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初連載です。さくさくいけるよう、頑張ります。

「姫様、お城が見えてまいりましたよ」

 乳母の言葉に、馬車の中で物思いに耽っていた私はゆっくりと顔を上げた。

 石畳を走る馬車の窓から見えるのは、歳月を経て更にその重みを増したのであろう、質実剛健な石造りの王城。要塞、という印象さえある。


 「ここで私の運命のお相手が決まるのね………」

 私は大きな不安とほんのちょっぴりの期待を抱きながら、そう呟いた。


 (私は、旦那様を愛することが出来るかしら?)



           ***



 ここはラインバルド国。大陸の北に位置する歴史ある大国で、その国土の広大さと強大な軍事力で知られている。


 私の名前は、ロザヴィー。大陸の西南にある小国アルハイムの第3王女。今日、この国に嫁いできた。

 

 ううん、嫁いできた、は、まだ早い。正確には、婚約者に会いに来た。婚約者『たち』に。

 というより、婚約者を決めに来た、と言った方が正解?


 ラインバルド国から我がアルハイムに婚姻の申し入れがあったのは、2年前。私が13歳の時だった。大陸一の大国からの正式な申し込みを、うちのような弱小国が断れるはずもない。当時、1番上のお姉様は既に結婚していて、2番目のお姉様にも幼少時からの婚約者がいた為、私に白羽の矢が当たったのだ。

 

 ラインバルドの王子は二人いた。私より5つ上で、同年生まれの異腹の王子達。そのうちのどちらかと婚姻を、というある意味大雑把な約束が交わされた。

 そして、来年私が16歳になると同時に婚姻が執り行われることになり、その打ち合わせと初顔合わせを兼ねて、私がラインバルド国を訪問する運びとなったのだ。


 もちろん、二人のうちどちらの王子と結婚するか、という最大の問題も決めないといけないしね。

 

 まあ決めるのは私じゃない。政略結婚、王族の婚姻なんだし、大事なのは国と国との結びつきだよね。私だってちゃんと分かってる。相手が決まったら、私はそれに従うだけ。

 分かってるんだけど………、


 どうせ結婚して共に暮らすのなら、やっぱり愛し愛されて幸せになりたい。

 お姉様達がそれぞれ旦那様や婚約者と仲睦まじくされているのを見てきたから、なおさらそう思う。


 政略結婚でも愛し合う夫婦になれるはず!

 そのためには、今回の訪問でまずお互いに良く知り合い、来年の結婚式までに仲良くなりたい!

 嫁いで来たらまたそこからゆっくり愛を育んでいこう。

 うん、それがいい。

 前向きなのが私の取り柄だって、お母様も言ってらしたものね。


 私は決意を新たにして、ゴトゴトと揺れる馬車の中に座り、ラインバルドの王城に入っていった。



           ***



 お城の広間では、王族が勢揃いして私達一行を出迎えてくれた。

 獅子のような威厳を持つパイオン王、柔和な美貌の年若いフェセク王妃、そして二人の王子と年少の王女がお一人。王女はフェセク王妃に瓜二つで、なんとも愛らしい。

 対する私達は、私、乳母、私付きの侍女数人、護衛として共に来た騎士団長。残りの騎士は次の間に控えてくれている。

 

 「ロザヴィー姫、遠路はるばるよく来てくれた。貴国と縁が結べること、嬉しく思うぞ」

 パイオン王は灰褐色の髪と髭を持つ偉丈夫だった。

 さすがラインバルド国王ともなると威厳が違う。相対すると緊張感で押し潰されそうだった。


 私は気力を振り絞り、アルハイム一行を代表して、中央で礼をした。

 意識的に微笑みを浮かべる。どうか自然に笑えていますように!

 「アルハイムのロザヴィーでございます。このたびはお招き有難うございます。アルハイムとラインバルドの変わらぬ友情の証として参りました」

 

 「ほう………これはこれは。噂に違わぬ美姫だな。幸運な我が息子達を紹介しよう」

 王子が二人、立ち上がった。王の座る椅子の左右に並ぶ。


 「これが第一王子のヴァイス」

 王の右に立つのは、白金の髪と、琥珀の瞳を持つ、白皙の美青年。甘い顔立ち、夢みるような眼差し、優しげな口元。でも女性っぽさは微塵も無い。さらさらの髪は軽く後ろに流し、肩に掛かる位。鍛えられたしなやかな肉体は、若い牡鹿のよう。

 「そしてこれが第二王子のアスワドだ」

 王の左に立つのは、漆黒の髪と黒曜石の瞳を持ち、彫刻のように整った顔立ちではあるが、どこか陰のある美青年。短髪だが前髪が少し目に掛かっている。贅肉というものを根こそぎ剥ぎ取ったような、無駄のない肉体。まるで抜身の剣のようだ。



 二人の王子を紹介し終えたパイオン王は、おもむろに立ち上がり、玉座を降りると私の方へ歩み寄ってきた。

 「ロザヴィー姫、そなたをこの城に迎えるにあたって、私は考えた。どちらの王子をそなたと娶わせようか、とな。いや、むしろ2年前からずっと考え続けてきたのだが、結論が出なかった。」

 

 あれ……なんだろう。王の、この瞳の色は。面白がっているような、悪戯を企む子供のような………。


 「そこでだ。今回姫には2週間滞在していただく。その間に、姫本人に伴侶を選んでもらいたい」


 え……


 え………


 ええ―――――!?


 私が二人の王子から結婚相手を選ぶの!?


 




 

 

 




 

 

 


 

 

 


 


 


 

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