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第9話 共食い

 何事かと辺りを見回してみると、繁殖場に1匹のゴブリンが侵入してきて、子ゴブリン(うちの子)の1匹をむんずと掴んで、頭から丸かじりにしようとしていた。


 ――あっ、思い出した。


 そうそう、ゴブリンはそうだった。


 あいつら生まれたばかりのゴブリンをおやつ感覚で喰うんだった。


 俺がゴブリンに転生したてのときもそうだった。


 俺と同時期に生まれたゴブリンは10匹ほどいたが、生き残ったのは俺だけだった。


 最後に俺を喰おうとしたところを、俺はその辺の石ころを武器にして返り討ちにしたのだった。


 しかしだな、10匹生まれて1匹しか生き残らないとは……、


 ウミガメにとっては羨ましい生存率ではあるが、十日で生まれ、十日で成体にあるゴブリンが世界に溢れかえられないのも頷ける生存率だ。


 とりあえずうちの子が喰われるのを黙ってみている謂われはない。


 その辺の石ころを掴み、不届きなゴブリン目掛けて投げつける。


「――ぎゃ!」


 流石【ゴブリン投擲術】。見事、命中……したのはいいが、


「やべっ――」


 失策だ。単に注意を引いただけだった。


 頭から血を滴らせながらゴブリンが大股で近づいてくる。


 もう一度投げつけるが、今度は大外れ。


 もう一度と大きめの石を投げつけるが、今度は届きもしない。


 ……「ちから」は「6」あるはずなんだが。


『警告。現在は幼体のため「ちから」は「1」です。【ゴブリン投擲術】使用に必要な「ちから」を満たしていないため、本来の性能が発揮できません』


「そうだった!?」


 やばい、このままでは頭からバリバリ食われる。


「今死んだらどうなる?」


『セーブポイントの有効期限内のため12時間後に他の個体に転生します』


「お~! ……お? 12時間後?! みんな喰われてるわ!!」


 やばいよやばいよ、とあたふたしていたらビチ子さんが俺を抱き抱えてくれた。


「旦那さま、お守りします!」


 と、向かってくるゴブリンに背を向ける。母は強し。だが、ゴブリンに転生しようと女を犠牲にして生き長らえるのをよしとするほど腐ってはいないのだ。


「子ゴブリンに攻撃指示!」


『了解。子ゴブリン「α」から「η(イータ)」に攻撃指示を伝達』


 次の瞬間、子ゴブリンは思い思いにゴブリンに襲いかか、かか、……らない!?


 1匹は鼻をほじりながら呆然と立ち竦み、1匹は壁に向かって突撃を敢行し、1匹はなぜかビチ子さんに石を投げつけ、1匹はその場でぐるぐる回っている。


 他の3匹にいたっては俺らそっちのけで三つ巴の喧嘩を繰り広げていた。


「なにを?!」


『子ゴブリンの「かしこさ」が足りないため作戦行動の実行が困難です。作戦行動の難易度を下げるか、別の作戦行動を命令してください』


 つまり「お馬鹿なので誰が敵かもわからなければ、何をすれば良いのかもわからない」ということか。流石、「かしこさ」……「1」!


「んじゃ、『逃げろ』!」


 即座に作戦を変更した。


 7体もいるのだ。1体くらい逃げ延びることができるだろう。


 残った1体に転生できれば俺の勝ち。


 転生回数を減らすのは惜しいが、地獄行きよりかはマシだ。


「……む、むぅ」


 昔の偉い人が「勝つことよりも逃げることの方が難しい」と言っていたが……、


 7匹中、1匹は空に逃げようとひたすらに跳び跳ね、1匹は地中に逃げようとひたすらに穴を掘り、1体は壁を抜けようとひたすらに壁に突撃を繰り返している。


 残りの4匹中、1匹は逃げ道を造ろうと入口の横の壁をひたすらに掻きむしり、1匹は呆然と立ち竦み、他の2匹はお互いに道を譲らずぶつかったまま動かない。


 まさか入口に向かって全力疾走するだけの簡単なお仕事もできないとは……。


 ……ああ「かしこさ」って大事だな。心底そう思った。


 どうやら俺の転生の旅もここで終わりらしい。


 ――冗談ではない!


 ビチ子さんを踏み台にして、俺は高く高く跳び上がった。


 両手にはこぶし大の石。


 落下と同時にこれを叩き付ければ、殺せないまでも行動不能にはできるはず。


 ゴブリンに転生しても、ただでは死なない男なのだ、俺は。


 と、そのときだ。


 地面まであと3秒というところで近づくゴブリンに、別のゴブリンが襲いかかった。


(……俺の取り合いか?)


 何にせよ、これはチャンスだ。


 俺から注意を逸らすとは馬鹿な奴め、と最初の1匹の頭部に両手でこぶし大の石を投げつけ、もう1匹の方には自重をたっぷり乗せたドロップキックを食らわす。


 最初の1匹は頭にもろに石を喰らって動かなくなった。


 だが、もう1匹の方は、やはり重力を味方につけてもチビゴブリンの自重ではたかがしれていたのか、すぐさま起き上がろうとしていた。


 ――ドドメっ!


 石を拾い上げた勢いのままに体をぶん回し、遠心力をたっぷり乗せた一撃をもう1匹の横っ面に叩き込む。 ……つもりだった。


「ぎゃぎゃぎゃ!」


 ――あん?


 もう1匹の額に「C」の文字が浮かんでいるのを見つけて俺は思いとどまった。



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