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新婚夫婦ですが、チート冒険者始めました。  作者: ノヴァ
チートな冒険者夫婦の誕生~学生生活も謳歌します!~
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運命の日~異世界へ~


▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

 △ △ △ △ △ △



「……て…………る………きて…………か……る……起きて、薫っ!!」

「う……んぁ……」

 目を覚ますと、美咲が目に涙を浮かべながら俺を見下ろしていた。

 身体が所々痛いが、精々軽い打撲程度。動けなくはない。四肢に力を込めて確認すると、取り合えず五体満足のようだった。

 手で辺りを探ると、地面は草で覆われている。どうやらどこかの森の中らしい。空は生い茂る樹の陰で6割方見えないが、本日は晴天なり。

 そのくらい周辺の情報を獲得したところで、今度はお互いの確認を──するまでもなかった。

「で、なんだこの服?」

「知らないよ。私も目が覚めたらこんな格好だったし」

 今の俺達が身に纏っているのは、先程まで着ていた制服の面影が一切ないファンタジー染みた冒険者装備。と言っても、あくまでそれっぽいだけで、服はファンタジー風のTシャツにジーンズ、そしてその上からローブを羽織っている感じだ。美咲の場合はジーンズがスカートになって黒ニーハイを着けているだけで他は俺と変わらない。

 靴は登山靴と運動靴の中間のデザインで皮製、紐で結ぶようになっている。

 そしてお互い武器は無し。

「で、これからどうしろってんだよ。神様が出てきてチュートリアルとか説明とかしてくれんのか?」



「カンがいいね! そのとおりだよっ!」



 突如背後から声が響き、危険を察知して美咲を庇うように身構える。

 そして俺達は気付いた。

 ──誰かがいる。

 目を凝らすと、森の暗がりから誰かがこちらに歩いてくる。

 二人して息を飲みその影の様子を窺うと、やがてその全貌が明らかになった。



「「幼女?」」



 ──そう、幼女だった。

 身長はどうあがいても小学一年生程度しか無く、着ている服も見た目相応の幼さを感じさせる。

 思えばさっきの声もどこか舌足らずに聞き取れた。幼女ならその理由も頷ける。

 しかし、ここは異世界。幼女とはいえ、侮ることは出来ない。下手に手を出したら──殺られる(ロリコン折檻の意味を含め)。

「あ、やっぱりようじょに見えちゃうかな?」

「お前が幼女じゃ無かったらアニメに出てくる小学校低学年の女の子は皆幼女じゃ無くなるぞ」

 ところが、案外幼女は気軽に話し掛けてきた。思わず突っ込みを入れてしまったが、特に何をしてくる様子は無い。

「えへへっ、じゃあ私の正体教えて上げる!」

「えっ……正体?」

 美咲が聞き返すと、幼女は笑顔でこくり、と頷く。



「私、ぞくにいう『かみさま』なんだ!」



「「はいっ?」」

 幼女のそんなカミングアウトに、俺達の思考は一瞬停止する。

 心の端で予想はしていたが、まさか……こんな幼女が、神様?

 ちょっと待て。俺達の思う神様が、こんなに幼女な訳がない。神様ってのは、髭生やした老人で、杖持ってて、基本的に穏やかな性格で、たまにノリがよくて……とにかくそんなイメージくらいしか湧いてこない。幼女なぞ論外だ。

 しかし現に目の前の幼女はそう断言している訳で。訳が分からないよ。

「あの……本当に神様?」

「ほんとうだよ? ついでにいうと、あなた達にお手紙おくったのもわたし!」

「うぅむ……イマイチ信じられんのだが……」

「ええーっ? なら、かみさまのちから、少しだけ見せてあげる!」

 そう言うと、幼女はその小さな右腕を振り上げた。

 どすん。

 それと同時に、俺達の目の前に山ほどの金塊が姿を現す。

「え、こんなにいっぱい……どこから……?」

「だからぁ、かみさまの力で無から有をしょうかんしたんだよ!」

「ってことは本当に神様なんだ……」

「えっへん! かみさまはすごいのだ!」

 そう言って絶壁の胸を張る、幼女改め神様。あとドヤ顔は止めてくれませんかね、可愛いロリっ子が台無しですよ?

「じゃあ、私が二人をよんだ理由とか、このせかいについてとか色々説明するからちゃんときいててね!」

 そんなわけで神様(幼女)の講義が始まったのだが。

 当然の如く情報量が膨大だったので関係ない部分を省いて纏めると──


 ・神様は自分一人ではなく多数が居て、その中で最近(といってもかれこれ約50年前)、俺達の世界の人間をこの異世界──《ラグナノヴァ》に移住させてみるというプロジェクトが発足した。

 ・でもやたらめったら人間を連れてくるとこの世界の種族比のバランスが取れなくなったり色々面倒な事になるので、「最高に幸せな新婚夫婦」、「最高に世間の底辺の生活をしている人」、「世間的に見放され絶望している人」の3パターンの人間をそれぞれの承諾の上で連れてくる事にした。

 ・でも元の世界に未練がある人もいるだろうと言うことで、俺達の世界とラグナノヴァを行き来出来るデバイスも贈ることにした。

 ・ちなみに試験的ではあるが、普通の人間もごく小数ながら連れてきている。


 ・ラグナノヴァはこの世界の名前で、人間を始めとする22種族が存在する。

 ・通貨単位は円で、俺達の元の世界と貨幣価値は同じ。よって、こちらで稼げば元の世界で働かなくても生活できる(通貨や紙幣の絵は元の世界と当然違うが、世界間の往き来の際に行き先の物に変化するように補正が掛かる)。

 ・世界観は元の世界でのファンタジー要素を限り無く盛り込んでいる。

 ・生態系はモンスターがいる以外は元の世界と同じ。植物も一部ラグナノヴァ個有種がいる以外は生態系に類する。

 ・唯一の通信機器としてスマホが存在する(どうやって作っているのかは突っ込んではいけないとのこと)。


 ──という感じになった。

「ってかスマホが流通しているだけでファンタジー感ぶち壊しなんだが……」

「そういわれてもねー。前に連れてきた人間がこの世界でスマホを大量生産することに成功しちゃって……。そのせいで連れてくる人間をさっきの条件で選定することになったんだけどね」

 おい、その人間一体何者だ。こんなICチップも電子基盤も存在しない世界で、どうやってスマホを生産できたというのか。

 俺達の世界には、未だ知られぬ化け物がいるというのか……っ!!

 いや、もしかしたらこっちで永住し始めたから世間に顔が出ないだけなのか。

 人間ってすごいね!

「で、さいごにもうひとつ。すごく重要なことなんだけど──」

「ん、なんだ? 俺達にテンプレの如くチート能力を授けようってか?」

「いやいや、そんなこと無いでしょ」

「デスヨネー」

「「ははははははははははははははは」」



「あげるよ?」



「「──────はい?」」

「だから、チート能力あげるよ?」

 突然訪れる静寂。

 それは数秒続いたのか。はたまた数時間続いたのか。それは俺達には理解が出来なかった。

 しかし、感じるぞ。

 この胸の中で、何かが沸々と燃えたぎる。身体中が熱を帯びるように熱くなり、心臓の鼓動も速くなる。

 それは美咲も同じようで、こちらの手をぎゅっ、と握り締めるその手は汗にまみれていた。

 そうだ、間違いない。この感覚──



 ──オタク魂が叫んでいるとっ!!



「え、えっと神様? チート能力っていうと、どのくらいまでなら許されます?」

「うーんとね、この世界のパワーバランス崩さないくらい。『スキル』って形になるけど、その保有量はいくらでもいいよ?」

 つまり、チートし放題なスキルをどれだけ全部乗せしても構わないが、天地創造なんてスキルは積めないということか。

「あと、魔力──MPは無制限にせっていしておくから。これでもじゅうぶんなチートでしょ?」

「あ、確かにテンプレなチートだね」

「じゃあ気長に二人で相談しながらスキルは決めてね」

 と、そこまで言って神様はそこら辺を飛んでいた蝶を追いかけ始めた。何だかんだ言ってやはり中身も幼女なのか、と実感する。

「じゃあ、どんなスキルにしよっか?」

 早速それぞれの保有スキルを決めるため向かい合わせに座り込み、第一回スキル決め会議を開く。

「どんなって言われてもなー。俺達のオタク魂だと、欲しいスキル山のようにあるだろ」

「じゃあそういうの全部乗せしようよっ! それなら簡単でしょ?」

「いや、そしたら自分がどんなスキル持ってたか思い出せなくなるぞ」

 そう、俺達夫婦はどうあがいても人間。その人間の脳で無数に存在するオタク発祥スキルを記憶しろと言われれば流石に無理がある。

 確か神様の話ではスマホでスキル確認が出来るらしいが、無数にあると確認するだけでも一苦労。そうなると宝の持ち腐れだ。

「なら『超記憶』とかそんなスキルつけてもらったら? それなら──」

「じゃあ美咲に聞くが、お前はそのスキルで自分の保有スキルの詳細を知った上でこれから起こる出来事を全て脳内で処理できるか?」

「──無理かも」

 美咲の言った「超記憶」という選択肢は間違ってはいない。だが、それだと日常の些細な事まで記憶してしまうことになり、脳内で情報処理が追い付かずに倒れる、なんてことも有り得る。

 となると、限界まで絞れるだけ絞って選択肢を5~6個程度にするしかない。

 その5~6個を決めるため、俺達は頭をしばらく抱えるのであった……。



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