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第12話 変わった世界

 

『どうしました、ガガ?』


「だ、だだだだだだっ、――誰?!」


『誰、とは?』


 見えてない!? もしかして俺だけが見えてる?!


『いえ、視覚情報は共有されていますので同じものを見ているはずです』


「だったら、なななななっ、なんで?」


『はい?』


 要領を得ないネトラレさんに俺はそいつを指差した。


「人の子が何でこんな所にいる?」


『人の子? ゴブリンαのことですか?』


「ゴブリン……α?」


 どこが? とまず思った。


 俺が指差す先にいるのは、ビチ子さんにどこか似ている二歳か三歳くらいのがきんちょだ。


 ゴブリンとは似ても似つかない紅顔の美少年で、金髪で、緑色の肌で、……え?


「緑色の肌?」


 唯一そこだけはゴブリンっぽい。あと、ちんちん丸出しだ。


「俺はおかしくなったのか? ゴブリンが人に見えるんだが?」


『いえ、正常です。「かしこさ」が「15」を超えたため、個体識別が可能となったためでしょう』


「今まで見ていたゴブリンは?」


『「かしこさ」が不足していたため、個体識別がなされず、一般基準としてのゴブリンを仮認識していたものと思われます』


「こっちが正常ってこと?」


『そうなります』


 にわかには信じられないし、受け入れられそうにない。


 だってそうだろ? あの醜かったゴブリンが「かしこさ」をちょっと上げただけで紅顔の美少年だぞ? 頭がバグりそうだ。……いや、もうバグっているのか?


「はは~」


 何匹かがビチ子さんに甘えてくる。


 やはりビチ子さん似の可愛い子だが、何匹かは前世の俺にそっくりな奴もいた。


「……」


 ……え? いやいや、待て待て。


 子ゴブリンがこの様ってことは、……もしかして俺も?!


 水たまり――子ゴブリンのしょうべん貯まりだろうが――を覗き込んでみた。


「おう……」


 前世の俺がいた。


 肌は緑色だが、甘いマスクの2枚目崩れの顔立ちは、まさしく俺だった。


「わっ、悪くない……」


 少なくとも人類が識別する醜悪なゴブリン顔の何倍もいい。


「しかしクローンなら全員が俺と同じ顔になるのでは?」


『いえ、母体環境に左右されるため、ステータス等は同一でも完全なクローンにはなり得ません。詳細データは不明ですが、ビチ子さんの能力を受け継ぐときに容姿にも影響を受けたと推測されます』


 なるほど、と納得するしかない。


 前々世ではクローンなんて名称とさわりくらいしか知らなかったからな。


「こうなると名前を考え直さないとダメだな……」


 ゴブリンαなんて全然可愛くない。可愛い子には可愛い名前を付けたいところだが、ネーミングセンスに見放された俺には、とんと良い名前が思いつかない。


 せいぜい、ゴブ男とかゴブ助とか……、自分でもドン引きするレベルだ。


『ゴブリンαなので「アルファ」などはどうでしょう?』


「安直すぎない?」


『覚えやすくて素敵な名前だと思います』


「まあ確かに……んじゃ、それで」


『ひとつ提案なのですが、ベータはデルタと、ガンマはイータと名前を交換してはいかがでしょうか?』


「それはまたなぜ?」


『女の子の名前として「ベータ」や「ガンマ」は可愛げがありません』


「ふ~ん。好きに、――んん? 女の子?!」


 慌てて「ベータ」と「ガンマ」を探す。


 ……いた。


 ベータはビチ子さん似の美少女だった。金色の綿飴みたいな頭をして、あまりの毛量の多さに、他の子よりも身長が頭ひとつ分大きいくらいだ。


 一方のガンマは俺似……なのだろうが、なんとなく前々世の妹に似ているような気がする。俺の尖っているところを全部丸くしたら、ああなるのだろうか。


 中性的な面立ちで「可愛い」よりも「格好いい」タイプの女の子だ。


 二匹ともアルファ同様、すっぽんぽんだが……うん、確かに、ない。


 股間にあるべきゴブリン棒が綺麗さっぱり生えてない。


「……ゴブリンに雌っていんの?!」


『群の個体数が一定数以下だと雌個体が発生することがあります』


「それは、またなぜ?」


『群の絶対数不足により他種族の雌個体との繁殖が困難なためと思われます』


「なる、ほど……」


 数が多ければ、多少の犠牲を払ってでも他種族の雌個体を掠ってこれる。


 だが、数が少なければそれもままならない。数を増やすために自分達で繁殖するしかない。雌個体の発生は、弱小ゴブリンのための救済処置というわけだ。


「ふんすっ!」


『なんですか?』


「うちの娘は嫁にやらん!」


『繁殖相手は、主にガガ、あなたですよ?』


「――近親交配推奨!?」


『ゴブリンですから』


「そういえば何でも許されるとでも?」


『もちろん、ゴブリンですから』


 ……ある意味、真理のような気がしてきた。


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