤツがいるか!」

うるせーよ、及川、黙って見てろ。


 聡士がカッターを振り下ろすより速く、俺が間合いを詰める事で体を当てそれを制した。

「やるじゃないか響介、少しでも臆していたら出来ない技だ」


 体が触れ合う緊迫のゼロ距離。聡士の荒い呼吸と焦りが伝わってくる。

「先輩、アンタの暴力は自分も痛めているのがわかんねえのか?」

「何言ってんだテメー! 偉そうに説教タレてんじゃねえよ!」


 この人の暴言や暴力は薄っぺらくて、剥がせばその中に怯えて泣いている子供が隠れている。

 きっとこの人も、子供の時に時間が止まった犠牲者だ。


  だからといって人を傷付けていい訳じゃない



 《ウソツキ! ウソツキ! ウソツキーー!!》


 あの時、俺が乱暴に振るった言葉の刃はどれだけ鋭く痛かったのだろうか、でもその刃には握る為の(つか)は無く、振るった(がわ)の手も血だらけに染まるんだ。そしてその後に襲ってくる虚無感が少しずつ、少しずつ心を侵食していく。やがてそれは後悔となり心の足枷になっていく、それが人を傷付けた者への罰であるかの様に。


 そんな俺だから見える、アンタはどれだけの足枷を引きずって生きてきたんだ?


    

      俺が切ってやるよ その足枷



「間合いを詰めて止めたはいいが、カッターを奪う訳でもねえ、まさか俺を諭す気か? 偽善者が! この距離で()わせんのかよ!!」

至近距離からの攻撃、間合いが無い。俺は半歩後ろにステップする。


「中途半端な逃げこそ、相手には絶好の好機、臆したか響介!」

この時の俺は何も考えていなかった。頭の中はずっと切り裂かれたシューズを抱いて泣きじゃくる一華を想像していた。このシューズを渡したらきっと人が見ていない所で泣くんだろうな。


 聡士のカッターが顔の前まで迫っていた、しかしそれより先に俺の前蹴りが聡士の顎を蹴り上げる。

 その衝撃で聡士は後ろへ()()った。


 イメージ通りだ。接近戦での間合いの取り方は、幾つか用意していたから。

 俺は軽く後ろにステップした、間合いが無ければ作ればいい。


         必殺の間合いだ


 渾身の後ろ回し蹴りが聡士の腹に炸裂した。


 無様にぶっ飛んだ聡士にはもう立ち上がる力は残っていなかった。


「響介、お前には喧嘩は無理だと思っていた。1歩踏み込み度胸が無いヤツは幾ら鍛えた所で勝つ事は出来ない。しかし見事だった! 刃物に怯む事なく踏み込んだのだからな」


「買い被り過ぎですよ紗夜子さん、恐怖何て感じる余裕が無かっただけです、一華の事で頭が一杯だったから」

「え? ちょっと、きょ、響介、こんな時に、な、何言ってるのよ!」

一華、顔真っ赤じゃん。


惚気(のろけ)るなら、2人きりの時にしろや、イケメン!」

「なんで及川が?」

「この前は、ちとやり過ぎちまったからよ。それにまたひ弱なイケメンがひ弱な根性出してるとこを見に来てやったんだよ、夢野にも頼まれたからな」


「及川くんは、小鳥遊さんの幼馴染みなの。千堂くんとも顔見知りで色々あって、あの時は小鳥遊さんを心配して探してたんだって」

顔に似合わない事するなよ紛らわしい。


「響介、早く手当しないと、先生お願い!」

「ああ、保健室行くぞ、響介。後はテメー等、処分は覚悟しとけよ」


「せ、先生、待って! 違うの! これはお兄ちゃんが勝手に!」

「そ、そうだ俺達は聡士に(そそのか)されただけです、先生!」

コイツ等は……。


「ハハハハハ! そうだよ、全部、俺が、俺様が、勝手にやったんだよ! そうなんだよ……」

聡士……。


「クソ喰らえだ! オメー等全員! クソ以下だ!

この世の中も! そして俺はそんなクソ以下のお前等よりももっとクソ以下だ……」

やっぱり、この人はずっと闘ってたんだ、孤独と。


「でもな、こんな俺にもプライドがある。俺の事は誰にも裁かせねー! テメーで終わらせてやるよ!」

何言ってんだ、アイツ、嫌な予感がする。


「翔子、俺みたいになるなよ……」


「お、お兄ちゃん!?……」


「バカかお前、やめろー!!」

及川が叫ぶ、俺は聡士を止める為、全力で走った。

頼む、間に合ってくれ!


 聡士はカッターの刃を自分の喉元へ突き立てた。その刃は冷たくて感情の欠片も無い、ただ切るという自分の役割りを忠実に遂行する。



       流れる血は後悔の涙か?


       その血は、ただ、ただ

   

          赤かった











聡士へ投げかけた言葉が自分に跳ね返り、過去の過ちに気付いた響介は、大事な部分が何も変わっていない事を知る。響介は今回の騒動で何を感じ、その先に何を見たのか?


第19話 気付けなかった想い 11/1 お昼更新です!

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