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また転校か…

朝の静かな校庭に、小さなエンジン音が響いた。

「プスン、プスン」と軽やかに鳴るその音は、古びたが鮮やかに塗り直された小さなレトロバイクから発せられていた。


バイクは校門の前で速度を落とし、ゆっくりと進む。注目を集めたのは、決してその音の大きさではない。むしろ、その異様な姿だった。


それは、まるで時代に取り残されたかのような古いホンダ・モンキー。だが、車体は光沢を放ち、革張りのシートも新品のように艶めいている。まるで誰かが過去から救い出し、現代に蘇らせたようだった。


運転しているのは、灰色のオーバーサイズジャケットにクラシックなヘルメットをかぶった少年。背中には大きなリュックを背負っている。その姿は落ち着いていて、周囲の視線を避けることも、逆に意識することもなかった。


彼は校庭の隅にバイクを停め、ゆっくりとヘルメットを外した。黒髪が風に揺れ、無言のまま校舎を見上げる。

そこには「Cita Bangsa 高等学校 ― 卓越、倫理、創造」という看板が掲げられていた。


名前は、レイジ・オナディオ・レン。

転校生。――これで五校目。中学時代から、学年が上がるたびに転校を繰り返してきた。


彼は誰に声をかけるでもなく、職員室へ向かって歩き出す。その足取りは決して急ぎ足ではないが、ためらいもない。教え子たちの視線が突き刺さる中、ただ静かに歩を進めていく。


廊下に差しかかると、ざわめきが耳に届いた。数人の男子生徒がロッカーの前に集まり、痩せた眼鏡の少年を取り囲んでいる。


その中で一番大柄な男――腕に「Ⅻ」と刺繍されたジャケットを羽織った生徒が、被害者のバッグを勝手に漁り、小さな黄色い飲料ボトルを取り出した。

それを一口飲み干すと、空になった容器を持ち主へ投げ返した。


そして、彼の視線はレイジへ向けられる。


「おい、何見てんだ? 新入り」


挑発的な声。しかし、レイジは答えなかった。ただ一瞬だけ彼を見返し、微かに笑みを浮かべる。

――歓迎の笑みではない。むしろ、関わる気はないという意思表示。


レイジはそのまま歩き去った。名前を覚えようとはしなかったが、顔は忘れない。


遠くでチャイムが鳴る。新しい一日が始まった。

その瞬間、小さな歯車が動き始めたことに、誰もまだ気づいてはいなかった。



教室の扉が「ギィィ」と音を立てて開いた。

ざわついていた空気が、一斉に静まり返る。


戸口には、転校生のレイジと黒いスーツを着た長身の男性が並んで立っていた。

副校長のサティヤ・ナガラ。厳格だが公平と評判の人物。その存在だけで、教室の空気が引き締まる。


「皆さん、おはよう」

重厚な声が響き、囁き声が消えた。

「今日から新しい仲間が加わる」


期待と好奇の視線がレイジに集まる。


副校長は彼の肩に手を置き、担任へと目を向けた。

「ユリ先生、あとはお願いします」


文学を教える担任の女性教師、ユリは柔らかく微笑んだ。知性を漂わせるその瞳は、レイジをじっと見つめる。


「では、自己紹介をどうぞ」


レイジは一歩前に出て、落ち着いた声で言った。

「初めまして。レイジ・オナディオ・レンです。よろしくお願いします」


先ほどまでノートに集中していた生徒たちも、今は顔を上げ、新しい転校生の姿に注目していた。

レイジは十七歳。現在、高校二年生で、タンゲラン郊外にある名門校「チタ・バンサ高校」に通うことになった。


数人の女子生徒は、ひそひそ話をしながら微笑み合い、頬を赤らめている。その中の一人、眼鏡をかけたポニーテールの少女は、慌てて視線をそらし、わざとらしく教科書を開いた。しかし、彼女がレイジを盗み見ているのは明らかだった。


レイジは静かに立ち、制服のポケットに手を入れ、できるだけ平静を装おうとした。だが当然、教室の隅々から注がれる視線を強く感じ取っていた。その視線には、好意的なものもあれば、懐疑的なものもあり、ただ単に好奇心に満ちたものもあった。


ほとんどの生徒は興味深そうにレイジを見つめていたが、その中でも特に真剣な眼差しを向ける者がいた。教室の隅に座る一人の男子生徒だ。鋭い目つきで、誰よりも長くレイジを観察している。その瞳はわずかに細まり、レイジの冷静さの裏に潜む何かを読み取ろうとするかのようだった――表には出ていない、不安の影を。彼は一言も発しなかった。ただ、その強い視線が教室の空気を緊張させていた。


「では、レイジ君。よろしくね。あそこの席に座ってください。」

担任のユリ先生は微笑みながら、窓際の空席を指さした。


レイジは軽くうなずき、教室の机の間を歩いていった。その一歩一歩が、心臓の鼓動と重なるように静かに床を鳴らす。


席についた瞬間、背後から小さなささやきが聞こえた。二人の男子生徒が、声を潜めながらも明らかに彼のことを話していた。


「レイジ・オナディオ・レン? 変わった名前だな。どこの出身だ?」


しかし、レイジはそれを聞かなかったふりをして、窓の外を見つめ続けた。木々の葉が風に揺れる様子が、唯一の逃げ場のように思えた。新しい学校、新しいクラス、そして新しい視線――すべてはこれまでと同じ、重たい始まりだ。


だが、レイジは一つだけわかっていた。

今日という日を、これまでの年月と同じように、ただ乗り越えていかなければならないということを。


こうしてレイジの「チタ・バンサ高校」での最初の日が始まった。彼自身が気づかぬまま、その存在はすでに多くの好奇の眼差しを集め、望んでいた以上の注目を浴びていたのだった。

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