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第18話 ゴブリンクラフト

 その後はトントン拍子に事が運んだ。


 1時間もしないうちにゴブリンEが【ゴブリン言語】を習得したので、【ゴブリンクラフト】を習得するように指示すると、ふたつ返事で習得してくれたので、彼を『小群長』に任命して、たまたま目についたイータを『小群員』に加えた。


 その後、【ゴブリンクラフト】には材料が必要とのことなので巣や巣の周辺に落ちていた布切れや木片、大きめの石なんかを拾い集めて、ゴブリンEとイータにせっせと何かを作らせた。材料が材料なので、主に石斧やらボロ服とかを。


 それから半日ほどが経過した頃だろうか。


『イータが【ゴブリンクラフト】を習得しました』


 ネトラレさんの通知メッセージに俺は叩き起こされた。


「……ふぇ?」


 朝から始まって半日なのでもはや夕方である。


 ビチ子さんの膝枕でうたた寝を決め込み、今日はこのまま終わりかな~、と諦めていただけに、見事なサプライズだった。


「まじで?」


 涎を拭い、辺りを見渡す。


 イータが布切れをつなぎ合わせた、ある意味お洒落で、独創的なボロ服を完成させていた。


「ボス~」


 目が合うと、ボロ服を引きずりながら駆け寄ってくる。


「できた!」


「おお、うちの子は天才か!」


「やる!」


「うむ!」


 前々世なら有名ブランドのビンテージものと(うそぶ)けば何人かは欺されてくれそうな出来映えだ。


 俺は、それをおっぱいもおしりも丸出しのイータに着せてやった。


 ……おお! ちゃんとお洒落だ! 誰からも理解されないアーテストみたい。


「お~! これはいいものだ~!」


 イータは満足するとデルタやベータのもとに走り去っていった。


 向こうで偉そうに自慢している。


 お前さんが作った物をお前さんに着せてやっただけなんだけどな。


 俺から貰った、というのが一種のステータスっぽい。


『順調ですね。――同期しますか?』


「やってくれ」


『了解です。ガガ以外にも習得させますか?』


 う~む……、どうすべきか。


 子ゴブリン全員に覚えさせれば熟練度はガッポガッポだが、スキル枠の都合で戦闘系とクラフト系のスキル両立は難しいから、どっちかの専門が欲しいところだ。


「あと一人くらいいてもいいかな?」


『お勧めはイプシロンです』


「イプシロン?」


『気弱な性格で戦闘向きではありません』


「どこに――」


 と、探そうとしたところでビチ子さんの背中にひっつき、じ~っとこちらを見つめてくる1匹の子ゴブリンを見つけた。


 俺にもビチ子さんにも似た顔立ちで、親友を殺されたわけでもないのに逆立った髪は俺譲りの黒髪だった。


「イプシロンか?」


「な~?」


 眠たそうに、気怠そうに言ってくる。


 甘ったれのチビガキ。


 俺の第一印象はこれだが、俺を油断なく見つめてくる目には見覚えがあった。


 前々世でいうならクラス委員長や生徒会長、前世でいうならギルド長や騎士団長が同じ目をしていた。自分の責任をびた一文負けることのない頑固者の目だ。


 職人にすればきっと手抜かりのない良い仕事をしてくれることだろう。


「いいだろう、イプシロンに覚えさせよう」


『了解です』


 早速、【ゴブリンクラフト】のスキル欄を表示させてみた。


「な~?」


 イプシロンが俺の後ろから興味深そうに覗き込んでくる。


 ……愛い奴め。


 膝にでも乗せてやろうと手を伸ばすと、イプシロンは驚いた顔をしてビチ子さんの背中に逃げ帰ってしまった。ちょっと傷つくが、憎めない可愛さだ。


 こいこい、と手を振る。


「な~!」


 ……こないな。


 警戒心むき出しで睨み付けてくる。


 なんか、猫みたいな奴だ。まあいい。放っておこう。


 さて【ゴブリンクラフト】では何が作れるかな。


「なになに? 『ゴブリンの木盾』『ゴブリンの板木鎧』『ゴブリンの棍棒』?」


 まずはゴブリン用の木製武具か。基礎の基礎としては悪くない。


 しかし、肝心の材料は?


 普通、クラフト系のゲームの場合は素材を入手して、素材から材料を作って、それを組み合わせてあれこれ作るものだが、肝心の材料の作り方がのってない。


 ……というか、使われる材料も聞いたことのない物ばかりだ。


「『腐りかけの木板』とか『折れた木の棒』ってどうすれば?」


「な~?」


 ――うぉ、びっくりした!? 


 いつの間にかイプシロンが俺の肩に顎を乗せて、後ろからスキル欄を覗き込んでいた。


 こいつ職人系よりも斥候系のスキル編成の方が適性あるんじゃないか?!


 ちょっかいを出すとまた逃げそうだったので、とりあえず気づかないふりをしておくけどさ。


『ゴブリンらしく地べたを這いつくばって拾い集めるのでは?』


「……マジか」


 ゴブリンらしいっちゃゴブリンらしいが、……いや、マジか?


「また村に盗みに入れと?」


 せっかく他の群の犠牲でゴブリンは死んだことになっているのに、また村人に見つかるリスクを冒せ、とはゴブリンの生き様はハードモードが過ぎる。


『村の周辺にいくつかの廃屋を見つけました。かつて村人が住んでいたものが住民の死去、もしくは転居により放置されたものと思われます』


 ぴこぉん、と地図が表示される。


「な~!」


 突然の地図に驚くイプシロン。


 しかし今度は逃げずに俺の肩に全体重を乗せて地図を指で突こうとしてくる。


 ――ぐっ、重い!!


 スキルでスタータスだけは成体とはいえ、体はチビゴブリンと同じ体型なのだ。全体重を乗せられたら、


「な~!」


 案の定、俺は支えきれずにイプシロンを落としてしまった。


 落ちたイプシロンは顔面を地面に痛打。……あ~、泣くかな? 泣くかな?


「な~!」


 ……泣かない!


 鼻血を垂らしながら地図に指をぶっ刺している。


 痛みよりも好奇心の方が勝ったのだろう。


『話を続けてもよろしいでしょうか?』


「よろしく頼む」


 立場は逆転して、俺がイプシロンの肩越しに地図を見る形になった。


『幸い、村の中央からは距離があるため、廃屋のみを目指すなら村人に見つかるリスクは最小で済むかと思われます』


「これこれ、地図に頭を突っ込むんじゃない! 指でかき乱すな! 地図が読めないじゃないか! だぁ~! 食いつくな! 涎が、――え?」


『聞いてますか?』


「あ、ああ、……いいね!」


『本当に?』


「すみません、聞いてませんでした。最初からお願いします」




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