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紅の剣士  作者: 雨宮結城
1/6

Part 1

ある夜、スレイヤーと言う女王が支配している次元の中に存在する、ある村があった。


その村は、女王スレイヤー本人がいる次元だ。


村の人達は、平和に暮らしていた。


騒ぎが起きてしまった今日まで、村の人々は平和に暮らしていた。


その夜の村は、平和だった以前の姿がまるで消え、恐怖と悲鳴が飛び交う、まさに地獄だった。


燃えさかる炎の影響で、崩れた家の瓦礫が落ち、それによって頭を打った人から出た血が道に広がっていた。


村の人達は、必死になって逃げていた。


だが、恐れていたのは燃えさかる炎ではなく、一人の剣士であった。


その剣士の持つ武器には、何十人もの血が付着し、ポタポタと地面に血が落下していった。


その剣士は、フードで顔を覆い、周りからはその剣士の素顔が見えない状態だった。


「や……やめてくれ……俺には家族が……」


「あ……やめて、助け……」


村の人達は、大人も子供も、容赦なく斬り殺されていた。


そして、その剣士はある家に辿り着いた。


まだ逃げていない人がいたのだ。


「……」


その人物は、一刻も早く逃げなければならない、そんな状況にも関わらず、逃げず待っていた。


だが逃げなかったのは、死ぬ為ではなく、映像を録画できる特殊キューブに、村を襲った犯人を写し、それを誰かが見てくれるのを願った為だった。


そして犯人にバレぬよう、でも犯人の姿や声を記録する為、その人物と犯人が見える位置に特殊キューブを置いた。


そして、その家のドアが犯人の剣によって破壊され、追い詰められたその男。


名をタムラと言う。


「貴方で最後……ですね」


「__村の人達は」


「全員殺しました。そして、貴方が最後の一人と言う訳です」


「くっ……」


「それにしても……なぜ貴方は逃げなかったのですか? 村の入口からこの家は最も遠い……逃げられるチャンスはいくらでもあったはずです」


「……」


そう、タムラが逃げなかったのは、逃げるより、犯人の正体を暴こうと言う気持ちがあったからだ。


もちろん、死は覚悟していた。


「__まあでも、私は今まで、誰一人として逃がした事はありません。仮に貴方が逃げていても、私は貴方を殺せたでしょう」


「__目的はなんだ。それに、貴様は何者だ」


「驚きました。この状況でも、話せるのですね。今から殺されると言うのに」


「いいから答えろ!」


「__そうですね、貴方で最後ですし、今回だけ教えましょう。と言っても、今まで名乗った事は一度もありませんが」


「……」


「目的は、世界のバランスを保つためですよ」


「なんだと……」


「食料や寝床、それらには当然限りがある。そしてこの世界において、人は増えすぎた。だから、世界のバランス、均衡を保つ為、邪魔と判断された貴方がたを殺す。それこそが、スレイヤー様より授かった、私の役割」


「スレイヤー様が……そんな禍々しい事を」


「そして、名ですが……紅の剣士。とでも名乗りましょうかね。それでは、さようなら。貴方の勇敢さ、いえ愚かさは、私が記憶しておいてあげます」


その犯人は、剣に染み付いた血と、今まで殺してきた人間の血を思い出し、紅の剣士と名乗った。


そして、タムラは心臓を貫かれ、殺されてしまった。


「任務完了」


そう言い、村を破壊した犯人は、瞬間移動で消えた。


そして、それから年月が経ち。十年後の、スレイヤーの次元の西暦で、次元歴一五〇〇年のある日。


スレイヤーが立ち上げた魁平隊の戦士達は、城への出勤前、汽車に乗り向かっていた。


魁平隊の戦士達は、毎日家から城までの間に距離がある為、魁平隊だけが乗る、戦士専用の汽車に乗り向かうのが、朝行なう一連の流れだった。


そして、その汽車がある駅に着いた時、そこに戦士では無い別の人物が、戦士の一人を気絶させ、引きづりながら、汽車の中へと入ってきた。


「?……!?」


魁平隊の戦士達は、その光景に驚いた。


そして、戦士を気絶させたその人物は、フードで顔や身体を隠していた。


そして気絶させた戦士を、座っていた戦士達の前に放り投げた。


「……」


「おい! 大丈夫か!」


「お前、何者だ。なぜこんな事を」


「お前らが聞く必要はない。私はある一つの事を聞きに来ただけだからな」


「その声、お前女か」


「あぁ、そうだが」


「魁平隊の者ではないな。スレイヤー様に逆らう不穏分子か。ならお前を牢へ送ってやろう」


「私は戦う為に来たのではない」


「何を言うか、先に仕掛けてきたのは貴様だろう」


「__まあ、そうだな。良いだろう、かかってこい」


「お前ら、行くぞ!」


「おぉ!」


魁平隊の十人の戦士達は、フードの女に挑んでいった。


「っ!」


「ハァ!」


「おら!」


「__ふんっ!」


戦士達は、一斉に向かっていったが、その女からの回し蹴りにより、全員が車両内のどこかへ蹴り飛ばされた。


「うっ……」


「貴様、なにもの、だ……」


「……」


その女は、一人の戦士の元へと近づいた。女は、蹴り技をしたが、ある情報を伝える為、一人の戦士には手加減をしていた。


「かはっ……うっ」


「手加減はしたし、まだ息はあるな」


「お前……誰の……命令で」


「命令、確かに貴様らを無力化させる命令は受けたが、それだけの為に来たのではない」


「うっ!」


その女は、戦士である男の髪を掴んだ。


「貴様に問う、紅の剣士。この言葉に聞き覚えはあるか」


「紅の……剣士だと……」


「__どうやら、貴様は知らないようだな。(恐らく、気絶させたコイツらも同様だろうな)」


「紅の剣士が誰かは知らんが、お前、ソイツに会ったら、一体何をするつもりだ」


「__なぁに、簡単な事だよ。復讐だ。なぜなら私の父は、その紅の剣士によって殺されたのだからな」


「なっ! なんだと……」


「お前らのトップの者、あるいは腕のある剣士に伝えろ。タムラの娘が、紅の剣士を探しているとな」


そう言い残し、タムラの娘は、瞬間移動により、戦士の目の前から姿を消した。

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