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第6話 初めての子分

 立ち上がり、腰蓑をつける。

 猛威を振るった俺のゴブリン棒は今や使い尽くされた鉛筆ほどに戻っていた。


『これからの予定を聞かせてください』


「予定?」


『本日未完了の「家畜強奪計画」があります。延期しますか?』


「牛、か……」


 精をつけて貰うためにビチ子さんに御馳走するのも悪くない。

 ……そういえば、


「セーブポイントとやらはどうなった?」


『作成に成功しました。現在8体のセーブポイントが有効です』


「……つまり、ビチ子さんのお腹の中には俺の子供が8人……いや、8匹?」


『正確には、個体名「ガガ」と同一個体です。なお、個体名「ビチ子」の特性により、「子ゴブリン」のスタータスに少量のボーナスがつきます』


「さ、さよか……」


 同一の個体とは言え、ヤった女の腹から出てくれば、それはもう「子供」と呼べないこともないわけで。……う、う~む、何とも微妙な気分だ。


 前世では終ぞ子供に恵まれなかったから、新しい命の誕生は素直に嬉しいが、それが俺のクローンで、死んだときの新たな転生先になる、とねぇ……。


 どうにも命を弄んでいるようで罪悪感が半端ない。


 これも未だに俺の魂にこびりついている人間性のせいか。


 ……ゴブリンでいる以上、慣れていくしかないのかねぇ。


『なお、セーブポイントは現在より13日間有効です』


「――あん? それはまた、なぜ?」


『作成した子ゴブリンに他の魂魄が定着するためです』


「そ、そうか……」


 生命と魂の領域に平然と土足で踏み込むなぁ……。


 まあ女神公認だからいいんだろうけど、科学がその分野に踏み込むのを「禁忌」としていた前々世の倫理感がうっすら残っている俺には、なかなかにハードだ。


 倫理と冒涜の狭間で頭がくらくらしてくる。


 とりあえず水でも汲んできてビチ子さんを綺麗にしようか。


 ――あん?


 振り返ると、2匹のゴブリンがいた。ゴブリンCとゴブリンEだ。


『ゴブリンCとゴブリンEが仲間になりたそうにこちらを見ています』


「――は?」


『仲間にしますか?』


「なぜに??」


『現有戦力増強のため加えることを推奨します』


「いやいやいや、ゴブリンだぞ?」


 命乞いを許し、背を向けた瞬間に襲いかかってくるのがゴブリンという生き物だ。


 気前よく仲間に入れて、いきなり寝首を掻かれたのでは堪ったものではない。


 ほら、よく言うだろ? 良いゴブリンは死んだゴブリンだけ、ってさ。


「ってか、なぜ、いきなり仲間になりたがる? 良からぬことを企てているとしか思えないのだが?」


『観測結果より、ゴブリンC及びゴブリンEは雄個体としての「憧憬」を個体名「ガガ」に抱いている、と推測できます』


「それこそ、なぜだ?」


『個体名「ビチ子」との性交中、ゴブリンC及びゴブリンEは「繁殖場」に滞在しながら行為には及ばす、時間換算で10時間以上を個体名「ガガ」の観察に向けられていました。この結果より、先の推測は有用であると判断します』


「マジか……」


 ゴブリンをも憧れる俺の下半身事情とは……。


 ゴブリンのくせになかなか見る目があるじゃないか。


『仲間にしますか?』


「……裏切らないか?」


『現保有スキルでは確証はありませんが、現段階では裏切る可能性は極めて低い、と推測できます』


 毛のひとつもない頭をぽりぽりと掻き、少し考える。


 戦争は数だよ、兄貴。と昔の偉い人は言った。まさに金言だと思う。


 有象無象であろうと、烏合の集まりであろうと、数とはまさに力。


 猫の手だろうと数あることは重要だし、枯れ木だろうと山は賑わう。


 傭兵をやっていたときにこのことはよく知らしめられた。


(……まあなんかの役には立つか)


 役に立たなければ使い潰すか、殺せば良い。人間と違ってこの点は、ゴブリンは楽で良い。人の倫理観に縛られる必要がないのだから。


 おっ、今の思考はなかなかゴブリンっぽい。……いや、嬉しくはないが。


「いいだろう、仲間に加えてやる。ちょうど人手があればいいと思っていたところだしな。ただし、へましたり裏切ったら容赦なくぶっ殺す!」


 と、宣言したところでゴブリン語が未習得なので伝わるはずもなく。


 ゴブリンどもは諸手を挙げて無邪気に喜ぶだけだった。

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