第1話 一人目の犠牲者
茅森悠は人生を惰性で過ごしている。
しかし、そんな彼にはなぜか女性を惹きつける"魅力"がある。
そんな彼に今日もまた恋に堕ちた女性がいた。
しかしそんな青年には、激やばストーカー女が張りついていた。
その女は自分で彼に告白する勇気は無かったが、自分以外の女を彼には見て欲しくなかった。
そんな彼女が寝ていると突如、夢の中で変な化け物から特殊能力を授かった。
化け物の姿は曖昧で、靄がかかっているようだった。
そのせいで、正確では無いがなんとなく人型をしている様に見えた。
そいつから授かった能力は、食べた相手の生態情報をコピーして、自分の体に投影出来るというものだった。
化け物いわく、食べると言っても髪の毛などの遺伝子情報が入っているものなら、なんでも良いそうだ。
それに希望を見い出した私だったが、流石に躊躇いがある。
私は変な能力を貰ったせいで、複雑な心境で学校に向かった。
教室は朝にも関わらず、活気に溢れている。
そのせいで朝から気が滅入るが、精神を安定させるためにいつものように、悠くんの後ろ姿を教室の最後列から眺めていた。
「(今日も悠くんを見られて幸せだなぁ)」
彼女の教室の中では影が薄かった。
なので、その異様に蕩けた表情は誰にも見られることは無かったが、もし仮に見られていたとするとドン引きを超えて、警察に通報されていたかもしれないほどだった。
残念ながら、そんなことは本人は知る由もない。
先程から悠くんは友達と世間話をしていたが、急に知らない奴が教室の中を覗いている。
そして、お目当ての相手が見つかったのか、教室に勝手に入ってきた。
「もう、何で昨日は帰っちゃったの?せっかくお礼したかったのに」
悠くんに話しかけに来た女は艷やかな黒髪のロングヘアーに、肌は雪のようでコントラストが際立っている。この女が教室に入って来た途端、男子達の視線を独り占めにしているほどの美人だった。忌々しいほどに。
そんな女がなぜ、悠くんと関わりがあるのか分からないが、悠くんに近づいて欲しくない。
だがそんな事を面と向かって言える筈もなく、眺めているだけだった。
後方で突き刺すような視線を向けてくる人がいる中、そんなことに気が付いていない女子生徒は悠に話しかけ続けていた。
「ねぇ、何で無視するの?」
悠は正直この人とは、もう関わりたくなかった。
なぜ自分かこんな事をしてしまったのか、振り返って考えてみた。
僕はいつも通りに帰路についていた。
クラスメイト達の一部は教室に残っているやつもいるが、そんな事をする気にはなれない。
だからこれは僕のルーティーンとなっていた。
夕焼けが街を茜に染める中、細い帰り道をひとり歩く。
木影が長く伸び、風が落ち葉をかすかに揺らす音が、耳に入ってくる。
そんな詩的な表現がツラツラと出てきてしまう自分に辟易としていると、財布が落ちていることに気が付いた。
周りを見回してもなも誰もおらず、持ち主は分からない状態だった。
普段なら余裕でスルーを決め込むのだが、今日はなぜだか気が向いて交番に届けることにした。
交番は帰路の途中にぽつんと立っているため、労力はそこまでかからない。
なので財布を拾って歩みを進めた。
すると、思ったより近くにあったのですぐに着いた。
外見はいかにも町の交番といった感じて正直古臭かった。
そのせいで余計に入りたくなく無くなったが、ここまで来たのでしょうがなく入った。
交番の中には僕の通っている高校の制服を着た女性が警察官と話をしていた。
「(なにか事件でも起こったのか?)」
そんな他人事の感想を抱いたが、 今はそんなことなどどうでもいいので、拾った財布をその隣り居た警察官の方に渡した。
そうすると、書類を書かなければいけないらしくめんどくせえ〜と思っていると、 隣りの女子生徒が財布を見て声を上げた。
「あっ、その財布私が失くしたやつです!」
どうやらこの財布の持ち主は彼女らしい。
本人がちょうど居るとは、タイミングが良かった。
「本当にありがとうございます。その財布の中に私の全財産が入っていたんですよ」
全財産が入っている財布を落とすとはあまりにも不用心だと思うが、持ち主が見つかったのなら後はどうでも良かったので、回れ右して交番から出ようとした。
すると、名も知らぬ女子生徒から手を掴まれた。
「ちょっと待って。まだあなたの名前も聞いていないし、お礼もきちんとしたいんです」
そんなことを言われても、これ以上時間を割かないといけないのは癪なので、手を振りほどいて交番から出た。
彼にそんな反応をされると、逆にこちらもフリーズしてしまった。
少しの硬直を経て追い掛けようと思ったが、警察の方に拾得物件預かり書の記入をお願いしますと言われたので、追い掛けることは断念せざるおえなかった。
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