正義なんてない
私はスーパー少女マジカルムーンライト、悪は私が全員滅ぼすわ!あそこに怪人赤タイツ男がいるわ!成敗してくれるっ!
くらえ、マジカルプラネット!!
「まっ、話を、ぎゃあああああ」
怪人は倒れた。
やったわ、悪は倒したのですわ。
正義は勝つんだわ。
私は次に行くのですわ。
さよならですわ。
スーパー少女マジカルムーンライトは去っていった。
ありがとう、怪傑ムーンライト仮面。
少年がポツリと呟いた。
相手を簡単に悪だなんて決めつけるもんじゃないんだなぁ。
「ちぃ。この前はひどい目にあった。通報があってきてみれば怪傑ムーンライト仮面にボコボコにされたのだ。」
俺は正義のヒーローなのに。
「ここらへんで通報があったんだけどな。」
そこには買い物をしている下っ端戦闘員がいた。
やつはこっちに気づいた。
「おい。なんでこんな所にいるんだ?」
「なんでって買い物してるんだけど。」
「悪の手先には似つかわしくない買い物姿だな。」
やつは黒タイツにエプロン姿で来ていた。
「俺。もう足洗ったんだ。もう悪いことはしねえんだよ。」
「お前がか?あの子供を泣かせていた、お前がか!?」
「そうだよ。あの子供を泣かせていた俺がだ。」
「悪いと思ってるんだな。」
「俺子供が出来たんだよ。見る目が変わったんだ。父親に虐待されていた俺じゃねーんだよ今は。」
「・・・」
どうも倒しずらいな。
やっぱり今日はやめにしよう。
「達者で暮らしな。」
「おう。」
その時だった。
どーん
スーパーの端っこから誰かがビームを打った。
「ここであったが百年目。スーパー少女マジカルムーンライト参上!じき成敗してくれる!」
彼女は杖を構えた。
「やめ。やめろ。俺は足を洗ったんだ。」
少女は睨む。
「足を洗ってもあなたは悪よ。」
杖を悪の手先に向けた。
「マジカルプラネット!」
「やめろ!」
俺は怒鳴った。
「こいつには子供がいるんだ。父親になったんだよ。清く生きてるんだ。」
「そんな簡単に人が変わるわけないでしょ。騙されてるのよ。」
彼女は怪人を睨んだ。
「そこにいると赤タイツ男。あんたも一緒に消すわ。」
「こいつはやらせん。」
「どうだかね。」
「まっ、結局、正義はないんだけどね」
それを見ていた少年は警察を呼んだ。
「やめなさい!」
後ろを見ると13歳くらいのシスターがきた。
胸には警察のバッジをつけていた。
「こいつが悪いんだよ!」
二人は同時にそう言った。
二人はお互いを睨んでいた。
「私にはどちらも悪に見えます。」
少女の目がキュインキュインと鳴り響く。
「仲直りをしませんか。」
「こいつがわるい。」
「こいつがわるいんだ。」
二人の声はハモる。
「怪人は今でも悪なんですか?」
シスターロボは言った。
「どれだけ足を洗っても今までやってきたことは消えないんだ。」
「これからを見るんだ。これからを。」
「怪人が悪か善かで結果が変わってきます。」
「善だ。」
「悪だよ。」
シスターロボは怪人を見た。
「邪悪度計測50%、悪でも善でもありません。」
「じゃあ善だよ。」
「こいつをこのままにしとけって言うの?冗談じゃないわ!」
スーパー少女は杖を怪人に向けた。
「マジカル〜」
「やめろ!」
正義のヒーローはマジカルムーンライトに熱線銃を向けた。打つしかないかの表情で。
「プラネット!」
「ライトバーニングアタック!」
「やめてください!」
シスターは二人に光線を放った。
シスターの光線は二人に直撃した。
二人はあっけなく死んでしまった。
シスターは沈黙する。
「あ…あ…」
店内は静まりかえる。
「わた…わた……………………………………………………………………
わたわたわたわたしが、ひとを………ひとひとひとひとひとひとを、
うわああああああああああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ガシャーーン!!
店内を暴れまわる。
「ああああああああああああああああああああああああガガガガガガガッ、プスンッ、う、うわあああああああぁぁあああぁぁ」
13歳の少女の型をしたシスターロボは逃げだした。
何もかもを捨てて。
何もかもを放棄して。
逃げだした。
店内は騒然となった。二人が死んで。ロボットが逃走したのだ。
騒動になった。
騒動になって暴動になった。
僕はこんなこと望んでいない。
暴動になっては困るのだ。
「警察、はやく警察。」
警察はもういないのだ。
「きゃあああああ、誰か。」
「おい、どけよ。」
「おかあさーん。おかあさーん。」
もうパニックだ。
何が何だかわからない。
正義のヒーロー。
正義なんてないんだ。
僕は逃げ出した。
騒ぎの中で怪人が子供の手を掴んだ。
「ぼうず。もうここはあぶない。いこう。」
そうだ。
ヒーローがいないのであれば。自分がヒーローになればいい。
なんでこんな簡単なことに気づけなかったんだろう。
「怪人!君!こっちだ!!」
僕は怪人と子供に向かってこっちだと指指した。
怪人はすかさず人混みを避け子供を誘導する。
僕は出口に走った。
そう。
ここは作業員専用のバックヤード。
従業員以外立ち入り禁止だ。
「ほうず。大丈夫か?」
「うん。」
「よかった。」
怪人は子供を見てホッと一息ついたようだった。
「きみ。」
怪人はこっちを向いた。
「ありがとう。」
「…どういたしまして。」
「はい。おにいちゃん。」
子供は大事に掴んでいたビニールから、花を取り出した。
「ありがとう。」
僕は名前の知らない花を見ながらこう思った。
結局僕はなにもないただの人間だったのだ。




