表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

捨て猫の疑問

作者: 小雨川蛙

 

 ある日、ゴミ捨て場に居た猫が心優しい少年に拾われた。

「おいで。僕のおうちで飼ってあげる」

 明日の暮らしさえも分からないままに生きていた猫からすればまさに天の恵みだ。

 本来なら引っ掻き、噛みつき、最後には素知らぬ顔をして去っていくところだったが、猫は素直に少年に抱かれた。

「可哀想に。逃げることもしないなんて」

 少年はそう言って猫を抱きしめ、その頭を何度も撫でた。

 猫は目を閉じてごろごろと鳴き、頭を少年の身体に何度もこすり付けた。

「さぁ、いこう。温かいミルクがあるよ」

 そう言って歩き出す少年の腕の中で、猫はちらりと今までの棲家だったゴミ捨て場を見て疑問に思う。

(何故、この生き物は私を助けたのだろう?)

 段々と遠くなっていく世界で少年と同じ生物が寒そうに段ボールで身を守っている。

「あんな汚い場所に居ちゃばい菌だらけになっちゃうよ」

 少年の言葉を何となしに聞きながら猫は考えるのを止めた。

 いずれにせよ、あの場所に居る他の生物と違い、自分はもう住む場所と食事の心配はしなくて良さそうだったから。

 猫にとってはそれで十分だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
その後の猫には興味ないの? それとも今書いているの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ