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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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第11話 弟子入り


「お願いします! 俺を弟子にして下さい!」

今俺は1時限目をサボり保健室にいた。

「うーん、やめ時な、お前の根性は認めるが俺は加減ができねーんだ。生傷耐えんぞ?」

昨日、薄れゆく意識の中でも鮮明に記憶に残ったあの後ろ回し蹴り。あの及川を瞬殺したこの人から学びたい。あんな無様なやられ方はもう嫌だ!


「そこを何とかお願いします! 強くなりたいんです!」

「フー、しつこいな。で、お前は何の為に強くなりたいんだ?」

「自分の為です! 昨日、先生に助けてもらえなければ友達の大事な時間を守れなかった、アイツの力になりたいって思っていたのに。次こそは誰かを守れる自分でありたいんです!」


 渾身の土下座でお願いした。

ドス!

えっ? ええー!? なぜ俺の背中に座るんだこの人……。

「足を伸ばして腕立てだ!」

「は、はい!」

な、な、何が起きてるんだよ!?

もしかして俺、怒らせた? 紅の紗夜子を……。

それにしても何て横暴な人だ、いきなり人の上に座って。 何か腹立ってきたぞ、クソがやってやらー!


 腕を曲げた後体を起こせるかだ!

「ウォォォー!」 

クッ、もう少しだー!

ベチャ!

「グェ!」

気合いだけではどうにも出来ない事もあるよと、自分を慰めた。


「ふん、惜しかったな、やりもしないで諦めるなら門前払いだったが少しは根性があるようだな。今日の放課後から来な、鍛えてやるよ」

「ホントですか! やったー! あと少しで持ち上げれたんだけど、紗夜子さん意外と重くて、ハハ……ハーー!?」


 紗夜子さんから巨大な赤いオーラが見える!

これが紅と言われる由縁かー!

「お前、すぐ調子に乗るタイプだろ?」

「い、いや、は、はい、スミマセン」

「防げよボウズ、我が鉄拳を!」

「さ、紗夜子さん、ま、待って……」

アアアーー!!



———


 いやーエライ目にあった、でも、紗夜子さんの弟子になれたんだ、やったぜ!


「紗夜子さんのお尻の感触の余韻がまだ背中に……柔らかかったなー」

「何が柔らかかったって?」

玲彩!?

「朝から保健室って聞いて心配したんだから! 昨日の事も聞いたし……」

玲彩心配してくれてたんだ。


「及川は手強いね、さて、どうしてくれようか!」

「れ、玲彩? その件はもういいからさ、大丈夫だから」

花音との時に思ったけど、この人喧嘩っ早い?



———昼休み


「響介、及川とやり合ったってか? 俺も呼べよ!」

「ホント、びっくりだよ。原因は何? 一方的に喧嘩売られたの? だったら及川、殺るよ‥‥‥」

滅相もない事言うな!

「奴は入院したらしいぞよ」

「その話しホントか琴子?」

先生の蹴りエグいな、それよりも紗夜子さんマズくない? 生徒を病院送りにしたって事じゃないか。

「顎を粉砕されたのか……」

「違うぞよ、足を骨折したらしい」

足を? 何やら話しが見えないな、あの時足をケガするなんて事なかったはずだが、もしや意外と俺のしがみつきが効いたのか?


「で、いつ襲撃する? 入院してる部屋が個室ならやりやすいんだがよ」

「大部屋でもカーテンで仕切れるからいけるんじゃない?」

「まず玲彩が同室の患者に差し入れを配り注意を引く、玲彩は黙っていれば、そこそこ可愛いから男共の視線は玲彩に集まる。その隙に憂太が及川の寝込みを襲う。儂はすぐに仕切りのカーテンを閉め、憂太が及川を抑え込んでるウチにアレでトドメを刺す、ここまでで10秒じゃ、できるな!」

「おう!」

「任せて!」

「ダメだろ! オイ!」

てか、手慣れてない? この人達フツーの高校生だよね? と、俺は槇斗に視線を送ったが視線を逸らされた。……槇斗?


「冗談だって響介、ムカつくけど入院してザマァだぜ!」

「どしたの、響介?」

「お前ら裏でヤバい事してないよね、随分慣れた会話だったからさ」

「幼馴染みじゃからの」

幼馴染みのスキル、ヤバッ。でも心配してくれてるのは素直に嬉しいな。


 それよりも槇斗の様子が変だ、殆ど喋ってないし、さっき視線を逸らされた時、動揺してるように見えた。



「でもまあ、ようやく中間試験も終わったし、部活に専念できるな」

「しかし槇斗は入学試験に続きまたもや学年2位とは儂も鼻が高いのう」

「ハハ、ありがとう琴子」

「お前も自慢になる結果残せや琴子」

「そういうお主らも赤点あるじゃろうて、のう憂太、玲彩?」

「だ、だ、大丈夫だ!」

「そうよ、そんなの憂太だけなんだから!」


 そっか俺は部活入ってないし自慢する訳ではないが、そこそこ勉強できる方だから気にしてなかったが、コイツ等にとって試験は大きな壁か、薄々思ってはいたがやはり、赤点レベル? 

 1位は小鳥遊さんか、才女で美人だもんな。そんな子に好かれる槇斗も凄いけど、あの後上手くいったんだろうか? 昨日の件ちゃんと気持ち伝えたってメッセで槇斗から連絡もらってたけど、今日の様子、何かおかしいんだよな。



———放課後


「おいおい、小鳥遊さんじゃん、誰か待ってんのかな?」 

「女友達じゃね、相変わらず美人だよなあ」

クラスメイトの会話が気になり廊下に出て見ると教室側の壁に寄りかかった小鳥遊さんがいた。


 何だよ槇斗、やっぱ上手くいったんじゃん。俺は槇斗を呼んだ。

「槇斗、槇斗、姫様が待っておられますぞ」

「えっ!?」

良かったよ、昼休み様子おかしかったから心配したんだからな。

「ああ、じゃ、先帰るよ」

2人で下校なんて羨ましいな。


「小鳥遊さん、槇斗元気ないから慰めてやって」

「ちょ、響介!」

「槇斗、まだ気にしてるの? 直哉の事」

直哉?


「小鳥遊さん、直哉って誰?」

「及川くんよ、及川直哉。彼は私の幼馴染みなの、前から槇斗とチョット揉めていて昨日も、ね?」

「鈴羽、アレは……」

「何があったの? 気になるな」

「いいよ、その話しは。ゴメン響介帰るわ」


「ダメよ槇斗、真壁さんにはちゃんと伝えるべきだわ、それに直哉のあのケガは槇斗のせいじゃないから」

「俺、先に玄関で待ってるから鈴羽から伝えて、じゃ」


 槇斗はそそくさと行ってしまった、なんなんだ?

「体は大丈夫かしら、真壁さん、直哉に暴力振るわれたんでしょ?」

「知ってたの?」

「うん、昨日あの後帰りに他の生徒達が、真壁さんが直哉に、その、ボコボコにされたって話してるの聞いちゃって」


 あー、あの無様なやられっぷり見てた人がいるのね、オモクソ恥ずいわ。

「槇斗がキレちゃって、その日の夜、直哉を呼び出して事情聞こうとしたら喧嘩になったらしくて」

「呼び出した? 槇斗が? 及川を?」

何か想像つかなくて頭がバグる、どう見ても喧嘩するタイプじゃないだろ。

「そ、それでまさか槇斗が及川を?」

あの筋肉ダルマを?


「違うよ、直哉が勝手にゲガしたの。槇斗を蹴ったら交わされて壁を蹴ってしまったらしくて、それで骨折したらしいわ」

「そっかー、ビックリしたよ、及川と喧嘩する位、槇斗が強いのかと思ったよ。」


「えっ、知らないの? 真壁さん。槇斗、中学の時、空手の全国大会で準優勝した事あるんだよ」

「……」


———


 槇斗何者なの? 勉強もスポーツも出来て喧嘩も強くて、あんな美人な彼女? もいて。世の中、不公平だー! と、小鳥遊さんと別れた俺は嘆いていた。

さてこれから保健室で修行なんだが、今日の俺は一味違うぜ! このやり切れない思いをぶつけてやるー!


———


「たらいま‥‥‥」

「あら遅かったのね響ちゃん、お帰りなさい」

「紗夜子さんに放課後ご指導受けてるのでこれからは、帰り遅くなります」

「あの紗夜子が面倒みるなんて大人になったわね」

「愛想はあまりないと思うけど、優しい人だと思いますよ」

でも今日は鬼だったな、俺が槇斗の件で気合い入ってたから紗夜子さんをやる気にさせてしまった。


「昔は人を寄せ付けない位、手に負えなかったわ、誰かれかまわず噛みついてたからね」

「こわっ!」

「丸くなったものね」

怒らせないように気を付けよう。

あと、流星の栞? あの件は聞かなかった事にしよう、俺の中の清楚な栞さんのイメージが壊れてしまう!


「お兄ちゃん、お帰りなさいませ」

「ただいまココ、顔に絵の具付いてるよ、ちょっと待ってな」

俺はティッシュを濡らしてきて顔を拭いてやった。どうやったら顔に付くのか不思議だが一生懸命描いてたのだろう、相変わらず可愛い子だ、癒されるな。


「ありがとうございます、お兄ちゃん」

「どんな絵描いてるんだい?」

「い、今は人物画です……」

「見てもいい?」

「わ、笑わないで下さいね」


 俺はココのアトリエに案内された。1階の4畳半の空き部屋を使っているらしい。

そこには今まで描いた絵がびっしりと立て掛けてあった。凄いな、こんなに描いてたのか、ホント好きなんだな。


「見ていい?」

「う、うん」

キャンパスを保護するように掛けられた布をめくると、あらっ、独創的! これは人によって賛否が分かれるなぁ。

「正直に言っていいよ、お兄ちゃん、下手だって……」


 うっ! 確かに上手いとは言えないが、日頃一生懸命描いてるからそんな事言えない。

「水彩画上手い人知ってるが会ってみるかい?」

「えっ、ホントですか!? 是非会いたいです!」

春コッチに来る前に戻って来てたから当分いるはずなんだよな、あの人。


「それ、アタシも行っていいかな? ニヒッ」

花音が悪戯っぽく笑う。

「行くってトイレにか? お先にどうぞ」

「違うわよ、バカ! アンタの地元にって事じゃん!」

「やめろ、ソファーのクッションで殴るな!」

「わぁ、花音ちゃんも一緒に行こ!」


———次の日


「あら今日は3人でお出掛け?」

「栞さん、はい、俺が前住んでた家の隣りにプロの画家がいるんで、ココちゃんの参考になればかと」

「プ、プロ!? お兄ちゃん、昨日そんな事言ってなかったよ!? ど、ど、どうしよう、そんな人の所にいきなり行って迷惑じゃないかな」

「大丈夫だよココ、迷惑なら俺が一杯かけたから。筆折ったり、使ってないキャンパスに落書きしたり」


「サイテー、そんな響介と一緒に行って大丈夫なの?」

「何だ、プロと聞いてビビったか花音? お留守番してていいんだぞ?」

「ムカッ! アンタこそどうなっても知らないんだから、助けてあげないからね!」

「うーん、大丈夫かね、このメンツ」


「大丈夫よ美優姉、アタシがいるんだから!」

「そこが1番不安なのよ暴走機関車娘だから」

「もう!」


「ココ、ちょっと、来て」

何だろ栞さん、ココ連れて奥の部屋に。


———


「さあ、行きましょうか!」

「ココちゃん何かあった?」 

「ありました! い、いやいやいや、ないないないです! 花音ちゃん早く行きましょう!」

相変わらずウソが付けない子だな、フフ。

でも栞さんと何かあったのかな。



    何の気無しにした事が(のち)

      意味を成す事がある



 久々の地元への帰省と言っても20Km位しか離れてないが、この旅が次の物語へと俺を連れて行く。



     また1つ歯車が回り始める


    

     









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