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〜第16章・熱×夏×暑〜


 俺が一番嫌いな季節、それは夏。俺は冬生まれで冬が好きだ。


 今年の夏はなんか「梅雨こねーなぁ」とか思ってたらいきなり暑くなった感じ。汗ばむのを堪えつつ、いつものメンツで昼飯を食う。

「私は夏ってけっこう好きだけど、佐々木は嫌い?」

「あー、俺は冬派だな。だって夏は暑いじゃん」

「アホだなぁ、佐々木。暑いからこそ夏だろ」

「そうだよ。それに冬が寒いのとかはいいの?」

 M氏の質問に待ってましたとばかりに俺は答える。

「いい質問だ、M氏。いいか?すっげぇ暑いとき、人は服を脱ぐだろ?」

 「うん、そうね」と木下が頷く。こういう相槌がはいると話すほうは嬉しかったりするよな。

「だがしかし、それはどんなに頑張っても『裸』になった段階で限界だ」

 そして俺の力説は続く。

「いくら暑くても裸にはならんだろ?」

 というクロの発言は無視。

「それに比べ、冬。寒かったら着ればいい。これには限界がない。よって冬のほうがいいのだ!」

 ・・・・・・・・・。一同沈黙

「なんか無茶苦茶な理屈ね」

「「「うん」」」

 満場一致で俺の意見は屁理屈に認定された。

 と、いままで発言のなかった千夏(ゴテケン以来よく一緒にいるようになった)が口を開く。

「エアコン使えば?」

 ・・・・・・・・・。再び一同沈黙。

「それをいっちゃおしまいだろ…」



 俺らはいつも屋上でメシを食ってる。なんでこんなクソ暑ぃ時期に?と思うかもしんないけど、なにごとにも例外ってのはある。

 屋上に上がる階段部分が作る日陰は夏の屋上において極上の避暑地だ。

「ふぃー、いくら日陰でもあちぃな」

 わざわざ持参したうちわ(下敷き)でパタパタと扇ぐ。

「そろそろ行く?」

「おう、そうだな」

 俺とM氏は弁当を片付け立ち上がる。

「今日も昼練?」

「あぁ、3年の先輩たちも引退したし、気張らんとな」

 うちの高校のバレー部はそんなに強くない。短い間だが世話になった3年は予選大会が始まったと思ったらすぐに引退してしまい、今でえはもう新チームでの練習に慣れてきたくらいだ。

「佐々木君はレギュラーになれそうだしね」

「へぇー、やっぱ我らが中学の元キャプテンはすげぇな」

「てかま、セッターはポジション争いが楽なんだよ。2年のセッターは半幽霊部員だしな」

 なんともラッキーなことに、3年が抜けた後のセッター候補は俺を含め3人。しかも片方は幽霊部員、片方は田舎の中学出身で中学時代ろくな練習をしてこなかった1年。

「M氏も、この調子でいけばリベロで出れるだろ?」

「え、M君てバレー上手いの?」

 M氏の隣で真面目に驚いてる木下。

「キノ…あんたそれでもM氏君の彼女?」

 いいぞ加奈、もっと呆れてやれ。そういや加奈と千夏は女バレだから俺らのプレー見ることもあるのか…みっともないことはできないな。

「んじゃ行ってくらぁ」

 日陰ができるのはドアの反対側だから一回日向へ出なきゃならない。

「あーーーー、あちぃ」

 俺とM氏は屋上をあとにした。

「暑い暑い言っといてよく昼休みに練習しに行くよね」

 その背中を見た加奈の言葉は俺には届かなかった。



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