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〜第3章・これが噂の〜

 とりあえず用事が済んだ(?)のでクロに連絡を取る。つもりだったが図書室にいるのはわかっているのでそのまま図書室に足を運ぶ。

 図書室は1階の突き当たりにある。公立の割には蔵書数が多いので趣味を聞かれたら読書と答える程度に本が好きな俺としては嬉しい。

 意外にもクロがいたのは純文学のコーナーだった。俺が肩を叩くと慌てて本を棚に戻した。

「は、早かったんだな」

 そう言ったクロはなにやら見られてはいけないものを見られたような、そう例えるならオナニーしているとこに親が入ってきたときのような顔をしていた。

「まぁな。とりあえず外出るか」

 俺も先ほどの加奈とのやり取りを思い出しなんとも言いがたい気分になった。あれは告られたってことなんだろうか…



 同じ中学の俺とクロはもちろん家の方角も同じになる。二人ともチャリ通だ。

 チャリに乗りながらでは話がしづらいのでとりあえず途中にあるマックに入る。

「で、話ってなにさ?」

 案の定クロはなかなか話し出さないのでこちらから話をふる。なんだかこういう状況に慣れてきた自分がいる。

「あのさ…C組のナンチャラって、どう思う?」

「はい?」動揺で声が裏返ってしまった。

「だから、C組のナンチャラ加奈をどう思うかって聞いてんだよ」

 クロはなにやら赤面してうつむいてしまった。おいおい、そのナンチャラ加奈とまったく同じことしてるぞ?

「あ〜、それはなんだ…女として、とかってことか?」

 いちおう確認してみる。

「もちろん」

 …ここまできてクロの言いたいことがわからないような朴念仁ではない。が、つい先ほどそいつに告られた身としてはコメントしにくいことこの上ない。

「う〜ん…けっこうかわいいとおもうよ。サバサバしてて話しやすいし」

「だよなっ!!」…目がキラキラしてるよぉ

 これは素直に告られた事実を話したほうがよいのだろうか。このままでは「お前とナンチャラって部活隣だしけっこう仲いいよな?頼む!紹介してくれっっ!!」とかいわれてしま

「お前とナンチャラって部活隣だしけっこう仲いいよな?頼む!紹介してくれっっ!!」…った

 さてどうしたものだろうか。正直なとこ加奈からの告白を受け入れようと思っていたので困惑の極みだ。助けて〜ドラ○も〜ん

 などと軽くトリップしていたらクロはそれを焦らしだと思ったようだ。

「報酬なら払う。紹介してくれたら昼飯一週間分、成功したあかつきには一ヶ月分奢ってやるから!」

 かなり魅力的な提案だ…。しかし友を裏切ることはできない。

「あのな、クロ。言っておかなきゃならんことがあるんだ」

「なんだ、不服か?」

「いや違うんだ。言いにくいんだが…まずだな、さっきの野暮用ってのは加奈がらみだったん だ。俺はM氏に木下からの伝言を聞かされて、木下は加奈から俺に伝言を預かってたんだ」

 ここまで言うとクロはさすがに驚きを隠せない様子だ。俺は勢いに乗って言い切る。

「でまぁ、話の内容なんだが…なんというかそのぉ、加奈からの提案で『わたしたち付き合わないか』と。ま、つまりは告られたわけだ」

「………で?」声のトーンがいつもより1オクターブ低い…

「まだ返事はしてないんだ。加奈が言うこと言ったら教室から出てっちまったから…」

 言い切った。沈黙がとても苦しい…なにか言ってくれよ、なんて思っているとクロが口を開く。

「佐々木は、どうするつもりだったの?」

 どうするつもりってのはつまり…

「…付き合うつもりだ」

 そう、なんだかんだで言い忘れたが俺は加奈のことを悪くないと思ってる。

 悪くないどころかむしろ顔はいいし、気が合うし、部活を一生懸命やってる姿なんかは思わず見とれてしまうくらいだ。俺は頑張り屋さんが好きなのだ。

 つまり何が言いたいかというと、俺は加奈のことを好いているってことだ。

「…失恋、か」

 そう言って顔を上げたクロは清々しい表情をしていた。

「んだよ、タイミング悪いなぁ…あ、でも面と向かって断られるよりはましかもな」

 いつも通りのクロの軽口だった。もちろん無理をしているのは見え見えだったが俺に気を使わせないように演技しているのくらいわかった。だけどそこまでわかっているなら気づいてないフリしてやるのが優しさってやつだろう。

「ま、俺のほうが運が良かったってことだろ」だから軽口で返してやる

「うっせ、調子に乗ってると付き合って一ヶ月しないでわかれるぞ」

 互いの冗談を笑いあう。少しホッとした。

「でもお前、俺かM氏かどっちかに相談しようとしてたよな…M氏って加奈と仲いいっけ?」

 ふと疑問に思ったので聞いてみる

「ん?あ〜、そん時は木下つかってダブルデートとか」

「あ、なるほどな」納得


 いいかげん外が暗くなってきたのでマックから退散する。

 黙々とチャリをこいでいるとクロがなにかをつぶやいた

「…お前でよかったよ……」

 細い道を縦に並んで走っていた。後ろからのクロの声は俺の耳まで届かなかったので聞き返す。

「あぁ?なんだって??」

 ちょうど広い道に出たのでクロが俺の隣まで追いついてきた

「お前でよかったっつたんだよ」

「へ?なにが俺でよかったって??」

 クロが急にスピードをあげて前にでる。

「この恋を相談したのも、ナンチャラが好きになったのもだよ!」

 俺を追い抜いたクロの耳は真っ赤だった。

―――なんか、青春してるなぁ俺。俺in青春、なんつって

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