運命の日~目覚め~
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──なんだろう。身体がやけに重い。そして動かない。
これは俗に言う金縛りと言うやつか? ということは近くに幽霊でもいるのか。それとも単に俺の脳だけ覚醒して身体が寝ているだけか?
いや、違う。金縛りだったら何故指が動く?
指が動くということは脳だけでなく身体もちゃんと覚醒している証拠。故にこれは金縛り等では断じてない。
──というか目を開ければ身体が動かない原因が一発で分かるじゃん。
なんで気付かなかったんだ俺(泣)
と言うわけでオープン・ザ・目蓋。
──結果。
「えへへー。やっと起きたね、薫」
俺の"嫁"が満面の笑顔でだいしゅきホールドをかましていた。
まぁ大体予想はしてたけど。
「おはよ、美咲」
「おはよー。じゃあ早速だけど、ご飯にする? シャワーにする? それとも──わ・た・し?」
「もちろん──」
その質問と同時にホールドを緩めてくれた美咲に感謝し、自由になった右腕でその顔を引き寄せ唇を交わす。
「んぅ…………んっ……」
ついでに互いの舌を絡ませる。
「んむぅ……ん…………ぷぁ……んんっ……!」
最後に唾液の交換。
「ぁむ……んっ……むぅ…………んくっ……」
その後数分間の愛の抱擁の後、ようやく二人の唇が離れた。
「──美咲に決まってるだろ」
「もう、返事が遅いよ」
だって二人の愛の時間が楽しかったんだもん。
だが、どこかの大尉のように行き過ぎた愛は憎しみとなって、それすら超越して宿命になりかねないから注意しなければならない。それが万国共通なのかはさておき。
しかし、朝日の中の嫁はいつ見てもふつくしい。
美咲が許してくれるなら、そのまま愛を込めて抱き締めてそのままGo to bedしたい。多分あちらも同じことを思ってるに違いない。なんたって"夫婦"なのだから。
──そう、夫婦。
俺達二人は、これから先の生涯を共に歩む夫婦なのだ。どんな事があっても、二人で乗り越えて行くのだ。互いの手の結婚指輪がその印。絶対に絶対なのだ。
例え乗り越えて行くものが、"学生生活"としても。
「あ、早く着替えて準備して! 急がないと遅刻しちゃうよ!」
「え、もうそんな時間なのか?」
壁の時計を見ると、時刻は7時5分。着替えて準備して朝飯食ってたらギリギリのラインだ。
「美咲、今日の朝飯は?」
「もう、そんな時間ないからこれ食べて!」
「むぐっ!?」
美咲は俺の服をひん剥きながら、口にランチパックを強引に押し込んでくる。ちなみに味はピーナッツバター。ちゃんと旦那の好物をチョイスする辺り、いい嫁さんだ。今日の夜にでも抱き締めてあげよう。主にベッドで。
「えーっと、今日は現代文に数学に地学に……」
口に放り込まれたランチパックをもそもそと咀嚼しながら、本日の時間割りを確認。対応する教材を鞄に詰めていく。
「あ、あとこれ弁当! 忘れないでよね!」
「分かってるって。お前の弁当は幸せいっぱい夢いっぱいの最高の弁当だ。忘れるわけないだろ?」
「えへへ……。また誉められちゃった……」
自身の弁当を賞賛されて頬を染める美咲の頭を撫でてやると、手渡された弁当を副教材入りのエナメルバッグに詰め込む。今日のおかずは何だろうか。
そして着替えの為に自分の部屋に戻った美咲と別れ、俺は下着姿で荷物を抱えて階段を駆け降りる。昨日は雨が降っていて、制服を含めた洗濯物は全て一階に干しているのだ。
「えっと……あったあった」
干された幾多の洗濯物と美咲の下着を掻き分けて、ようやく制服を掴みとる。脇やポケットの中を触って乾いていることを確認すると、急いでそれを着込んでハンカチをポケットに突っ込む。
「ごめん、置いてかれたかと思ったよ」
と、軽く息を切らして美咲が降りてくる。ちなみに下から眺めてたのでパンツが丸見えだった。ちなみに白と水色の縞パン。縞パンっていいよね!
「とんでもない、待ってたんだよ」
「へへ……。やっぱ夫婦なんだから一緒に登校しないとね!」
そう言って美咲が俺の手を握ってくる。もちろん俺もしっかりと握り返す。
しっかりと組んだ手を離さないように、急いで玄関に直行。そのまま家を出て鍵を閉める。
「「いってきまーす!!」」