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掌編小説集7 (301話~350話)

宝の地図

作者: 蹴沢缶九郎

宝の地図屋という店がある。文字通り、宝の地図を扱う店である。客は店で宝の地図を購入し、途中に散りばめられた幾多の障害を攻略しながら、地図に印された場所を目指す。地図の値段は様々で、値段に応じて隠された宝の価値や障害の難易度も変わる。

決して命が危険に晒される事もない冒険の果てに、人々は困難に見合う分の宝と達成感を手にする。冒険の間だけ、子供は海賊漫画の主人公になり、大人はいつか見たアクション映画の考古学者となった。


ある時、宝の地図屋を訪れた男が店員に言った。


「俺は今まで、数多の冒険をこなし、宝を手に入れてきた。もう普通の冒険では満足出来ない。この店で一番高価な宝の地図をくれ」


男の申し出に、店員は困惑しながらも地図を渡す。だが、渡された地図を一瞥(いちべつ)した男は店員を怒鳴りつけた。


「バカにするな!! 俺が言っているのはこんな地図ではない!! この店にはもっと凄い宝の地図があるはずだろう、それをよこせ!!」


「確かにお客様の仰る通り、当店にある最高難易度の地図は別にございます。しかしその地図は、おそらく誰も宝を手にする事は出来ない地図でありまして…」


「それが良いのだ。その地図をくれ」


「しかし…」


「頼む、地図を譲ってくれ。金ならいくらでも出す」


懇願する男に、とうとう折れた店員は一枚の地図を取り出すと言った。


「…これがその地図です。ただし、何があっても当店は一切の責任を負いかねますが、よろしいですね?」


「勿論だとも、全ては自己責任だ。約束するよ」


こうして、男は宝の地図を手に入れた。相当な大金を払いはしたが、それだけの冒険が待ち受けている事を考えれば安いと言える。


「必ずや宝を手に入れてみせる」


男は確固たる決意を胸に、冒険へと旅立っていった。



男が帰った後、地図屋の店員は一人呟いた。


「銀行の場所を印しただけのただの地図を、あんな大金を出して買っていくとは、全く良い客がいたものだ」

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