117_愛するミスティへ
─── 愛するミスティへ
君がそうしていられる時間が限られているのかもしれないから手短に書く。
あれからすぐ、俺は自分がユリウス・シザリオンであることを思い出した。
だが、記憶は完全ではない。
こうなる直前の記憶がどうしても思い出せない。
あれからもう三カ月以上経つというのに。
君と、アークレギスのことが心配だ。
無事であってくれると良いのだが。
気付いていないかもしれないから一応こちらのことも書いておく。
まったく驚くことに今俺は、この国の王女であるジョセフィーヌ・カルドエメフ姫として過ごしている。
そして、おそらく今、これを読んでいる君が魂を宿している相手は、ジョセフィーヌ姫専属の侍女であるアンナという娘だ。
アンナにも、それ以外の他の誰にも、まだ俺の正体は知られていない。
王女に迷惑を掛けるわけにもいかないので、どうかこのまま、この事実を周囲に知られないようにしておきたい。
可能であれば直接会って話したいが、それが難しい場合はアンナの手に返事の手紙を持たせて欲しい。
そしてどうか、何が起きているのかを詳しく教えて欲しい。
どうしてこうなったのか。
あのときミスティが言っていた、俺を狙う敵とは誰なのか。
本当はすぐにでもアークレギスに行って確かめたいが、ジョセフィーヌ姫がとても病弱な身体であることと、正体を悟られるわけにはいかない事情から、今は自重している。
しかし、もしも何か良くないことが起きているのなら、必ず万難を排して君を助けに行くつもりだ。
世界中の誰よりも、どこにいても、君のことを愛している。
ユリウスより ───