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第13話 群システム

 脇道に逸れたが、引き続き強化案を考える。


 期せずして業ポイントは残すところ「10」となった。


 これでは何も覚えられない。


 なので、手持ちのスキルを強化するしかやれることがない。


 シンプルイズベスト。選択肢が少ないことはいいことだ。頭を使わなくて済む。


 子ゴブリンが使っても熟練度は得られるというので、とりあえず子ゴブリンにスキルを使わせまくればいい。


 子ゴブリンを100体くらいこさえてスキルを使いまくれば、あっという間に上級スキルを習得できるはず。よ~し! お父さん、がんばっちゃうぞ!


 ……なんて考えたが、そんな裏技、女神が許すはずがない。


「子ゴブリンは何匹くらい作れるんだ?」


 また知らない設定でがっくりさせられるのも嫌なので前もって聞いてみた。


『量産自体は無限です。ですか、群の許容限界数以上の量産はできません。なお、群の許容限界数は「巣」の許容量によって決定されます』


 なるほど、やはり何らかの制限があったか。


 ……ってか、子ゴブリンを作ることを「量産」言うな。


「この『巣』の許容限界数はどれくらいだ?」


『15匹です』


 巣を巡り、ひぃ、ふぅ、みぃ、とゴブリンを数えてみた。


 15匹きっかりいた。


「もしかして繁殖場が静かなのって……」


『許容限界数に達しているため、ゴブリンが繁殖を控えているためです』


 ゴブリンは律儀に「明るい家族計画」を守っているらしい。


 まあ考えてみれば当たり前か。


 増えすぎても減りすぎても群の存続に関わるわけだからな。


 見事な生存戦略だ。この点だけは人間も見習うべきだな。


 ……話を戻そう。


 ゴブリンを数えていた思いついたことだが、前にも言ったように数とは力だ。


 ろくなスキルがなくとも数がそろえは、それなりのことができるのではないか。


 だが、まあ所詮はゴブリンだ。過信は禁物だ。


 15匹いたところで何ができるか? 牛泥棒はできそうだ。


 もちろん、こちらもただでは済むまい。


 俺がどんなにご立派な戦術を練ろうと何匹かは犠牲になる。


 コラテラル・ダメージってやつだ。


 むしろ誰かが犠牲にならなければ成功はあり得ない。


 問題はその犠牲をどう最低限に済ませるか。


 前世で傭兵をやっていたときは、囮や陽動を専門とする特殊部隊を編成した。


 特別、防御に優れた奴や足の速い奴で編成された部隊だ。


 決して捨て石の部隊ではなかった。


 しかし、使える手駒がゴブリンとだけなるとそう上手くもいかん。


 どうサイコロを振っても誰かしら犠牲になる。


 数を頼りにするゴブリンにとって1匹2匹の損失でも結構、痛手だ。


 特に、15匹しかいないうちの群では2匹失えば、30%の損失となる。


 戦場だったら退却しても怒られない損失である。


 ……となると、痛手にならないくらいの数を良いじゃん? となる。


 では、数を揃えるにはどうすればいいか?


 方法は、至極簡単だ。巣穴を拡張すれば良い。


 巣の許容限界数を引き上げれば、より多くを率いることができる。


「確か、【ゴブリンクラフト】ってスキルが初期スキルにあったよな?」


『あります。ですが、習得には業ポイントが「190」足りません』


「仮に覚えたとして巣穴の拡張に役に立つかな?」


『面白い冗談です。笑えば良いですか?』


 ……ダメらしい。


 冷静に考えればゴブリンに土木作業ってイメージないな。


 ゴブリンでも大きな群となると古城や古代遺跡を根城にしているもんだが、よくよく考えなくても、あれらはゴブリンが建築したものではない。


 誰かが造って、使わなくなったものを、不当に占拠したものだ。


 で、考えをまとめていた思いついたのだが、


「もっと大きな巣に引っ越せば、もっと群を大きく出来るのでは?」


『理屈の上では正解です、ガガ』


 ……なんとも含みのある言い方だな。


 そう上手くはいかない、と暗示しているみたいだ。


 見落としている点があるとするなら「占拠者」の存在か。


 確かに……、盲点だ。


 大きな巣を見つけても、「占拠者」がいたのでは意味がない。


 それらは決まって俺の群よりも大きなゴブリンの群か、もしくはゴブリンの身の上では手も足も出ない怪物の類と決まっているのだ。


 都合良く大群を編成できる空の巣を見つけるなんて、10円で売っている東京の一等地を探すようなものに違いない。


「どうすべきかな~」


 寝転び、天井を眺める。


 すると、ガンマ改めイータが目敏く見つけて、俺の腹に飛び乗ってきた。


「うげふっ!」


「ちち~」


「ちちじゃない! ボスと呼べ!」


「ぼすぅ?」


 愛い奴め。妹のちっちゃい頃を思い出させる。


 とりあえずパンツをはかせよう。尻の穴まで丸見えだしな。


 それには【ゴブリンクラフト】だな。……業ポイントを稼がないと。


『……』


「――なにか?」


 何か言いたげな気配を感じたので聞いてみた。


『もうちょっと頼ってもいいんですよ?』


「ネトラレさんに?」


『もちろんです。アップデートは伊達ではありません』


「頼もしいね。なら、群を強くするおすすめの方法があったら教えてくれ」


 ……期待はしていないが参考くらいにはなるだろう。


『弱小勢力が占領している巣を奪えばよいのです』


 ……ん?


『奪った巣の許容限界数分、群を大きくできますよ?』


 ……んん?


『難しかったですか? もう一度――』


「いや、……初耳、なんすけど?」


『はぃ?』


「……ってか、そもそも巣っていくつも持てんの?」


『あれ? チュートリアルでやって――』


「――ません」


『……』


「やってません」


『ま、まあ前後しましたがそういうことです』


「とりあえず謝ってください」


『す、すみません』


「よろしい」


 ……しかし寝耳に水に良いことを聞けた。


「うちの群よりも小さな群から巣を分捕れば、その巣の分だけ群を大きくできるのか……、悪くないアイディアだ」


 とはいえ、VSゴブリン相手でも油断はできない。


 こっちもゴブリンだからだ。


 数に胡座をかいてしたのでは無駄な損害を受けかねない。


 軍備が必要か。


「【ゴブリンクラフト】でゴブリン用の武具とか作れるのか?」


『初期スキルでクラフト系はそれしかないのでおそらく作れると思われます』


「うむ、結局【ゴブリンクラフト】が必要で、業ポイントを稼がなければならない、という話に戻るのか……」


 熟練度稼ぎは子ゴブリンが成体に進化してからとして、その前に業ポイントを稼いで【ゴブリンクラフト】を習得しなければならない。


 やれやれ、思考が振り出しに戻ってしまった。


『ひとつ提案なのですが、【ゴブリンクラフト】より先に【ゴブリン言語】を習得してはどうでしょうか?』


「必要か?」


 子ゴブリンとは普通に話せるし、それほど優先順位が高いスキルとは思えないのだが。


『ゴブリンCとゴブリンEと意思疎通できるようにあれば、彼らが有する業ポイントで【ゴブリンクラフト】を習得させることが出来ます』


「あいつらにクラフトを任せるのか? できんの?」


『無理です』


「――おいっ!」


『転生体であるガガほど上手くスキルを使うことができないでしょう』


「宝の持ち腐れぢゃん」


『そこで「群システム」の出番ですよ』


「「群システム~?」」


 イータと揃って首を傾げる俺だった。

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