第二話
———翌日。1~4時間目が終わり昼休みのチャイムが鳴った。
「......」
「———でさでさ!
その場面で面白いのはさ!
スプラッタが右と左わかんなくて混乱してんの!(笑)
マジ面白いと思わね?(笑)」
「......」
「おーい! キョン?? 生きてるかぁ?」
「あっごめん。ボーっとしてた。」
「ったく,しっかりしろよな。じゃあとりあえず,今週末オレの家でスプラッター映画鑑賞会な。絶対来いよ。」
「えっグロいのはちょっと...」
「なんだよ男らしくねえなぁ。あ,やべ。もうこんな時間だ。ちょっとトイレ行ってくるわ。」
そういう俺の言葉には耳も傾けず,雄二はトイレに行ってしまった。
神田・マイケル・雄二。俺の中学時代からの友人で,スプラッタ―映画が好きな変わったやつだ。スプラッタ―映画に面白いって言うところとか,少しサイコパスっ気がある気がするし。
ちなみに,父がアメリカ人で母が日本人のハーフらしく,金髪は地毛らしい。
「てかアンタ,本当に今日は1時間目からずーっとボーっとしてるじゃないの。
調子でも悪いの?」
と,瑞樹が珍しく俺の心配をしに俺の机のところまできた。
本当に珍しい。雨でも降るのだろうか。
「いや,別に。寝不足なだけだよ。」
「ふーん。ならいいけど。ちゃんと寝なさいよ?」
「あーわかったよ。」
———嘘だ。昨日はしっかりと8時間寝たから寝不足ではない。
実は朝のことがずっと頭から離れないのだ。そう。彼女のことが。
これは近いうちに告白をするべきなのだろうか。いや,突然告白なんてキモすぎるし,そもそも一目惚れなんて人生で一度もしたことないぞ!?
どうすれば彼女と近づける?
えーっとまずはディナーに誘って,それから———。
キーンコーンカーンコーン。
———混乱してそういうことを考えているうちに,5時間目のチャイムが鳴った。
「さーて,5時間目始めるぞー。」
と,担任の山谷先生が教室に入ってきた。
「まずみんな,入学おめでとう。担任の山谷だ。
みんなお互いのことを知らないだろうから,まずはお互いのことを知るためにオリエンテーションをしようと思う。
と,いうわけでまずは先生から自己紹介をしよう———。」
先生の自己紹介が一通り終わったところで,次は生徒が自己紹介をすることになった。
順番は番号の1番から。俺の高校では50音順に番号が割り振られている。
みんな緊張して自己紹介をしている中,俺はさ行あたりの人の席が一つ空いていることに気が付いた。
「さて,次は三枝だな。ってあれ? 三枝ひなた はいないのか?」
先生も知らないみたいだ。どういうことだろう。
すると,教室の前のドアがすっと開いた。
「おっくれました~。おはようございます~先生~。ねむぅ~。」
「三枝!今まで何してた!」
「えっとぉ。昼休みに屋上で昼寝をしていたら~。そのまま寝てました~。」
「はぁもう...今クラスのみんなで自己紹介中だ。三枝も自己紹介をしなさい。」
「はぁい。三枝ひなたです~。よろしくです~。ふぁあ~。」
と眠そうな声で,三枝は自己紹介をした。
「それじゃあ席に戻りなさい。」
「はぁ〜い。」
そういうと三枝は窓側の前から3番目の席の方に向かった。
しかし,突然こちらのほうを見てきてこういった。
「きみぃ〜。なんか悩み事あるねぇ〜?」
「ひぇ」
あまりにも突然やってきてそう言うので,間抜けな声が出てしまった。
なぜ?なぜ俺が悩み事があることが分かった?
あの一瞬でなぜ分かった?
冷や汗が流れる。もし三枝が,俺が雛切先輩に恋していることを知っていて,クラス内のみんなに言いふらしたら…
しかし,ちょうどいいタイミングで先生が三枝に注意をしてくれた。
「三枝。いいから早く席に戻りなさい。」
「…わかりましたぁせんせぇ。」
ふう…びっくりした…
本当になんなんだこの子は。正直何考えてるかわかんなくて苦手だ。
「ーーーよし,これで全員の自己紹介が終わったな
じゃあ今日はあとは自習時間にする。先生は職員室にいるから,なにかあったら来なさい。」
そう言って先生は教室を出ていった。
本当に今日は疲れた。雄二といい三枝といい,なんで俺の周りには変わったやつが多いんだ…
そう言って俺は机に突っ伏し,深い眠りについた。