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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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10/26

第10話 当たって砕けるな


 ああ、学校ダルいな。

と、うなだれながら歯磨きをしてるのだが、どうしてこうなった……。


 何故か来愛が隣りで一緒に歯磨きしてる!

これじゃまるで同棲してるカップルじゃん!

まだ女性陣が洗面台使う時間じゃないだろ!?


「どうした、早いな来愛……」

「いえ、ただ早く目覚めたので」

「そ、そうか」


 誰かに見られたら面倒だ、先に退散しよう。

クイッ、んっ? シャツを掴まれた。

「ほ、ほんとは、み、見たかったのです」

「な、何を?」

「朝1番に響介くんの顔を……」

な、何言ってんの来愛ーー!!


「そ、そか。こんな顔でいいなら、い、いつでも……じゃ、2度寝すんなよ」

俺は逃げる様に部屋へ戻った。

何なんだよもう! 来愛あんなに可愛いかったっけ?



======


 変な女だって思われちゃったかな?

響介くんが悪いんだよ? 男の子に抱きしめられるなんて初めてだったから。


 元々初めて会った時から可愛いって思ってた、海斗くんにソックリで。でも彼は日に日に男らしく、カッコ良くなっていく。海斗くんが人間だったらっていつも淡い幻想を抱いてた。 


《来愛って何人も告白されてんのに未だに彼氏作んないよね、どういう人ならいいの?》 


 高校に入ってからは何人も告白された、ボクの何がいいのだろうか。栞さんや美優タンはボクに沢山おしゃれとか教えてくれて変わっていけたからかな。


 正直男の子は苦手、だけど響介くんは海斗くんに似てたからチョット気になってた。

 でも響介くんは変わっていった、見た目の変わり様には驚いたけど、中身もどんどん素敵な男の子になっていく……。


「そろそろアタシが使っていいかしら?」

「あっ、ゴメンね花音、早いんだね」

「アナタ程でも? 一緒に歯磨きだなんて彼女にでもなった気分かしら?」

み、見られた!?


「昨日あの後何があったか知らないけど来愛はもっと他の男も知った方がいいわよ、ちょっと何かあっただけで惚れちゃうのはどうなのかしら?」

違う、違う、違う、違う!


「こんなの小学生でも……」

「違う!! そんなんじゃないから!」

「えっ……」

「ふぁー、おっぱよ。どした? 洗面台位仲良く使いなよ」

「美優タン、おはようございます。では」


「アンタ、何かした?」

「べ、別にアタシは、それよりも美優姉……」

「ん、何?」

「下着じゃん! 響介いるんだからね!」



======


——— 昼休み


 俺は小鳥遊さんのいる1-Bへと向かった。


《槇斗、アレから小鳥遊さんと進展はあったのか》

《ゴメン響介、実はあれからまだ鈴羽と話してないんだ、この前話そうと思って教室いったんだけどクラスメイトの男子と楽しそうに話してて、話し掛けづらくて》

《何だよそれ位で、小鳥遊さんはお前を追いかけてきたんだろ?》

《でも相手がねチョット面倒臭いヤツでね、もう少し様子見ようかと》


 何やってんだか、槇斗らしくないな。ならダチとして俺が何とかしなければ! 槇斗とそんなやり取りがあり俺が出陣した訳だ。


 だが小鳥遊さんの側にいる例の男を見て納得した。あれは何だ筋肉ダルマの大男じゃないか。


 あれをどうにかしなければ小鳥遊さんに声を掛けるどころか、近づく事も出来ないぞ。


 さて、どうしたものか……。

「アナタは何をしてるのかしら? 私に話し掛ける訳でもないなら隣にいないで」

「ご機嫌よう、一華。今日もクールだね。」

小鳥遊さんと一華は同じクラスなのだ。

俺だって好きでしかめっ面女の側に居る訳じゃない。でもね、小鳥遊さんといる男、デカいだけじゃなくツラも(いか)ついんだよね。近づいただけで絡まれそうだな。


「た、小鳥遊さんに用があっただけだよ……」

「また、ゴニョゴニョと」

何か怒ってない? 一華さん。

「ハ、ハーン、それならアタシにまかせなよ? アタシはカナ! 小早川香菜(こばやかわ かな)だよ。キミは?」

「ま、真壁響介だ、ありがとうカナ! 助かるよ」

マジ助かったー、命拾いしたぜ。


「随分女性の呼び方に慣れたのね、初対面なのにあんな自然にファーストネームで呼ぶなんて。え? 何て顔してんのよ」

「そ、そんな訳、な、ないだろ、へ、変に思われないように、俺のあらゆる力を集約して、ファーストコンタクトに全振りしてんだよ……ああダメだ、もう限界、陰キャ出そう……」

「プッ、何それ? 最初から出てたけど? フフ」

マジかー!


「連れてきたよん、響介くん!」

「あのう、私にどのようなご用でしょうか?」


 あっ、一瞬言葉を失った。艶のある長い綺麗な藍色の髪を靡かせて現れた彼女は(まと)っているオーラが違った。周りの空気が澄んでいて、その美しさに思わず(ひざま)づいてしまいそうになる。しかも初対面で緊張してるのか、はにかむ様に上目遣いで俺の顔を見てくる。表情、仕草、満点です!


「イタ!」

「えっ、大丈夫ですか?」

「いや、急に足つって……」

「ウフフ、何もしてないのに足つる人初めて見ました」

ワオ! マジか! 顔の前で指を軽く合わせて恥じらいながら笑う姿は正に女神!  


「イタ!」

またかよ、コイツさっきから見えない様に蹴りやがって。コイツも陰でクールビューティーなどと言われてるようだけど、極稀に見せる屈託のない笑顔は女神に引けを取らないと思うんだけどな。


 ん? なんだ、なんだ、あの筋肉ダルマ腕組みしながら睨んでるじゃねーか! あんな奴に目を付けられたら俺のスクールライフは間違いなく終焉を迎える、早く帰還せねば!


「た、小鳥遊さん、いきなりゴメンね。渡したい物があってさ、槇斗から何だけど。放課後校舎裏で待ってるから!」

俺はダッシュで逃げる様に帰った。

 


=====


「違って良かったー! あの子も鈴ちゃん目当てかと思ったよー、セーフ!」

「何でカナが嬉しそうなのよ?」

「だあってさ、イケメンじゃん、響介くん! 名前で呼んでもらっちゃった、えへ。ね、一華、彼の事詳しく教えてよん」

「それじゃ用が済みましたので私はこれで」

「相変わらず綺麗な子ね負けんなよ!」

「だからなんの勝負?」



———放課後


 俺は槇斗を連れて校舎裏の待ち合わせ場所に向かった。槇斗には理由を話してない、今の槇斗なら言えば逃げそうだから。


 そこに着くと既に小鳥遊さんが待っていた。

風に靡く髪を押さえながら立っている。ただそれだけなのになんでこの人はこんなにも美しいのだろう。


「鈴羽……何で?」

「えっ、槇斗?」

「騙したな、響介、いくらお前でもこれは許せないよ!」

「そうなるよな、こんな荒技やっちゃってんだから。でもお前だって騙してんじゃん自分自身をさ。俺には

逃げてるようにしかみえないぜ」


「そんな簡単な事じゃないんだよ」


「槇斗は頭がいいから考え過ぎちゃうんだよ。ホントはとっくに答えは出てるはずさ。」

「ホント、キミって猪突猛進というか、人の心にズカズカ土足で入ってくるんだからさ、全く……」


「俺はね、ずっと殻に閉じこもって生きてきた。その方が傷つかなくて済むから。でもね、言わなきゃイケナイ事を言わなかったが為に傷付く人だっているんだよ」

「だからそんな簡単な事じゃないんだって! 鈴羽は

あの小鳥遊グループ会長の孫娘なんだから!」


「何だ、そんな事か」

「そ、そんな事って」

槇斗が自分から動けないんなら……。


ドン!

「キャ!」

「何すんだ、響介!」

俺は小鳥遊さん目掛けて槇斗を突き飛ばした。槇斗を受け止めた小鳥遊さんは動揺しているようだった。


「槇斗、難しく考えんなよ! 小鳥遊さん、ソイツよろしくね、イイヤツだから!」

「はい! 知ってます!」

足枷を自分で外せないのなら、後は小鳥遊さんに任せよう彼女ならきっと。

さあ、邪魔者はとっとと去るか。


「真壁さん! ありがとう!」

俺は振り返らず手をヒラヒラと振った。


頑張れよ、槇斗!



———


 玄関に戻ると一華がいた、これから部活か。

「夢野! 小鳥遊見なかったか?」

げっ!? 昼休みの筋肉ダルマ!

「及川くん……見てないよ」

「お、昼間のヤツじゃねーか、お前小鳥遊どこやった?」

ヤバッ、覚えてたのか。

〈響介、相手しない! 逃げて〉

逃げる? ああ、その意見、大賛成だ、だけど……。

「聞いてどうすんだよ?」

「響介!?」

「テメー、誰に言ってんだ、こら!」

筋肉ダルマは俺の襟を掴み締め上げてきた。

「止めて! 及川くん! 困ってるじゃない」

「困ってる? ビビってるの間違いだよなー! 色男」


 チキショー、いきなりかよ。話し合い出来ない種族か? マジ怖いんですけど、でも学校じゃ迂闊に暴力は振るえまい。

「し、知らないな、帰ったんだろ?」

お前に何か教えるかよ。


ドン!

グハッ!

「舐めてんじゃねーぞ、コラ! とっとと吐きやがれ! 鈴羽はどこだ!」

襟首掴まれたまま、オモクソ壁にぶち当てられた。

なんつーパワーだよ。


「やめて! 及川くん!」

「一華、誰か先生呼んで来てくれ、脱走したゴリラが

暴れてるって、ほら早く行けって!」

一華を巻き込まないよう気をつけねーと、ほら早く行けよ。俺を気にしながらも、一華は走って行った、あの感じならすぐ先生を連れて来てくれるだろう。


「ほう、言うじゃねーか」

ボフッ!

丸太を腹にぶち当てられたかと思うほどの衝撃が腹を突き抜けた。

グェッ!


 殴りやがったコイツ、脳みそまでゴリラかよ。

俺はあまりの痛さに立っていられず、壁にもたれながら崩れ落ちた。それでもヤツは容赦なく蹴りを俺に浴びせ続けた。


「ハン! 口だけかよ情けねー、無駄な時間だったな。クソ、探しに行くか」


体が激痛で悲鳴をあげてる、情けねー、所詮俺はこんなもんか。


《父さんは嫌いだなその言葉、当たって砕けろって、カッコ良く聞こえるけど砕けたらお終いだろ?》

何で今思い出す?


 砕けてない、砕けてたまるか……。

まだだ……まだ俺は……砕けてない! 


 俺は及川の足にしがみついた。

「ゼッテー行かせねーぞ!」

槇斗達の邪魔はさせねー!

「し、しつけーヤツだ!」

そのままヤツは俺を壁に蹴り飛ばした。その衝撃は

俺の意識を奪っていく。

ガハッ! 離すな、絶対離すな、俺はまだ

「く、砕けてねーぞ……」


「テメー! 死にてーか、コラ!」

   

「物騒な言葉やな、オイッ」

薄れゆく意識の中その人は現れた。


「何だテメー、やさぐれ教師のサヤコじゃねーか」

保健室の乾紗夜子先生が立っていた。


一瞬だった。


 一閃、紗夜子さんの背中が見えたと思った瞬間回し蹴りが及川の顎を貫いていた。


 白衣を纏い黒のタイトスカートから惜しげもなく露わになった美脚から繰り出される洗練された一撃は、美しく獣を狩った、その姿はあまりにも美しく鮮明に焼きついた。


 及川は脳震盪を起こしその場に崩れるように倒れた。

ハハッ、助かったのか、一華が紗夜子先生を連れてきたようだ。

そして俺もいつの間にか気を失っていた。



======


「紅のさや子たー、アタシの事よ。テメーより遥かに強い相手に立ち向かったソイツの方がよっぽどイカしてるわ、そうだろ? 彼女ちゃん」

「か、彼女じゃ、な、ないです‥‥‥」

「とりあえず保健室に連れてくか、手伝っておくれ」

「は、はい! あのう、及川くんは?」

「ほっときな」


響介は何であんな無茶したんだろう。


「いいと思うよコイツ」 

「え?」

「彼氏にするならさ」

「え、えと‥‥‥」

「親に迎えに来てもらわんとな、コイツの名前教えてくれ」

「あ、あのう、その人、真壁響介くんの保護者は私の親です‥‥‥」

「あ、姉弟だったか、すまん、すまん! 彼氏彼女の話しはいかんかったなー、ハハ」

「違います。姉弟じゃないです‥‥‥」

「はへ?」

私は先生に事情を説明した後ママに連絡をした。

先生には付き合っている様に見えたのかな。



———


 ガラガラッ!

「響ちゃん! 大丈夫!? だ、誰が、こんな事を!」

「ママ‥‥‥あのね」

「おい、お前!」

ママが振り返った瞬間だった、紗夜子先生がママを蹴ったのだ。何してるの、この人!?

「ママ!?」

ウソ!? 及川くんを倒したキックをママが片腕で止めちゃった!?

な、何が起こっているの?

「やるねぇ、流星の栞」

「その名で呼ぶなって言ってるでしょ紗夜子」

はい? 



=====


「そうだったのか、旦那さん亡くなってシェアハウスを営んでいたのか」

どうやらウチの保健室の先生と栞さんは友達だったらしい、ここで今、偶然再会し話しが盛り上がっている。

うーん、起きるタイミング失った‥‥‥。

槇斗‥‥‥上手くいったかな?


 その後俺はタイミングを見計らって今起きた振りをして帰路に着いた。

「さあ着いたわよ、響ちゃん身体大丈夫? お風呂1人で入れるかしら? それとも一緒に入る?」

マジで?

「ママ!」

「ウソ、ウソ、冗談よ」

うっ! 一華に睨まれた。

「響介、肩かそうか?」

「マジで? やっさしいな今日の一華ちゃん」

「チョット、くっつき過ぎ、どこ触ってんのよ!」

「ハッハー! 甘いな一華、病人と思わせて実はメッチャ元気でしたー!」

「死ね!」

「辛辣ー!」


「たっだいまー!」

「お帰りなさい、お兄ちゃん! 怪我は大丈夫ですか? ママが慌てて学校行ったので心配してたんですよ!」

「響介くん! 喧嘩したの? ダメじゃない! 響介くんに何かあったらボク、ボク‥‥‥ソイツをコロスわ‥‥‥」

「来愛、それは止めようね」

「フフ、冗談よ‥‥‥」

目が座ってるよこの人、冗談に聞こえないわ。


「コテンパンにやられたか、響」

「お恥ずかしい限りで‥‥‥でも俺のしがみつき作戦にヤツはたじろいでたな」

「それ自慢するとこかね?」

「そこしかないんだよねー、ハハハハ!」

「響、シャワー浴びてきなよ」

「え? 1番手いいんすか?」

「今日は特別さ」

「ハッハー! では初の1番シャワー頂いてきます!」



———


「どした花音? ずっと黙ってて、てっきり1番先に飛び付いてくと思ったんだけど?」

「美優姉、気付いてた? アイツ無理して笑ってたじゃん気取られないよう、はしゃいで無理しちゃって見てらんないわ‥‥‥」

「花音、変なこと考えないように、仇打ちとか」

「なっ、べ、別に、な、何でアタシがあんな奴の為に!」

「わかりやすいよ、アハハ」

「もう、美優姉!」

「心配ないわ、花音。私の親友がやってくれたから。じゃなければ今頃私が‥‥‥ウフフ」

「シ、シオりん!?」

「夕飯は響ちゃんがシャワー上がってからにしましょう」

「は、はい」



———


「遅いね、お兄ちゃん、いつもならもう上がってくるのに」

「洗いづらいのかしら、やっぱり一緒に」

「ママ!」

「響介くんが喧嘩なんて、一華は理由何か知ってるんですか?」

「詳しい事は分からないけど、友達の為だったと思うけど‥‥‥」


「相手はどんなヤツだった?」

「ラグビー部の体が大きいゴリラみたいな人」

「アイツ、そんなヤツと喧嘩したの!?」

「やるねー、でも相手にならなかっただろ?」

「うん、だから逃げてって言ったのにそれでも立ち向かって行った‥‥‥、震えてたクセに」

「ヒュー、やるねー!」

「やっぱりアタシ許せない!」

「ボクもです! 刀の錆にしてやります!」

「花音! 来愛! 大丈夫って言ったでしょ‥‥‥」

「は、はい‥‥‥」

「ママ、怖いよ‥‥‥」



———


「いやーさっぱりしたぜ! おや? 皆さん、お揃いで、そか、夕飯俺待ちか? ゴメン、ゴメン!」

「チョット、アナタ上、着なさいよ!」

「そんな女の子じゃあるまいし、なあ、ココ」

「ハ、ハヒッ!」

何か茹ダコ見たいになってんな。

「響、少し筋肉付いてきたね、男っぽく見えるよ」

「男だから、美優さん!」

今まで何だと思ってたんだよ。

「さあ、夕ご飯にしましょう!」


「でも良かった、落ち込んでなくて」

「え?」

「頑張ったけど、結構派手にやられちゃったからさ、かなり落ち込んじゃうかと思ってた。でもこんなに明るいから響介って割とタフなんだね、アタシだったらヘコむけどな」

〈一華、いい過ぎだって!〉

「えっ、私、そんなつもりじゃ‥‥‥」

「‥‥‥なわけない」

「ヤバッ、一華、謝んな!」

「平気な訳ないだろ! お前にも無様な姿みられて、紗夜子さんが来なけりゃ、アイツに槇斗達の邪魔されてたかもしれなかった。それなのに、それなのに俺は、無様にやられ気を失ってたんだぜ? こんな情けないことあるかよ!!」



———


 怒りのあまり俺はメシも食わず自室に引きこもった。あー、やっちまった。情けねーな、ゴメン栞さん。


 コン、コン。

「は、はい」

「一華です、ご飯持ってきました、入ってもいいですか?」

一華、さっきのは悪気がなかったとわかってはいるが今は顔を合わせたくないんだよ。でもあの時アイツ凄く申し訳無さそうな顔してたな。


 気分は乗らなかったが、俺は仕方なくドアを開けた。

「どうぞ」

「ご、ご飯持ってきた、あっ、机に置くね。あ、あのね、さっきはゴメンなさい、配慮が足りなくて」

「いいさ、俺も怒鳴って悪かったな」


 何だ随分としおらしいこって、いつもこうなら可愛いんだけどな。

「とりあえず座って」

立ったままモジモジしてる一華に机の椅子を差し出した。


 何か言いたそうだったから部屋に入れたんだがなんで黙ってんの? 何なんだこの間は、た、耐えられん!


「いやー、何かカッコ悪いトコ見られちゃったなー、今日は、ハハ」

「ううん私こそあんな事言っちゃってゴメンなさい。それにカッコ悪いなんて思ってないから」

「そうか?」

「うん、普通できないよ、あんな事。弱いのに、メチャクチャ弱いクセに逃げないなんて」

この子、ナチュラルに傷えぐるなあ。


「そ、それでね、そんなに頑張ったのはあの子の為なの?」

「そうだよ」

「そっか、凄く美人だもんね。成績優秀で優しくて‥‥‥」

「俺のダチとその想い人。何か似てるんだよねあの2人、上手く言えたかな槇斗‥‥‥。あ、槇斗って俺のダチで小鳥遊さんとは幼馴染みでさ、いや俺はそれ以上の関係だと思ってる。だからすれ違ったまま何て見てられなかった。お互いの気持ちを確かめられるまで誰にも邪魔させたくなかったんだ、でもこのザマだけどな、ハハ」


「えっ、てっきり私、響介が小鳥遊さんの事‥‥‥」

「ない、ない、何言ってんだよ、高嶺の花過ぎて、そんな風に思いもしないよ。それにダチの大切な人だしな」

「そっかそうなんだ。でもアナタはホントに変わりましたね、それじゃゆっくり休んで。お邪魔してゴメンなさい」



======


「一華、響とちゃんと話せたかい? 男ってさどうしても意地張んなきゃならない事があるんだよ」

「私も失言でした、彼、思ってた以上に男の子なんですね、以後気を付けます、おやすみなさい」

「おやすみー」

ありゃ、案外クールだね。響介ともしかしてって思ったけどあの子に限ってそれはないか……。


 でももう高校生だよ一華、恋の1つでもしてほしいのに、いつまであの時の事に縛られてんのさ。

そろそろ自分を許してあげないと二度と恋なんて出来なくなっちゃうよ。


ここまで読んで頂きありがとうございます!! 

次回からは1日置きの更新となります。この作品はまだまだ序盤です。少しでもクォリティを上げ良い作品に仕上げていける様頑張ります! 今後も読んで頂けると嬉しいです!! 次回は10/16 お昼に更新します!

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