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紅の剣士  作者: 雨宮結城
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Part4

山から城へと帰ってきたマキ。城に戻ったマキは、城内の道で一人、蹲っていた。


マキは、ミヤに言われた事を思い返し、考えていた。


洗脳されていた頃の出来事とは言え、マキがミヤの村を焼き滅ぼし、父親であるタムラを殺してしまった事。しかもそれだけではなく、ミヤが言っていた、他にもたくさんの村や人を滅ぼしてきた事。


マキがこれまでやってきた過ちは、とても多かった。


確かにマキは、償いの誓いは忘れた事はない。だがミヤの言う通り、心のどこかでは、今ある平和の中で、平凡に生きてきた。


何故過去の事を、もっと深く考えてこなかったのか、今のマキはそれがとても情けなかった。


自分が犯してきた罪は、とても多いものだったはずなのに、これまでのマキは、それをミヤに言われるまで、深く考えてはいなかった。


今のマキからすれば、今回のミヤによる汽車事件が起きるまで、これから罪を犯さなければいい、たくさんの人を救っていこう、そう考えていた。


そして汽車事件が起き、最初は他人事の様に考えていた。それもそのはずで、洗脳されていた頃の記憶が、今のマキには思い出せなかったからだ。


だから、自分とは関係無い人が恨まれている、それを止めなければ、そう考えていた。


だがミヤに会い、その恨みをかっているのが自分だとハッキリ分かってしまい、マキは自分の罪の多さと重みをしっかりと理解した。


そして今、自分はこれからどうすればいいのか、スレイヤーが負傷した中、マキはどう生きていけば良いのか、本来であれば、マキのすべき事は、スレイヤーを守る為、スレイヤーを狙った悪を倒すことだが、それはホントに正しい事なのか、むしろ、恨みの元凶である自分こそが悪なのではないか、正義とは一体なんなのか、マキの頭の中は、それでいっぱいだった。


「…(私はこれから、一体どうすれば…どうすれば償っていけるのか、私は、生きてて良いのでしょうか)分からない、何が正しいのか」


そう考えている中、マキはある人物に声をかけられる。


「大丈夫ですか?マキさん」


「…サオリさん、それに、サキさんも」


声をかけたのは、こことは別の異世界、ソウルワールドと言う世界で、ミレイユ姫と言う女王の護衛部隊、剣士隊のリーダーである、サオリとサキと言う少女だった。


「どうしてここに」


マキは立ち上がった。


「スレイヤー姫が負傷したと聞きましたので」


「それで心配になり、私とサオリさんが、マキさんとスレイヤー姫の様子を見に来たんです」


「…そうでしたか」


「スレイヤー姫は、大丈夫ですか?」


サキがマキに聞く。


「はい、スレイヤー様は、火傷を受けましたが、命に別状はありません」


「そうですか、それは良かった」


「はい…」


「…マキさん」


「はい?」


今度はサオリがマキに聞いた。


「貴方は、大丈夫なんですか?」


「え…」


「何か、考え込んでいるようでしたけど」


「…はい。私、自分が許せなくて」


「…それはまた、なんでですか?」


「私は今まで、たくさんの人の命を奪い、住む場所さえも奪ってきました。ホントなら、私はその罪と向き合い、償っていかなければならない。なのに私は、その出来事を過去のものとし、深く考えてこなかった。スレイヤー様が火傷を負ったのは、私のせいなんです。私が犯した罪の被害を受けた人が、私への復讐を成す為、スレイヤー様はその被害を受けました。犯人を見つけようと山に行きましたが、犯人はいなく、帰っていた時に、タムラと言う、私が殺した男の娘に会いました。私は彼女に、何も言えなかった。自分がここまで恨まれている事に、彼女に会うその瞬間まで分からなかった。私、このまま生きていても、仕方ないと思いました」


「それは」


「はい、分かっています。それは償いではなく、ただの逃げだと。でも、私はこの罪とどう向き合えば良いのか、分からなくなってしまいました。サオリさんやサキさんはもちろん、アスタさんやユキさん達に出会ったお陰で、私は本来の自分へと戻れた、不思議とその瞬間、自分の罪とも向き合っていけると、身勝手にも思ってしまいました。でも当たり前な事に、私の罪は、いえ、罪と言うものは、簡単には償えない。そんな当たり前すら、私は気づけなかった。いえ、考えるのが、怖かった。その重さを知れば、私はきっと自分を許せない、だから考えないフリをしていたのかもしれません。もう私は、どう生きていけば良いのか、分かりません」


マキは、サオリとサキに、自身が思っている全てを話した。話すことで、自分の罪を裁いてほしい、そんな思いが、マキの中にあったのかもしれない。


「…マキさん」


そんな中、サオリがマキに語りかける。


「私の親友であるユキちゃん。彼女は、母親から虐待を受けていました。最初からそうだった訳ではありませんが、父親を事故で亡くし、ユキちゃんとミユキちゃんを助けようと頑張りましたが、母親である美智瑠さんは、虐待という罪を犯してしまいました。それからしばらく日が経ち、ユキちゃんとミユキちゃんは、また美智瑠さんに偶然出会いました。その時美智瑠さんは、自身の罪に耐えきれず、自殺を図ろうとしたそうです。でもユキちゃんは、その行ないを止め、自身の罪と向き合い、生きて行かなきゃいけない。そう美智瑠さんに伝えたそうです。それから美智瑠さんは、なんとか今を生き、明日もまた生きる為、必死で生きています。マキさんの罪と、美智瑠さんの罪の重さは、全然違います。ですが、人間と言うのは、何もしなくても、生きているだけで、誰かの恨みをかい、生きているだけで、その人からは罪と見られる事があります。ですが、恨みをかおうと、今を生き、明日を迎える為、必死になって抗う。人間と言う生き物はそう言うものだと思います。そしてマキさん、貴方のその命は、もう貴方だけのものではありません。貴方には帰るべき場所、守るべき人がいるはずです。貴方が今すべき事は、抗う事です。確かに罪は、簡単には償えないし、何をしても、許されない事がほとんどでしょう。ですが、タムラと言う人の娘を名乗った彼女は、今、殺人と言う罪を犯そうとしている。それを止められるのは、マキさん、貴方だけです。私やサキさんではない、貴方だけが、彼女を止められる、止めなければならない。それが、罪を犯してしまった者の宿命です。だからマキさん、貴方は、罪を償う為にも、今を必死に抗ってください。決して死のうとせずに」


「サオリさん…」


「そして、貴方もリーダーならば、皆を守り、彼女も、救ってあげてください。彼女は今、復讐という呪いに取り憑かれています。それを止めることが許されているのは、貴方だけなんです。マキさん」


「私、だけ…」


「マキさん、彼女を、どうか止めてあげてください。マキさんのすべき事は抗う事、そしてそれは、罪人を増やすことではありません」


「サキさん…」


「貴方には、もうたくさんの守るべき民がいます。皆が望むのは、リーダーのあるべき姿は、平和を守ることです」


「!」


サオリとサキ、二人の言葉をもらい、マキは、決して許されない、だとしても、償う為、民を守る為、自分と同じ者を増やさない為、今を必死に抗う決意をした。


「ありがとうございます。サオリさん、サキさん。私、やります。今を、抗います」

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