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〜第10章・遭遇〜


 歩き続けること数十分。現段階で解いた問題は9問、うち難しいのは4問といい感じに解けてる。途中1問だけわからない問題があったがメモだけとって次の目的地へと向かった。だらだら考えるのは時間の無駄だしね。

「なぁ、そろそろ休もうぜ」

 俺の左からクロの提案。

「僕もそろそろ疲れたよ」

 俺の右からM氏の賛同。

「んじゃ次の問題んとこで、考えつつ休憩ってことで」

 俺の口から俺の承諾。

 ウォークラリーが行われてるのはドが付くほどの田舎。滅多に車は通らないので横に3人広がっていてもなんの問題もない。

「今だいたい10問くらいだよね?」

「あぁ、次がちょうど10問目だよ」

 M氏の問いに答える。なるほど、そう考えたらキリがいい。休憩には持って来いだな。

「んで、次までどんくらいさ?」

 そう質問するクロに俺は地図を見せ、現在地を指差す。

「今いるのがここ。目的地がここ」

 目的地を指差し、更にその指を前方へ向ける。餌を目の前に差し出された犬のようにクロの視線が前を向く。

「んですぐそこに見える十字路が、ここ」

 もう一度、指を地図に戻す。俺の指が置かれたのは目的地の横1cmのとこだった。

「なんだよすぐそこじゃねーか♪」

 休憩が目の前だとわかると一気に元気を取り戻したクロは今にも走り出しそうだ。

「おっしゃ、お先ぃ〜」

 …ホントに走り出したよ

「ガキか」軽く溜め息が出る

「お〜、クロは相変わらず元気だね」

 そういうM氏は相変わらずのほほんとしてる。

 走るクロの背中はあっという間に曲がり角に消えた。

「…(ニヤリ)」

「どうしたの?」

 突然の俺のあくどい笑みにM氏はキョトンとしている。

「たまには、運動すっか」

 そう言って俺はいきなり走り出した。

「あっ、ちょっと待ってよ」

 慌てるM氏を置き去りにして角を曲がる。と、そこには



「やっぱり佐々木だった」

 加奈がいた。一緒にいるのは定番の木下と、たぶん女バレの…名前は知らない女子。

「おう、こんなとこでどうした?」

 驚きを隠せないまま、とりあえず口を開く。

 それにしてもなんてアホな質問だ。今は学年全体でウォークラリーをしてるんだ。地図上のどこに、誰がいようと、不思議ではない。

「ちょっと、休憩をしてたの」

 と俺と加奈が話してるとクロが割り込んでくる。無粋な輩だ。

「ところで、問題はどこにあんだ?」

 そうだった。話なら問題を解いてからでも遅くない。

「あそこだよ」

 答えたのは聞きなれない声だった。声のするほうを見ると、道の脇に広がる林の中を指差している女子がいる。名前がわからない…

「あ、あれか。ありがとう…え〜っと」

「千夏」

 俺の心中を察してくれたらしく、本人が教えてくれる。苗字は?

「上の名前は?」クロが尋ねる

「苗字はあまり好きじゃないんだ。いいよ千夏で」

 そう本人が言う。んじゃしかたないな…

「ありがと、千夏さん」

 と礼を言ったのは俺でもクロでもなく、さっきまで木下と話してたM氏だった。

「木下さんたちはあの問題わかんなかったんだって。だから一緒に考えないか、ってさ」

「へぇ、難しいんだ?」当然、気になるとこだ

「う〜ん、難しいっていうか、3人とも苦手なジャンルだったのよ」

 さて、その問題が俺ら3人にわかるかどうか・・・

 つべこべ言ってても仕方ないからみんな(6人)で問題を見る。



『食パンってなんで食パンって言う?』



 ふむふむ、これが今回の問題か。雑学系は俺の担当だな。

「佐々木君、わかる?」

 隣で問題を見ていたM氏が俺に聞く。

「…あぁ、知ってるよ」わりと最近仕入れたネタだ

「こんなん俺だって知ってるさ」

 と、クロが自信満々で声を上げる。次に何を言うかはだいたい想像つく。

「んなもん、食べるパン→食パンに決まってんじゃん♪」

 はぁ…思わず溜め息。

「…メロンパンは?アンパンは?!カレーパンは?!!」

 そう言ってだんだんとクロに詰め寄る。どうでもいいが視界の端でうつむいてる木下はきっとクロと同じことを考えたんだろう。

「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ?の答えは食パン以外全部か?違うだろ」

「た…たしかに」

 リアルにびっくりしている・・・こいつホントに高校生か?

「いいか?たしかに『食べるパンだから』ってのは正解だ。大事なのはその比較対象だろ」

 俺が説明しだすとクロ以外のメンツも聞く態勢になったので俺も全体を見る。

「ま、簡単な話さ。昔は絵を描くとき、デッサンで使う消しゴム代わりの消しパンってのがあったんだ。これはわりと知ってるひとが多いだろうけどね。で、この消しパンと区別するために『食パン』としたわけだ」

 説明終了。

「すごいね佐々木、よくそんなこと知ってるじゃん」

 なんていいながら木下は拍手をしてる。そんなか?

「博識なんだ?」

 との意見は千夏からのもの。

 さっきから思ってたけど、いい声してんなぁ。女子にしてはなかなかのハスキーボイスとクールな物言いがあいまってかなりカッコいい。

 おっと、そんなことは今どうでもいいな。

「博識ってかまぁ…暇だから、暇つぶしにいろいろネタを仕入れるんだよ」

「そうそう、コイツは根っからの暇人だから」

 クロがちゃちゃいれる。悔しがってんのかもな。

「そりゃま、ラグビー部員に比べりゃな」

「へぇ、あんたはラグビー部なんだ?」

 千夏が興味を持ったらしい。せっかくだ…

「まま、立ち話もなんだし、そこらへんの自己紹介は休憩しながらで」

 そう提案してM氏に目配せする。なんと準備のいいことにM氏はレジャーシート持参なのだ。

 せっかく日陰になってるので林の中でもわりと開けたとこにシートを敷いて座る。正直俺もだいぶ疲れていたからちょうどいい。

「加奈たちはどんくらい休憩する?」

 いちおう確認はしとかなきゃな。

 女子3人が顔を見合わせる。

「ん〜、あとは戻るだけだから、けっこう大丈夫」

「そっか、俺らもそんなもんだし、一緒に戻るか」

 せっかくだから彼女と行動したいと思ってしまう俺。


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