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神隠し 短編集

神隠し3 帰省で神隠し

作者: 稲葉小僧

久々の帰省で俺は渋滞を気にしながらも某高速道路を走っていた。

思えば学生時代は某親知らずのイベントやら、その関係で続いて行われる三次元フィギュアのイベントやらで、お盆も年末年始も全く実家に帰らなかった。

就職したら某感染病ウィルスのために数年間は帰省禁止が続き、学生時代から数えて10年近く実家に帰っていなかった。


「そうか……考えてみれば親に連絡すらしてなかったな。少し前に、久々に帰るって連絡したら両親ともに喜んでたもんなぁ……」


10年近く会ってなかった父親、母親。

ちなみに兄弟(兄のみ)もいたりするが、兄貴は何と俺の住んでいるところから一時間近く電車でかかるが隣の県に住んでいるので、たまに会ってたりする。

しかし、これ最悪だな。

渋滞になるでしょうと朝のニュースで予想されていたが、それも含めて早朝にアパートから出たら、高速道路に乗ってしばらくしたら全く動かなくなってしまった……


イライラしても仕方がない。

俺はラジオを点ける。

軽快なアニメ音楽を流しながら時折、最新ニュースを流しているFM局で、結構な大出力で放送しているため、これだけ離れても十分に強い信号強度で入ってくれる。


「ん?」


聞き逃すところだった。

ニュースは再度繰り返される。


「……繰り返し最新ニュースをお伝えします。***県に大災害が発生しました。政府発表は、もう少し後になります。最新ニュースを、お待ちください……」


何だ?

俺は手持ちのスマートフォンを、カーナビモードから最新のニュースサイト表示へ変える。


「……これは当サイトが個人的に飛ばした高性能ドローンからの映像です!信じられません、あの美しかった***県が無人の野となっております!原因は何なのか?何も動くものがないため、生きている人がいるのか、どうして、何が起こって、こんなことになったのか現状は何もわかりません!あ、ドローンからの映像が……切れました。撃ち落とされたのか、それとも電波障害で落ちたのか、それもわかりません!ちなみに、このサイトのある会社は***県と隣接しております。こちらには何ら変わったところはありませんが数百m歩きますと、もう、そこからは無人……不条理とは、こういう事を言うのでしょうか?」


少し動いたところで高速道路を降り、下道を走る。

あのニュースが本当なのか確かめようと思ったからだ。

幸い、というか何と言うか俺の現在位置は***県の県境から近い。

スマートフォンをカーナビモードに切り替え、県境まで走る。


驚いた……

国道を境にして、本当に***県側だけ何も動くものがない。

これは、あっち側にも通ってる高速道路がやられてても不思議じゃない。

俺は渋滞の原因が分かったので一安心。

しかし、帰省はどうしよう?

見えている通り***県だけ無人の野になっているということが事実なら、ここを迂回すればなんとか実家へは行けるはず。


俺は一計を案じ、少し戻ることとする。

数十km戻り、高速に乗る。

高速を少し戻ると例の***県を迂回するようなルートとなる++高速という別のルートへ分かれるので、そっちへ行く。

やはり想像通り、混んではいるが渋滞になどなっていない。

俺はその日のうちに、実家が有る県に入ることが出来た。


両親にも、心配で帰省してきたという兄にも実家で会えた。

兄に交通状況を聞くと、車は***県が無人で、そこを通るルートは全滅に近いとのこと。

じゃあ鉄道は?

と聞けば……


「俺の嫁と子供が***県を通る鉄道でこっちへ来る予定だったんだが……音信不通なんだよ。列車で***県に入った車両は出てきたものが確認できないんだと」


暗い声で兄が言う。

ニュースで、霊能者やら、どこかの大学研究者やらが討論会を行っていた。

霊能者は、これは神からの罰だったのですというトンデモ話が持ち上がり、研究者からはプラズマのせいですという、これもおバカ一筋の意見しか出てこない。

呆れたMCが一言。


「こんな奴らばっかしだから、話が進みやしない。いっそ、エイリアンの侵略とでも言う人がほしいもんです」


と、MCのボヤキが出た途端、デジタルであるはずの放送画面に……


「この事態は我々が引き起こした。我々は地獄の住人である。***県に入るもの、現在***県にいるもの。乗り物も含めて、全て地獄の所有物と認定するので現世のものは干渉無用!今現在より、***県は他の地域より隔離されるものとする!手出しも出来ぬ。交渉も無駄だ」


これだけ宣言すると、声の主も分からないまま、放送が元に戻る。

これより、***県には入ることも、そこから出てくる物・者も皆無となった……


警視庁と県警、軍と大学研究室が合同で捜索隊を結集し、***県へと入る。

入ってすぐの連絡は通じたが、数分後……


「ザザ……受信できてますか?!ここは、本当の地獄です。住民、怪物、妖怪のようなものすら見えます。我々は、ここに入るべきじゃなかった……もう、戻れません……」


ブチッ!

という音と共に通信連絡は途絶え、それきり、何の音沙汰もない……


それから、***県の県境には有刺鉄線が張られ、ここより侵入禁止のデカイ看板がアチコチに立てられた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 帰り道が無くなるってのは災害などで日常茶飯事ですが、ここまで壮大な喪失となると、余りに非現実過ぎて、もはや笑うしかないですね。 これ、きっとアパートを出た時に間違った世界線に迷い込んだので…
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