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第0話 ゴブリンに転生させられた

新作です。

ゴブリンに転生した主人公があれこれ苦労しながら成り上がっていく話です

よろしくお願いします。

 緑色の肌に、痩せこけた手足。


 茶色の水たまりに映るのは、醜悪で、極悪なシワだらけの顔。


 体躯は……ああ、これも酷い。異世界換算で100センチもない。


 ――やっちまった。


 後悔とはまさに後にたたないものだ。超、実感。


 俺はこの生物を良く知っている。


 前世で傭兵をやっていたとき、駆け出しの時によくお世話になったものだ。


 数こそ多いが、1体1体はまさに雑魚で、やつらの卑怯極まる手練手管に注意しておけば、何て事もない相手だった。


 まさか、この俺がそんな生き物に転生してしまうとは。


 ――ゴブリン。


 そう、まさに俺が転生したのは雑魚オブ雑魚魔物のゴブリンだったのだ。


(……なんでこうなった?)


 いや、嘘だ。


 立派に被害者面しようと身に覚えはたんまりとある。


 話は生まれる前に遡る。




 傭兵をやっていた俺は聖女の手酷い裏切りによって死んだ。


 死んだ人間はどうなるか。


 俺の場合は、白い白い部屋に通され、そこで女神に謁見を賜った。


 なぜ、知ってるか? 二回目だからだ。


 前々世でDQNの喧嘩に巻き込まれて死んだときも、この白い白い部屋に通され、女神に謁見を賜った。


 前々世の俺は、現代日本をつつがなく生きる、ただの高校生だった。


 そうして異世界に転生した俺はなんやかんやで傭兵団を率いるまでになり、聖女の裏切りによってその生涯を閉じたわけだ。享年35才だった。


 女神は俺にまたしても転生を勧めてきた。


 俺は、快諾しなかった。前世に未練があったからだ。


 俺は聖女の裏切りの理由を知りたかったし、理由次第では報復もしたかった。


 だが、俺がいくら熱弁を振るおうと、女神はついぞ首を縦に振ることはなかった。


 復讐は何も産まない、すべてを忘れて来世を謳歌した方が良い。


 ……などなど、どっかで聞いたような正論ばかりを並べってきやがった。


 ちなみに、素直に転生に応じていた場合は、どっかの王侯貴族の4男坊に転生し、何不自由なく生涯を過ごすことができたらしい。


 もっとも、後の祭りだ。


 女神の正論に苛立ちを募らせていった俺はついにぶち切れた。


 ――来世より先に今を救わない神に何の価値があるんだ!


 俺は仲間の死により生前より女神に不満を持っていた。


 埒の明かぬ女神にぶち切れ、今になってそれを噴出する形となった。


 ミルテ、マチルダ、ゴッホ……。


 怒りの濁流に乗って懐かしい顔がまぶたに浮かんだ。


 ミルテは流れ矢を受けて死んだ。まだ14の小娘だった。


 マチルダは飛竜に食い散らかされた。遺品は、彼女の左目だけだった。


 ゴッツは情けを掛けた敵兵に殺された。先月、子供が生まれたばかりだった。


 3人は敬虔な女神教の信徒だった。


 ミルテは女神の教えに一ミリも背くことなく生き、マチルダは女神の敵を喜々として葬り、ゴッツは私財を投じて女神教の教会や神殿をいくつも建築した。


 人生を賭けて女神に尽くしていたはずだ。……なのに!


 ミルテの不運を見過ごし、マチルダを飛竜の餌にし、ゴッツの良心をあざ笑った。


 生前の行いにより、彼らの死後は安泰だと女神はほざくが……到底、許せるものではない。


 ミルテも、マチルダも、ゴッホも、まだまだ生きたかったはずだ。


 彼らを生き返らせろ! もしくは時を戻してすべてをなかったことにしろ!


 俺は、女神を感情のまま怒鳴りつけた。


 ……それが、不味かった。


「わだじだって、がれら、殺じだがったわけじゃ、なっ、い! 生ぎででほじがった! 死んでほじくながっ、た! でも、でもっ! 運命は変えられなくて――」


 女神、ギャン泣きである。


 とんでもなく可愛い女神の顔が悲しみに歪む様に、首を括りたくなるほどの罪悪感が襲ってきて、俺の怒りはどこかに消し飛んだ。


「わっ、悪かった……」


 俺は間違っていないはずなのだが、つい謝ってしまう。


 まあ迂闊だった、とは思う。


 女神にも何か事情があったのかも知れないのに、それを知らずに、それを聞くこともせずに、頭ごなしに怒鳴りつけてしまったのだから。


「わがりまじたっ! あなだの願いはぎぎどどけます!」


「え、いや、ちょっと待て――」


 果てしなく嫌な予感がした。

 感情的になった女ほどろくなことをしない。前世の知識、いや経験則だ。

 よもやよもやそれが女神にまで当てはまるとは夢にも思わなかったが。


「冷静に、冷静になろう!」


「あなだはがっでにふくじゅうでもなんでもずればいい! ただし――」


「悪かった! 謝るから!」


「――でぎるものならね!」


お読みいただきまして誠にありがとうございます。


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