僕の義妹は魔眼でなんでも解決してくれる〇〇である
ミア・ブラッドドレインは僕の義理の妹である。いつも目を閉じていて家にいる時は猫の着ぐるみパジャマを着ている。ちなみに外に出る時はフリルがたくさんついている黒いドレスを着用する。体型は小柄で凹凸はほとんどない。雪のように白い肌はいつ見ても白く、黒い長髪はいつ触っても水分が程よく毛先まで行き届いている。彼女はいつもおっとりしており、眠りにつくと昼寝中の猫のようにかわいらしい表情を浮かべる。そんな彼女には秘密がある。
「お義兄ちゃん、そろそろいーい?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう。それじゃあ、いただきまーす」
普通の人間は他人の首筋に噛みついて血を吸ったりしないし、魔眼なんて持っていない。けれど、僕の義妹はいつも決まった時間に僕の血を吸うし、魔眼持ちである。そう、僕の義妹は吸血鬼なのである。
「あー、おいしかったー。うーん、でも、ちょっと甘かったなー」
「うーん、それは多分、僕がさっき飲んだりんごジュースが原因だろうな」
「あー、なるほどー。うーん、でも、まあ、別に嫌いじゃないからいいよー」
「そうか。それは良かった」
そんなちょっと変わった義兄妹の会話を僕の部屋のベッドの上でしていると彼女は唐突にとんでもないニュースを話し始めた。
「ねえ、お義兄ちゃん」
「ん? なんだ?」
「もうすぐ地球にとってもおっきい隕石が落ちてくるよー」
「な、なんだって!? それでそれはいつどこに落ちるんだ!?」
「うーんとねー、あと十分くらいでこの星で一番おっきな大陸に落ちるよー」
「な、なんだって!? というか、どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ!?」
「うーんとねー、今さっきワームホールみたいなものから現れたんだよー。だから、その時点でこの星から逃げるのはもう無理だけど一応伝えておこうかなーって」
「そ、そうか。けど、お前の魔眼ならどうにかなるんだろ?」
「さぁ? どうだろう。多分なんとかなると思うけど、魔眼使うとお腹空いちゃうんだよねー」
「ミア! 頼む! あとでお前の好きな食べ物たくさん買ってやるからこの星を救ってくれ!!」
僕が頭を下げると彼女は僕の両頬に手を添えた。
「お義兄ちゃん、とりあえず頭上げて」
「あ、ああ、分かった」
僕が頭を上げると彼女はニッコリ笑った。
「ねえ、お義兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「この星、好き?」
「ああ! 好きだ!!」
「私より好き?」
「いや、お前の方が好きだ」
「そっかー、良かったー。よおし、それじゃあ、久しぶりに頑張るぞー」
よ、よかった。ミアがやる気を出してくれた。そういえば、出会って間もない頃は結構ギリギリまでやる気出してくれなかったなー。どうしてだろう?
「魔眼発動!! ブラックホールまで飛んでけー!!」
彼女が開眼し、カラフルな両目を輝かせると例の隕石は地球から遠ざかり始めた。
「や、やったー! ありがとう! ミア!! お前のおかげで今回もこの星は救われたよ!!」
「あー……うん……どう、いたしまし、て……」
彼女が両目を閉じながら両膝をついたため、僕は彼女をしっかり受け止めた。その直後、彼女の腹の虫が鳴いた。
「あー、お腹空いたー。お義兄ちゃん、今日の晩ごはん、お寿司にしてー」
「ああ、分かった。たくさん食べな」
「うん、そうするよー」
彼女はそう言うとスウスウと寝息を立て始めた。
「おやすみ、ミア」
僕が彼女を優しく抱きしめると彼女は嬉しそうにニッコリ笑った。