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第2話 束の間の時間

 昨日はなぜあんな事をしてしまったんだろうと、後悔の念を募らせていた。

 すると、肩をおもむろに揺らされた。


「ねぇ〜、私の話聞いてる?お〜い、生きてますか〜」


 肩を揺らされて首があらぬ方向に向いてしまったが、必至に元の位置に戻した。

 現実逃避をしていたのに、無理やり現実に引き戻されてしまった。


「もちろん聞こえてるさ。でも、僕は見返りが欲しくて交番に届けた訳じゃないんだ」


 これは本心であった。

 ただ気が向いただけであって、それによって得をしうなどとは思っていない。

 いわゆる自己満足というものである。


「私はね実はあの日にお母さんの入院治療費を払わないといけない日だったのよ。そんな大切な日にあんなドジしちゃったんだけどね…。だからお礼をしないと私の気が収まらないの!」


 この人はすごく義理堅いのだろうか?

 普通ならただ財布を拾ってもらっただけで、ここまでの事をする人など中々居ないのでないだろうか。

 胸の内によく分からぬ違和感…のようなものが渦巻いているのが感覚で分かる。


「だから今日の放課後、私に付き合ってほしいのよ」


 名も知らぬ女子生徒は真剣な目つきで僕を見てきた。

 正直やめて欲しい。

 ここまで言われてしまうと、さすがに断るのは心苦しい気がしてくる。


「そもそも、僕はあなたの名前すら知らないんですけど」


 女子生徒はそのことが頭からすっかり抜けていたのか、思い出したかのように手を"ポン"と叩いた。


 今更思い出したのか、と思わなくもないけど。


「そういえば名乗ってすらいなかったね。私の名前は2年の桃園ユリといいます。あなたは?」


「僕は茅森悠、見ての通り同学年だよ」


 このただの挨拶に特別な意味を見出したのか、いきなり手を握ってきた。


「じゃあ今日の放課後、校門の前で集合ね」


 そう言って彼女は足早に、この場から去っていった。

 こちらの了承も取らずに勝手に予定を決められてしまった。


「(僕にお礼をするっていう話のはずなのに、僕の意思を無視しすぎじゃない?)」


 そんな風に思っていると、ふとした瞬間に後ろから圧…というか、プレッシャーがかかっている気がした。

 念の為後方を振り向いていると特に変わった様子は無く、普段と変わらない風景が広がっている。

 おかしいと思ったが、目の前の光景は嘘を吐いていないはずである。

 だから僕は再び前を向き、授業の準備を始めた。



「(なんで悠くんはあんな女と話しているの?

 昨日はどうしても外せない予定があったせいで、悠くんのことを見守ることが出来なかった。

 普段は片時も悠くんの近くを離れないのに…。

 私の目が届かなくなると、すぐにあんな害虫が湧いてくるんだから。)」


 このとき、頭に今朝の光景がフラッシュバックした。

 そう、あの化け物からもらったよく分からない能力である。

 この能力さえ使えばあの女と悠くんを引き剥がせるかもしれない…。

 でも、さすがに正体不明な能力を使うのは怖かったので、ギリギリで踏みとどまった。


 結局私は一旦様子見をする事にした。



 時間は刹那的なはずだが、引き延ばされているような感覚に襲われた。

 そんな中で、ホームルームや授業が流れていった。


 日頃の授業はつまらない、なぜなら前の席の奴らのせいで悠くんの姿を見ることが出来ないからだ。

 でも、休み時間はそいつらがどいてくれるので、悠くんを観察できる貴重な時間だった。



 数少ないご褒美タイムの為に授業を耐えていると、気が付くと昼休みになっていた。


 昼休みが始まると、皆は昼食をとっていた。

 しかし、鳩奈沙耶は昼食などよりも、優先事項がある。

 それは本日n回目の悠くん満喫タイムである。


「(はぁ〜、今日も素敵だなぁ。あっ…頬にご飯粒がついてる…。おっちょこちょいなところも可愛いな。どれだけ見ても本当に飽きないな悠くんは)」

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