運命の日~出発~
──そして何だかんだで一時間後。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「や、やっと決まった……」
度重なる議論の末、俺達は真に求めるチートスキル数個をようやく決定。その場に項垂れた。
しかしなんだ。自分達のオタク思考がここまで自分達の首を絞めるとは思わなかった。これからはある程度控えめにしようかとも思ったが、考えた瞬間に美咲の「オタク心を忘れないで」と言わんばかりの顔を見せられ180度思考変換。これからもオタクの所業は続けていこうと改めて誓う。
「やっとおわった? もう一時間もひまだったからゲームで暇潰ししちゃったよ」
「いや、そこにあるの明らかに幼女がやっていいような代物では無いよな?」
俺がそう突っ込みたくなるのも無理はなく、神様の背後にあるのは、どこから電力供給されているのか定かではないデスクトップにソファー、机。そしてその上に山積みされたエロゲーの数々。てかなんで神様が色欲に走ってんだ、いつか堕ちるぞ。
「いやぁ、君たちの世界のえろげぇってほんとに面白くってねー。ついついネットでオカズとして買い込んじゃうんだよね」
「おい、その外見でオカズ言うな。アグネスが黙っていないぞ」
「えぇーっ? だって私これでも"137おくさい"なんだけどー?」
案外神様ってお歳を召してるようで。ってか宇宙創世記から存在してるって、凄いね神様。
「で、それはそうとスキル決まったんでしょ?」
「あ、そうだったそうだった」
危ない、エロゲーの流れですっかり忘れるところだった。今後とも気を付けなければ。『流れに流されるのは禁物』……っと。
「じゃあ、欲しいスキルを思い浮かべて。そしたら、神様の力でそれを二人にそれぞれ付加させるから」
神様にそう言われ、俺達二人は目を閉じて自分自身のスキルを思い浮かべる。
この一時間で考えに考え抜いた、究極の6つのスキル。一部を除いて夫婦で全く異なるそれは、"この異世界でオタク心を忘れんがため"、そして"夫婦で助け合っていく為"。
そのためのスキル。
そして数分がたった頃、神様が「もういいよ」と告げたので、俺達は目を開く。
と、何か身体に力が満ちているような気がするようなしないような。
とにかく、先程までと俺達は"何かが"変わっていた。
「じゃあ、君達のスマホにインストールしといたアプリでパラメータ画面を見てみて。そこでスキル確認が出来るから」
「えっと……? あ、これか」
「『ラグナノヴァ プロフィール』?」
今の今までポケットに入っていることに気が付かなかったスマホを取り出してダウンロードカードを見てみると、そんなアプリがインストールされていた。ちょっとネーミングセンス普通すぎやしませんかね?
そんな事を思いながらも、早速そのアプリをタップ──起動する。
「あ、意外にしっかりしてんじゃんこれ」
画面に表示されたのは、ネトゲの主人公プロフィール、もしくはパラメータ画面のそれっぽかった。
画面左半分にデフォルメされた夫婦それぞれ姿が表示され、右半分にはパラメータ画面を始めとするページへのリンクが表示されている。
俺達はその中の「パラメータ画面」の文字をタップする。
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カオル・クラキ
MP 無限
固有スキル
☆神の究極加護
・身体能力、MP、動体視力、etc……を限界まで引き上げる。
サブ固有スキル
☆絶対なる夫婦の愛
・ミサキ・クラキとの連携を限界まで引き上げる。
・500km圏内ならば互いの場所が分かり、テレパシーで意志疎通が出来る。
☆武器創造/錬成
・無機物をベースにして武器を作り上げたり、無機物自体を武器とすることが出来る。
☆潜在解放
・使う武器の能力を限界まで引き出すことが可能。
☆性別転換
・スキルやパラメータをそのままに、異性になることが出来る。転換後の容姿は自在に変更可能。
取得スキル
☆剣術Lv.MAX
・このスキルが高ければ高いほど剣術の腕が上がる。
☆体術Lv.MAX
・このスキルが(ry対人戦闘能力が上がる。
☆魔法適性Lv.MAX
・(ry使える魔法の効果や威力が上がり、使える魔法も増える。
☆神速Lv.MAX
・急加速、急旋回、急停止を身体の負担無しで行える。
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ミサキ・クラキ
MP 無限
固有スキル
☆神の究極加護
・身体能力(ry
サブ固有スキル
☆絶対なる夫婦の愛
・(ry
☆種族転換
・スキルやパラメータ、性別をそのままに、ラグナノヴァの22種族に自由に変身できる。体質は変身後の物に準拠する。
☆天使の微笑み
・相手に対し微笑むと、(自分の)任意で相手を軽く洗脳することが出来る。
☆無限の銃弾
・銃系の武器を使用するときに、カートリッジ差し換え無しであらゆる種類の銃弾を無限に配給出来る。
☆守られし貞操
・カオル・クラキ以外の人間に貞操を脅かされそうになった時、自動で貞操帯が装着される。
取得スキル
☆狙撃Lv.MAX
・この(ry、銃による戦闘や狙撃能力がアップする。
☆体術Lv.MAX
・(ry
☆魔法適性Lv.MAX
・(ry
☆神速Lv.MAX
・(ry
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──そこに表示されたスキルは、寸分の狂いなく俺達がそれぞれ考え抜いた内容のスキル。
そう、サブ固有スキルのトップに表示されている「絶対なる夫婦の愛」。これこそ、俺達夫婦が異世界で過ごしていくために必要不可欠なスキル。どこにいても互いを認識でき、互いに意志疎通が可能。そして戦いでは限界を越えた夫婦の共同作業。これ以上のスキルは今のところ思い付かない。
あとのスキルは、互いの好みを選りすぐった末にたどり着いた物。半分は戦いで、もう半分は普段の生活に生かせる為に。
個人的にTSスキルは持ちたかったんだよなっ! TSイズラヴ!
「ふふっ、中々面白いスキルを身に付けたね?」
俺達二人のスマホを覗き込み、にっこりと微笑む神様。てか身に付けさせたのあんたでしょうが。
「ありがとな神様。あ、後々スキル追加したくなったら申請していいか?」
「別に構わないよ? 一応電話帳に私の番号入れてるから、申請するときは連絡してね」
そう言われて電話帳を確認すると、カ行のところに「神様」が追加されていた。フレンドリーですね神様。仕事の合間とかに掛けてもいいですか?
「じゃあ、最後に武器のプレゼント!」
神様がそう叫んで左手を振り上げると、俺達それぞれの手の中に何かが現れた。
──それは、一降りの刀と、二丁のガンソード。
「その刀は『刻楼』。ラグナノヴァに存在する最強の刀20工の内の一本。強さは私が保証するよ?」
手にとって鞘から抜くと、黒く光る刀身が姿を現す。柄は黒い桜を模した装飾が施されており、並みならぬ凄味を感じさせる。
そして何よりも──刀が俺に応えてくれる、そんな気がした。
「そっちのガンソードは、『RVZ-285 エグザス』。連射と破壊力を両立し、尚且つ近接格闘にも対応した究極のガンソード。それに軽いし、取り回しもいいよ!」
美咲が握り締めるガンソードは、銃身が短めのライフルに細身のブロードソードを取り付けたような形状。こちらも、ガンソードが美咲を選んでいるような気がした。
「じゃあ、私はこれで帰るから。後は二人は頑張ってね~♪」
「あ、ちょっと待って神様!」
くるりと振り向いて歩き出そうとした神様を、美咲が呼び止める。
「──ありがとう。私達夫婦に、こんな楽しいイベントをプレゼントしてくれて」
「えへへ……。私は他の神様に同調して二人を呼んだだけだし……。でも、感謝してくれてありがとう。お礼に追加でプレゼントッ」
神様が手を降ると、突然俺達が纏っているローブが輝き始めた。
が、しかし。見た感じは何も変わっていないように見える。
「そのローブ、魔法とかでの攻撃を数発は防いでくれるようにしてあげたよ。ついでに君達が持っていれば数日で再生するようになってるから」
「おっ、サンキューな神様。また近いうちに世話になるかも知れないが、そん時は宜しく頼むわ」
「へへっ。では、神様はこれにて失礼するのだ!」
最後にそれだけ告げると、刹那、神様の姿は消え去っていた。
「──んじゃ早速、この世界を謳歌するか。な、美咲?」
「もちろん! 私は薫にどこまでも着いていく。だって──"奥さん"だもの」
そう言葉を交わして、俺達は互いの手をしっかりと繋ぐ。
そして、二人でそのまま歩き出す。
──この先、何が起こるか想像すら出来ない未来に向かって。
次回から思いっきりネタやコメディー要素ぶちこんでいきたいと思いますっ!!
作者のギャグセンスは先人の方々には及びませんが、頑張って書いていきます!