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第8話 てんせい

 気づけば、ビチ子さんの顔がすぐ目の前にあった。


「お帰りなさいませ、旦那様」


 体を起こすと、何でか半分ぐらいに縮んでいた。


『おはようございます、ガガ』


「……ネトラレさん」


『NT-R3です』


 ……なんか、フレンドリー?


 口調は相変わらずの無感情なのに、言葉の端々に角がないように感じるのは気のせいだろうか。


「……どうなった?」


『ゴブリンαへの転生に成功しました。ステータスを表示しますか?』


「うぃ」



 なまえ:ガガ

 しゅぞく:グリーンゴブリン(幼体)

 じょぶ:ノーマル

 れべる:2

 かるま:50


 ちから:6

 からだ:4

 すばやさ:4

 きようさ:2

 かしこさ:6→10

 みりょく:3→6


 すきる:【幼体ペナルティスキップ】【セーブポイント作成】【ゴブリン投擲術】    

     【ゴブリン槍術】


 てんせい:1



 ……おや?


「ネトラレさん、ネトラレさん」


『はい、NT-R3です』


「表示がバグってるぞ? 『てんせい』のとこ、3回目だから『3』だろ?」


『いえ、表示に間違いはありません。『てんせい』は、これまでの転生回数ではなく、これからの転生可能回数を示した数字となっています』


 ――ん?


「ちょっと意味がわからないんだけど……」


『早い話が、ガガ、あなたはあと2回死ぬとゲームオーバーです』


「なあああ?!」


 う、っそだろ……つまりシューティングゲームとかで言うところの「残機」ってことか? 農夫に一機殺されたんだけど?!


「あ、あとあと増やせるんだよな?」


『不明です。少なくとも今の状況で増やせる手立てはありません』


「ゴブリンで2回死んだら終わりって……は、ハードモードが過ぎる……!」


 ゴブリンにはシステムも優しくないらしい。


 ……まあ1回は転生できるからまだましか?


 というか、最初に言って欲しかった。


 知ってたら牛泥棒なんてやらずに、こそ泥でもして地道に業を稼いでたのに。


「……おっ? ステータスが上がってるやん」


『ビチ子さんの特性を受け継ぎ、ステータスにボーナスがつきました』


 ……ビチ子さん? 前は「個体名~」とかいちいち言ってたのに?


「ネトラレさん、何か変わった?」


『ガガの「かしこさ」上昇によりアップグレードされました』


「なる、ほど……」


『個体名を「ガガ」に変更しますか?』


「よろしく」


『ゴブリンαを「ガガ」に変更しました。変更により、ゴブリンβ以下7体の名称記号を一段階引き上げます』


「……むぅ? ゴブリンβ?」


 言われて気づいた。俺の他に7匹のチビゴブリンが繁殖場の方々を思い思いに駆けずり回っているではないか。額には「α」から「η(イータ)」までのギリシャ文字がある。


「もしかして……俺の兄弟か何かか?」


『子ゴブリンです。合計5体以上のゴブリンを配下にした実績「はじめての下僕」により、スキル【生殺与奪】を獲得しました。チュートリアルが開始しますか?』


「よろしく」


 ぴこぉん、と電子音を鳴らして、



 なまえ:ゴブリンα

 しゅぞく:グリーンゴブリン(幼体)

 じょぶ:ノーマル

 れべる:2

 かるま:50


 ちから:1(6)

 からだ:1(4)

 すばやさ:1(4)

 きようさ:1(2)

 かしこさ:1(6→10)

 みりょく:1(3→6)


 すきる(2/5):【ゴブリン投擲術】【ゴブリン槍術】



 見慣れたステータス画面が、……いや違う。これゴブリンαのだ。


「ってか、ほぼ俺と同じような……」


『子ゴブリンは、親ゴブリンのステータスと一部のスキルを継承して作成されます』


「じゃあ子ゴブリンは俺とまったく同じ性能なんだ?」


 俺が強くなれば同じ強さの小ゴブリン(うちの子)がダース単位で量産されるわけだ。


 ちょっと最強じゃね? 聖女なんて余裕で復讐できんじゃん?


『否定。子ゴブリンのスキル習得数には限界があるため、親ゴブリンであるガガほどの性能は見込めません』


「なんだ、つまらん……」


 マジ、がっくりだ。……よく見ると「すきる」の隣に「2/5」ってあるし。


『なお、ガガのスキル習得数は転生特典により上限が設定されておりません』


「ありがたいありがたい……」


 一応、転生特典のチートはくれたらしい。この点だけ、女神様々だ。


『チュートリアルを続けますか?』


「うぃ~」


『諸条件により獲得した経験値およびスキル熟練度は、以後、親ゴブリンであるガガと子ゴブリンの群単位で共有されます』


「つまり?」


『子ゴブリンに経験値稼ぎをさせておけば、ガガは寝ている間でもレベルアップできる、ということです。逆に、ガガが経験値を稼ぐことで、子ゴブリンは危険を冒さずにレベルップすることができます』


「ほぉ~、それは素晴らしい!」


『ガガが新しいスキルを習得した場合、同期することで子ゴブリンは同じスキルを習得します。逆に、ガガは同期で小ゴブリンから習得することもできます』


「いいね!」


『同期は「一括」と「個別」の選択が可能です。なお、一度取得したスキルは種族進化するまで取捨選択できませんのでご注意ください』


「ふむふむ」


『親ゴブリンはNT-R3の通信機能を介して子ゴブリンに指示を出すことができます。指示の成功率は、複製元の「かしこさ」、熱中度は「みりょく」に依存します』


「へ~、便利~」


『子ゴブリンが不要となった場合、「自死」を指示することもできます』


「へ~、――へ?」


『以上で、チュートリアルを終了します。何か不明点はありますか?』


「『自死』を指示した場合、――本当に?」


『試しにゴブリンβを「自死」させますか?』


「いやいやいや、試しに殺すな!! ――ってか、本当にそんな指示を実行するかのか? いや、試さなくていいからな! 普通なら嫌がるもんだろ?」


『親ゴブリンの指示は絶対です。子ゴブリンが拒否することはありません』


 ……す、っげ! 


 軍隊だって従順な兵士を育てるのに洗脳やら厳しい訓練やらでようやくって感じなのに、ゴブリンは複製体を作るだけですむとは。ちょっとしたチートだな。


『他にご不明な点がありますか? なおチュートリアルはあとから再開することもできます』


「あとひとつ――」


『はい』


「さっきから言っている熟練度とは? ステータスに表示がないようだが」


『スキルを使用することで熟練度が上がり、より高位のスキルに進化させることができます。なお熟練度の表示は、業ポイント10を消費した「ステータス表示詳細化:熟練度表示」の習得で可能となります。業ポイントを使いますか?』


 熟練度が見えずとも上がるときは上がるものだがら、別に見えなくても困らないが、……あっ、そうだ。


「進化した次のスキルってわかるようになるか?」


 最初がダメでも次の段階になると化けるスキルというものが往々にしてある。


 その逆もまた然り。


 進化した次のスキルが事前にわかれば、ゴミスキルを習得して(カルマ)ポイントを無駄にしたり、無理に熟練度を稼がなくてもすむというものだ。


『「ステータス表示細分化:スキルツリーの表示」により可能となります。ただし、ひとつのスキルにつき、スキルツリーを表示させるのに、(カルマ)ポイント50が必要となります』


 ……ぐっ、シビア。


 効率よくスキルを習得できれば、そりゃ難易度は「イージー」と「ベリーハード」くらい違ってくるだろうか、業ポイントもなかなかお高い。


 そのうち取りたいが、今は優先すべきではないのでパスだ。


「せめてカンストがわかるようにならないか?」


『可能です。「ステータスの表示詳細化:カウンターストップ表示」により表示されるようになります。(カルマ)ポイント10で習得しますか?』


 ……おや、お安い。


 カンスト表示はそんな難易度に直結しないからか?


 これは必要だから、当然「Yes」。


 カンストがわかれば「次でレベルカンストなのに必死にレベル上げしてました~」なんて無駄な努力をしなくてすむからな。



 なまえ:ガガ

 しゅぞく:グリーンゴブリン(幼体)

 じょぶ:ノーマル

 れべる:2/5

 かるま:40


 ちから:1(6)/8

 からだ:1(4)/7

 すばやさ:1(4)/8

 きようさ:1(2)/6

 かしこさ:1(6→10)/10

 みりょく:1(3→6)/8


 すきる:【ゴブリン投擲術】【ゴブリン槍術】【セーブポイント作成】【幼体ペナルティスキップ】

 てんせい:1



「う、う~ん……」


 好奇心は猫をも殺す。この場合は、ゴブリンだが。


 知らなければ良かったな。ちょっと後悔だ。


 伸びしろが低い……いや、敢えて言おう。


 ――ない! 


 所詮、ゴブリンか。


 ゴブリンはゴブリン以外にもなれない、ということか。夢も希望もありゃしない。


「……これ、もう詰んでね?」


 レベルは「5」カンストだし、「かしこさ」は成体に進化した時点でカンストだ。


 他の数値も、カンストレベルが「5」ではおそらく届かないだろう。


 ――これでどうしろと?


 あ、いや。(カルマ)ポイントを稼げばいいのか。


 種族やジョブの欄も気になる。


 他のゴブリン種族に転生したり、ジョブを得れば、あるいは……。


『警告。敵性個体接近』


「――ん?」


 思考の海にどぼんしようとしたところでネトラレさんの声に我に返った。


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