表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスペラードボム  作者: ゼド
第1章 爆弾を拾った日
13/19

 15分ほどが経過しただろうか、私と真希は終始無言で一点を見つめたままである。

 どのような挙動も見逃すまいと、一瞬たりともデスペラードボムから目を離さなかった。

 しかし、こちらの行動を裏切るように、ボムはぴくりとも動きはしない。50mほどの距離をあけているため、ぴくり程度の動きは分からないかもしれないが、少なくとも、視認できる範囲の動きは確認できていない。

 さすがにじっと一点を見つめるのは疲れてきた。頭も痛いし、そろそろ引き上げたい気持ちである。

 逆に真希は仁王立ちのまま、こちらもぴくりとも動かずだ。

 すさまじい集中力、彼女はそれほどまでにデスペラードボムに興味があるのか。

 と、感心したのはつかの間、真希の顔を窺い見てその感心は氷解した。


「寝てるでしょ」


 一言呟くと、真希の肩がびくんっと跳ねた。


「そ、そんなわけないじゃん、目ぇ瞑ってただけよ」

「動きを見張ってるのに目ぇ瞑ってたら意味ないじゃない…」


 私はため息をひとつ。

 真希は誤魔化すように笑い、頭をかいた。


「いやぁ~私、昔っから観察とかしてたらすぐ眠たくなるのよね。忘れてたわ」

「私も忘れてた、授業中起きてたためし無いもんね」


 だとしても立ったまま寝るとは、呆れてものも言えない。


「そんなことより、アレ、動かないわね」


 話を本題に切り替える真希。

 寝てたのに動いてないってどうして分かるのか。

 まぁ状況からして察しはつくだろうけども。


「本当に動くのかな…適当に誤魔化されてるだけなんじゃ…」


 普通に考えてあの物体が『動く』とは考えにくい。

 根拠や証拠があるわけじゃないため、クラスター博士への疑念が一層に増す。


「おーい、こっちこっちー、おいでー!」


 真希がデスペラードボムに向けて手招きをして呼びかけ始めた。


「ちょっと何よいきなり…」

「呼んだら来るかもしれないじゃん」


 放っておいても動かないなら呼んでみようという作戦らしい。

 正直、そんなことをしてあれが動くとは思えない。

 私はうんざりとしながらも、デスペラードボムの様子を窺う。

 暗い中にぽっつりと見える丸いそのフォルムは、先ほどと同様、ぴくりとも動かず。

 

「もう諦めて帰ろうよ…下手したら私たち騙されてるだけかもしれない…」


 冷静に考えて、あれがクラスター博士の言うとおりの代物である気がしなくなってきた。

 爆発現場を見た後だったから、まさかと信用してしまったが、そもそもアレは本当に爆弾なのか。

 信じていた気持ちは、今や疑いが大半を占めるようになった。

 真希は腕を組んで「う~ん」と唸る。そして、


「美鈴も呼びかけてみ?」


 そんなことを言い出した。


「えぇ私も?なんでよぉ」

「持ち主の特権ってやつかもしれないじゃない」


 真希は博士の言葉を信じているようで、なんとかしてデスペラードボムを動かしたいようだ。

 持ち主、という言葉に私はがっくりと肩を落とす。なんという1日だ今日は。


「それやったら帰るからね…」


 それで真希の気が晴れるなら、と、私も呼びかけてみることにした。

 念のため、周りに人がいないのを確認してから、口元に両手で輪を作った。


「おいでぇ…」


 自分で言うのもなんだが、蚊のなくような声が出た。


「何よその地縛霊のすすり泣きみたいな声は」

「ひどい言われようだね…」


 いくら真希しかいないといっても、静かな場所で大きい声を出すのは性格上、ちょっと恥ずかしいのだ。

 でも、さすがに小さすぎたとは自覚していた。


「こっちおいでー!おーい!」


 今度は思い切って声を出した。

 そして、ふぅとひと息。


「これでいい?」


 訊ねると、真希は「おーけー」と頷いた。


「こんなので動くとは思えないけど…」


 そもそも、持ち主のもとに戻るように作られているとは言われたが、呼んだら来るとは言われていない。

 博士を信じるかどうかの前に、今私たちは的外れなことをしているのだ。

 10秒ほど待って真希を肩を叩く。


「ほら、やっぱり動かないでしょ?」


 私は真希に帰るよう促す。

 真希はデスペラードボムの方を見たまま視線を動かさない。

 この期に及んでまだ諦めがつかないというのか。

 と、そのとき私は、真希の口が小さく開かれ、細かく震えているのを見た。

 目も大きく開かれ、それはまるで驚愕の光景を見ているかのようであった。


「どうした…の?」


 私は真希の視線の先、デスペラードボムの方に目をやった。

 そしてそこで、私も真希と同じように目を見開いた。

 言葉が出ないとはまさにこのことか。

 デスペラードボムが、弾むように跳ね、こちらに向かってきていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ