第1話 Gの者
どの話から読んでも大丈夫な話になるよう試みています
鏡に映った自分の姿はまるで大学院を自主休学中の屑学生の風貌であった。実際、大学院を自主休学中の屑学生だった。俺は自信の外見から健康上特に問題がないことを確認するとベッドの上に寝そべりスマホを手に取った。もちろんiphoneではないandoridだ。なぜandoridなのかは後で説明するかもしれないし、しないかもしれない。
現状の説明をしてやろう。デビットカッパーフィールド式に話すつもりはないから安心してくれたまえ。俺は大学院休学中の現実から目を背けるため、格安プランのお一人様用宇宙旅行を満喫していた。だが一週間前、乗っていた宇宙船が未知の惑星に墜落した。chatgptver999によると突発的な磁場の発生が原因の可能性が高いそうだ。
ともかく不幸中の幸いか安全装置が作動し怪我は無く、宇宙船も航行不可となったが電気はあるし水もあるつまり生活するのには困らないというわけだ。そしてなによりインターネットは生きてた。すぐにSOS信号を発信すると返答があり、救助は1年後になるということが分かった。休学の延長が決定した。
その後、小型の探索機を繰り出し、情報収集を行った結果、ドラゴンとかエルフとか魔法使いとか見つかったのでこの惑星がみなさんご想像通りのテンプレ異世界的な惑星であったことは直ぐにわかった。
俺は最初の一日だけは未知の世界に興奮し外に出た。異世界!異世界!それは人生に絶望した現代人が抱く最後の希望である。かくいう俺もそれを望む内の1人であった。現代社会では冴えない俺もひとたび異世界へと召喚されれば、ドラゴンを狩り、魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらし、果てはハーレムを形成しバラ色の人生を送るのだ。待ってろバラ色異世界ライフ!……が、直ぐに船内に引きこもった。
なぜならリスクとリターンが釣り合っていないからだ。そもそも何のスキルも無い男が実質無法地帯に投げ出されたところでその辺で野垂れ死ぬだけだろうし、仮に何かしらの力があっても危険を冒してまで成し遂げたいことはない。俺は性病怖さに風俗に行かないぐらいには慎重かつ合理的な男だ。
この宇宙船はそれなりに頑丈で隠密機能もあるのだから船内にいる限りは安全が確保されているのだから冒険をする必要は無いのだ。
そうして、俺は惑星イセカイでも大学四年間と何ら変わりの無いネットサーフィン生活を堪能しているのであった。現状説明おわおわり!
「何をしているんぬ?」
読者諸君への説明を終えて匿名掲示板へと目を移した俺に話しかけてきたのは今回の旅行で雇った護衛のネコ型ミュータントだ。勿論格安プランだったので雇用主である俺に対してもまともに敬語を使わないが今更そんなことは気にしていない。
名前はミリオン・キャッツ。あだ名は百万回抜いたネコ。何でも抜刀術の達人らしいがそんなことはどうでも良いこの物語でこいつが活躍する機会は永遠に訪れないだろう。
「匿名掲示板を見ているんだ。どうした部屋に来るとは珍しいじゃないか?」
「飽きたんぬ」
「は?」
「一週間も閉じこもっているのはいい加減飽きたんぬ」
やれやれこらえ性のない奴だ。インターネット環境があるのに飽きるとはこれだから引きこもりの才能がない奴は困る。故郷でコロナウイルスが流行ったときも巣ごもりで精神に異常をきたした奴がいたそうだが、俺からすればコロナ前と後でもやってること変わらなかったぞ。そもそもお前ら普段から外出しすぎなんだよ。人間はもっと家にいるべきなんだ。
普段なら散歩でも行ってこいと言っただろう。しかしこのネコ型怪人は現状の俺の唯一の護衛であり万が一この宇宙船が原住民に見つかったときのことを考えると、この場に留まって貰わなければ困る。何とか引き留めなければならない。
「君は時間の潰し方を知らないだけなんだ。ミリオン」
「でもご主人に教わったこの『なんでも実況G』ってのもいい加減同じ話題ばっかで飽きたんぬ」
「おいおい、まさかこの一週間ずっとそのサイトのその板を見ていたというのか」
「その通りぬ」
まさか、それでは飽きるに決まっている。
「いいだろう。それでは教えてやろう匿名掲示板巡りの術を! 」
「匿名掲示板の面白さというのは基本的に人の多さに依存する。俺がお前に『なんでも実況G』を勧めたのはそこが現状『5ちゃんねる』で人口が最も多い板だからだ。
よって飽きてきたら次に人口の多い板に移動するというのが定石だが、ここはあえて雑談スレでなく専門スレという選択肢を考えてみよう。
専門スレは人は少なく荒らされやすいが自分の好みの話題が確実に話せるというメリットがある。俺のおすすめはアニキャラ個別板だ。名前の通り特定のアニメキャラの話をするところでアニメのピンナップや良質な二次創作イラストが充実していて目の保養になる。
他には、そうだな『スマホゲーム板』や『スマホアプリ板』もいいぞマイナーどころのスレなら対立煽りも滅多に沸かないから快適だ。とにかく自分の好きな話題で検索すればなにかしらヒットするさ」
「ぬはジャングル集合的羞恥ロボット糞尿フェチなんぬがそんなスレもあるんぬか?」
「……あるんじゃないかなあ」
「この『世界のスケベ板』ってのが面白そうなんぬ」
なんだその板初めて聞いたぞ。
「と、とにかく色々試行錯誤してまた飽きたら話しかけてくれよな」
そう言うとミリオンは自分の部屋へと帰っていった。全く手間の掛かる奴だ。
さて、ひとまず危機は去ったが、またやつが飽きたときのために一眠りしてから情報をまとめておくとするか。俺は英気を養うために目をつむった。
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