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〜第14章・労いって言葉を知ってるかい?〜

久しぶりの投稿。束の間の休息


 3人の女子による尋問も無事やりすごし、M氏と俺は平穏な時間を過ごしていた。

 帰りがあまりに遅いクラスメイトたちを心配することなどまったくない様子で俺たちはトランプに興じていた。にしても2人しかいないんじゃできるゲームも限られてくるから飽きるなぁなんてことを思い始めた。

「みんな遅いねぇ、どうしたんだろ?」

「さぁ、今頃全員正座とかしてんじゃねぇの」

 無事帰還した俺たちにとっては笑い事だが、俺ら2人以外は全員覗きの容疑で捕まってしまったのでクラスとしては笑い事では済まない気もする。

「でもまぁ、クロを筆頭にみんなが囮になってくれたからいい感じに逃げれたな」

 女子がこの部屋に来たときは内心ビクビクしていたが結局不問となったし、概ね作戦通りにことは運ばれた。自分の才能が恐ろしい。

「だね。まぁ僕らにできるのはみんなの無事を祈ることくら―――」


 ドサドサドサッ


 M氏の言葉を遮るように廊下で物音がした。なにか重たい荷物を床におろしたような…

「なんだ?」

 俺とM氏は恐る恐る廊下の様子を確認する。するとそこには…


 誰一人として例外なくパンツ一丁に剥かれ、からだの隅から隅まで余すとこなくボロボロになったクラスメイトが積み重なっていた。

「「………」」

 思わず黙り込んでしまう。M氏の祈りは届かなかったらしい。この状況を見て無事だと言うならポケ○ンに『瀕死』なんてものはないだろう。

 見ていても仕方がない…が、どうするのがベストだろうか?

「お〜い、大丈夫か?」

 自分でも大丈夫だとは思わないがとりあえず声を掛けてみる。


「「「「………」」」」


 返事がない、ただの屍のようだ

 なんてどこかで聞いたことが(むしろ見たことが)あるような一言が頭をよぎる…

「返事がない、ただの屍のようだ」

 あ、M氏が言っちゃった。やっぱりこの状況じゃその台詞が出てくるよな。

「うぅ…」

 おや、まだ生存者がいるらしい。

 そいつは山の中腹あたりから顔を出してた。見覚えがある…そう、クロだった。

「クロ〜、大丈夫?」

 M氏がクロを引っ張り出す。…頭を掴んで

「いでででででで、首が捥げるー」

 まぁ上には男子高校生が5,6人のっかてるんだ、無理に引っ張れば相当痛いだろう。

「なんだクロ、元気じゃねぇか」

 さすがに冷たいかな?なんて思いつつもボロボロの友人に対してこんな台詞を吐ける自分。Sなのかなぁ…

「元気じゃねぇよ…湯煙で風呂は覗けねぇし、見つかって追い回されるし、逃げてる最中蚊に刺されまくったし、捕まったら捕まったでこんなにボコボコにされるし…」

 見れなかったのか。それはさすがに同情したくなるな。

「そっかぁ、大変だったねぇ。とりあえず今日は布団しいてみんな休む?」

 M氏の優しい一言。でもクロ以外は気絶しっぱなしだからこれを布団に運ぶのは俺らの仕事なんかなぁ…

「ところで、お前たちはなんで無事なんだ?」

 まぁ当然の疑問だろう。クラスの男子19人中、無傷なのは俺とM氏の2人だけだからな…

「んなもん、覗かなかったからに決まってんだろ」

 ここで正直に種明かしするほどバカでもなければいい子ちゃんでもない。なに、この手の質問に対する受け答えは十分に打ち合わせ済みだ。

「作戦会議には出席してたじゃねぇか」

「そりゃま、俺の意見でみんなに貢献できるなら、と思ってな」

 ムムム…、とクロは納得いかない様子。あと一息か

「第一、考えても見ろよ。言っちゃ悪いが俺もM氏も彼女いるんだぞ?覗く必要がないし、リスクが大きすぎる」

 ここまで言っちゃえばクロも反論できまい。

「まぁ、確かにそうだよな…」

 よし、完璧。自分で自分の話術が恐ろしいよ。

 そうこうしてる間に布団も敷き終えた。

「さてと――」

 廊下に積みあがるほぼ全裸の野郎どもを見る。これを全部運ぶと思うと憂鬱だが…戦場での尊い犠牲は手厚く葬るのが礼儀であろう、と覚悟をすると

「明日に備えて早く寝よっか」


 ―――え?M氏さん、なんて仰いました??


 俺の顔を見て何を言いたいか悟ったのだろう、M氏が口を開く。

「布団は敷いてあげたし、みんなもそろそろ意識を取り戻すよ」

「……たしかにな。まぁボロボロなのも自業自得だし」

 もともとがヘタレでめんどくさがりで薄情でドが付くほどのSな俺はあっさりと先ほどの覚悟を捨てクラスメイトを見捨てる。

 覚悟?なにそれ。尊い犠牲?無能なだけさ。礼儀?そんなんじゃ腹は膨らまねぇぜ。

 なんてことは思わないが、まぁミスった奴が悪い…

「にしてもよ、ほぼ全裸の野郎どもがあんな積み重なってるとキモいな」

「うん。意識がないとはいえ男と素肌が接してて平気なみんなの気が知れないよ」

 開き直ってしまったのか、俺とM氏は声高らかに笑いながら適当な布団に入る。


「―――あんたら、鬼だよ」


 クロはそれだけ言うと力尽きたように眠ってしまった。


 言わせてもらうが、俺よりM氏のほうが絶対エグいぞ

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