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第17話 ゴブリン言語

 翌朝。


 干し肉と苔で健康的な朝食を取った後、ゴブリンCとゴブリンEを呼び出した。


 呼び出して気づいたが、2匹ともゴブリン顔のゴブリンではなかった。


 ゴブリンEは、売れないホストのような優男顔だった。


 ゴブリンCは、愛嬌の良いふっくらとした女顔だった。胸にも膨らみがあり、もしやと思って腰蓑をめくってみると、案の上だ――あるはずの棒がなかった。


 どうやらゴブリンEも女の子らしい。


 というと、俺は女の子にドロップキックを食らわせてしまったことになる。


「……すまんかった」


 土下座で頭を下げると2匹はキョトンとした顔をした。


 ゴブリンに土下座の文化はないらしい。……話を進めよう。


「どうすればいい?」


 ぴこぉん、と目の前に表示画面が現れる。


 表示画面には「小群任命画面」とあり、「小群長」と「小群員」で分割されている。


「これは?」


 聞いてはみたが、前々世で似たようなものを見たことがある。


 ロールプレイングゲームとかの「パーティ編成画面」だ。


 ……なになに? 


「小群長」は空欄。


「小群員」の欄には、それそれの顔をデフォルメしたアイコンが10個並ぶ。


 アイコンのうち、2個は大きめで、8個は小さい。


 2個の大きなアイコンには「ゴブリンC」「ゴブリンE」との表示。


 8個の小さいアイコンには「ガガ」から「イータ」までの表示がある。


 俺とうちの配下と子ゴブリンを示したアイコンに違いない。


 何となくアイコンのひとつを触ってみると、指に吸い付くようにくっついた。


 ……ドラッグ&ドロップ、かな?


 試しに「小群長」の蘭に運んでみると、表示画面が赤く変わり、「幼体のゴブリンを小群長に任命することは出来ません」との、多分、エラーメッセージ。


『……』


「ネトラレさん?」


 不穏な沈黙に思わず呼びかけてしまう。


『いくつかのチュートリアルをすっ飛ばされてしまいました。誠に遺憾です』


「ご、ごめん……」


 おそらく「ドラッグ&ドロップ」をチュートリアルする予定だったのだろう。


 ……すまんことをした。


『チュートリアルを続行します。「ガガ」のアイコンを「小群長」の欄に移動させてください』


「幼体は『小群長』になれないらしいが?」


『問題ありません。ガガは【幼体ペナルティスキップ】のスキルをもっているので成体と同様に扱われます】


 そういうことなら、と俺のアイコンを「小群長」の欄に置く。


 すると「大群長」という別の画面が開いた。


「表示バグってない?」


『いえ、他のゴブリンの場合は「小群長」となりますが、群長のガガが率いる場合は「大群長」となります』


「何か違うのか?」


『後で説明します。「ガガ」のアイコンを「大群長」に移動させてください』


 移動させた。


『次に「ゴブリンC」と「ゴブリンE」のアイコンを「大群長」の「大群員」の欄に移動させてください。その際――』


 何となく、まず親指を置いてから人差し指を置き、親指を動かさないまま人差し指で「ゴブリンC」から「ゴブリンE」を横断するように動かす。


 案の定「ゴブリンC」から「ゴブリンE」までの表示が太字に変わる。


 指の位置を維持したまま「大群員」まで手を動かすと、二つのアイコンを一度に「大群員」に移動することが出来た。


『……』


「ご、ごめん、って……」


 前々世で愛用していたスマートフォンと同じ操作だったので、つい嬉しくなってやってしまった。


『チュートリアルを完了しますか?』


「い、いえ、続けてください」


『チュートリアルを完了しませんと、ボーナスの業ポイントを受け取ることが出来ません。ご注意ください』


「き、気をつけます」


 ……ネトラレさん、激おこだよ!


「ボス、コレ、何です?」


 ゴブリンCがぶすっと「大群員」の画面に指を突き刺す。


「これこれ触るな。……あれ?」


「ナニ?」


 俺に見つめられ、愛嬌たっぷりにゴブリンEが首を傾げる。


 決して美人ではないが、丸い鼻がお茶目だな、と思った。


 ――って、違う!


「ゴブリンCがしゃべってる!?」


「ア、兄貴、ドウシタ? ナニシタ?」


「――ゴブリンEも?!」


 俺が狂ったと思ったか、2匹はあたふたとして鎮めようとしてくる。


 ……と、とりあえず落ち着こう。


「せ、説明よろ」


『はい、承りました。いきなり話が通じるようになった件ですが、念のために言っておきますが、バグではありません。「群システム」の仕様です』


「ふむふむ」


『「群員」に編成された個体は「群長」が習得しているスキルを半分の効果で使用することが出来るのです。今の場合は【ゴブリン言語】ですね」


「片言なのは効果が半分だから?」


『そうなります。また「群員」は「群長」のスキルを使用することで、そのスキルの習得条件を満たしている場合、習得することがあります』


「なん、だと……!」


『賢いガガならもうお気づきでしょう』


「ああ、お気づきだ。この方法で【ゴブリン言語】をこいつらに習得させて【ゴブリンクラフト】を取らせる腹づもりだな?」


『ご明察です』


「そして、ゆくゆくはこいつらが習得した【ゴブリンクラフト】を子ゴブリンにも習得させて、同期することで俺も習得する、って算段だ?』


『その通りです』


 ……おおおおおおっ!


 まさに業ポイントいらずでスキルを習得できる錬金術や~!


『まずはたっぷりしゃべりして、この2匹に【ゴブリン言語】を習得させてください』


「ん? さっさと【ゴブリンクラフト】を取らせればよいのでは?」


『いえ、【ゴブリンクラフト】を子ゴブリンに習得させる際に、意思疎通のために【ゴブリン言語】が必要となります。【ゴブリン言語】未習得の場合、【ゴブリン言語】習得時の何倍もの労力と時間が必要となりますが?』


 ……急がば回れ、ってことか。


「わかった。まずは楽しくおしゃべりからだな」


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