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デスペラードボム  作者: ゼド
第1章 爆弾を拾った日
1/19

 この日の朝、私、三条美鈴(sanzyo- misuzu)はとんでもないものを見つけた。

 場所はいつも登校する際に通っている路地。

 そこにあるのが当然であるかのように、それは私の目の前に鎮座していた。


(うそぉ…)


 通学鞄を胸に抱き、私はごくりと唾を飲み込んだ。

 形は丸。大きさはサッカーボールくらい。色は黒でテカテカ。てっぺんに出っ張りがあって、そこからひょろりと導火線と思われるヒモが生えている。

 要するに、それは漫画とかイラストでよく見かける爆弾の形をしていた。

 これを見た者のほとんどは即座に「あ、爆弾だ」と思うことだろう。

 

(そんなわけないよね…)


 だが、爆弾の形をしているからといって、それが本物の爆弾であるとはかぎらない。

 爆弾の形をした何か、の可能性もじゅうぶんある。否、普通に考えてその可能性の方が限りなく高い。

 それ以前に、こんな形をした爆弾がこの世に存在するのか。

 誰もがその考えに辿りつくことだろう。

 私も然りで、それが爆弾であると認めなかった。

 

(本物の爆弾がこんな所に転がってたらそれこそ大問題よ)

 

 ならこの物体は何か、当然私は考える。

 見なかったことにして学校へ向かえばいいものを、私は爆弾(仮)に近寄っていく。

 傍でしゃがみ込み、まじまじと見つめた。

 

(よくできてるなぁこれ)


 てっぺんに導火線(仮)さえ生えていなかったら鉄球かと思ってしまうほどの美しい丸。そして艶。

 触感はきっと固くてツルツルだと、見た目から想像ができた。

 果たして実際はどうか、私は恐る恐る爆弾(仮)に手を伸ばした。

 

 むにゅ。


 人差し指が爆弾(仮)にめり込んだ。

  

「柔らかっ!」


 想定外の感触に思わず声をあげてしまう私。

 まるでモチモチ肌の頬を指先で突っついたような感触だった。

 

「うわぁ~何これ何これ、すっごい気持ちいい」


 くせになるような感触に、私は感極まった声をあげる。

 何度も何度もツンツンし、調子に乗って揉んでみたりもした。

 とにかく柔らかい。寝るときに抱いていたいようなそんな気持ちよさがあった。

 

(でも、結局いったい何なのこれ?)


 我に返り、当初の疑問に戻る。

 この柔らかさ、爆弾の線は薄そうである。

 爆弾の形をしたぬいぐるみの線が高いが、どこを見ても縫い目とかそういったものが見当たらない。

 完成度の高いぬいぐるみと言えば聞こえはいいが、果たしてどうか。

 導火線のヒモの被覆といい、爆弾としての見た目は完璧である。

 私は眉間に皺を寄せ、考えた。

 そのとき、後方から何者かが歩いてくるのに私は気付いた。

 私と同じ高校に通う学生2人組のようだった。

 今は学生の通学時間帯だし、ここを誰かが行き来するのは不思議なことではない。

 というより、今まで人がいなかったのがたまたまなだけだ。

 別に見られてはいけないことをしているわけではないのに、私は何故か焦った。

 通学鞄を肩に提げ直し、爆弾(仮)を抱え上げる。

 

「重っ!」


 予想を超える重量に私の腰が悲鳴をあげた。

 めちゃめちゃ重いわけではないが、恐らく5㎏以上はありそうだ。

 スーパーで売ってる5㎏の米より少し重く感じる。

 あって数100gだろうと思っていただけに、余計に重く感じる。

 ぎっくり腰というのはこういうときになるのだろう。

 

「よいっっしょっ」


 私はお腹で爆弾(仮)を抱えるようにして持ち、トコトコと路地を駆け出す。

 どうして持って行こうと思ったのか、私自身もよく分かっていなかった。



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