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〜第8章・入所式〜


 うちの学校の伝統行事で『ゴテケン』なるものがある。御殿場研修、略してゴテケン。入学したての一年生にクラスメイトとの親交を深めるために用意された行事で、青少年センターに二泊三日で研修に行く。研修と言っても内容はウォークラリーしたり自己紹介したりと、まぁそんなもんさ。

 しかし先日彼女ができたばかりの俺にとって、これは学校行事とはいえ彼女と初のお泊りなのだ。多少の緊張はしかたないだろ?

「おい、顔色悪いぞ?」

 今は移動のバスの中。隣の席のクロが声をかけてきた。

「あぁ、ちょい寝不足でな、酔ったみたいだ」

 そう、昨日の夜緊張のあまり寝付けなかったんだ。俺は遠足前日のガキか…

「たく、加奈さんが見たら情けなさすぎて嫌われるぜ?」

 そう言ってクロは笑う。

 あの屋上での記者会見以来俺ら5人はよく一緒に行動するのでクロは加奈のことを『ナンチャラさん』ではなく『加奈さん』と呼ぶようになった。それどころか加奈ネタで俺をいじりまくるので俺としては気が楽になった。



 バスがセンターに到着したので順番を待ってバスから降りる。御殿場は俺が住んでいるとこより標高が高いので少し肌寒い。バスの熱気に慣れた肺に冷たい空気が入ってくのを感じる。

 とりあえず入所式とやらがあるので体育館へ向かう。いつも思うがなんで入所式なんてやる必要があんのかねぇ。ま、そういう決まりみたいだししかたないが。

「あー、肩いてぇ」

 二泊三日分の荷物は重く、鞄の紐が肩に食い込む。

「ね、早く部屋で休みたいね」

 俺の隣でそういうM氏は最近よく見かけるキャスターのついた旅行鞄を使用している・・・

「お前は肩痛くなんねぇだろぅが」

「そうだ、んなこと言うなら俺らの苦しみを味わえ!」

 M氏を挟んで向こう側を歩いてるクロが言う。俺も同意し自分の荷物をM氏の肩にかけようとする。

「わわ、重いってば」

 うろたえるM氏が面白くてクロと2人で両側からM氏とじゃれる。


ドンッ


「ぐへっ」情けない声が出てしまった

 誰かが後ろから荷物を俺のケツにぶつけてきたようだ。慣性によってなかなかの勢いでぶつかってきた。

「痛ーなぁ、誰だ?!」

 怒って振り向くとそこには木下と・・・加奈がいた。

「うっさい佐々木、Mくんいじめるな」

 どうやらさっきの攻撃は彼氏をいじめられた木下によるものだったらしい。

「いじめてたんじゃねぇよ、じゃれてたんだよ。なぁ、M氏?」

「だね。まぁ重かったのは事実だけど」

 おいおい、そういうこと言ったらまた俺が攻撃されるだろうが…

「いじめはやられたほうがいじめだと感じたらいじめなんだぞ」

 よく聞くフレーズを口にしながら木下の攻撃は続く。

「痛っ、痛っ。おい加奈、木下を止めてくれ」

 木下のとなりで笑っている加奈に救援を求める。

「ん〜、その要請は却下されます。あきらかに佐々木が悪いし、見てて面白いから続行♪」

「そ、そんなぁ」

 加奈の一言で調子に乗った木下は更に攻撃を激しくする。いつの間にか共犯だったはずのクロまで一緒になって笑ってる。

「おい、クロだって共犯だろ」

 木下の鞄を避けながら訴えてみる。いくら悪ふざけといっても金具が当たったりするとだいぶ痛い。避けるにこしたことはないのだ。

「こら佐々木、友達を売るなんて卑怯なことしちゃダメじゃない。男なら友のために我が身を犠牲するくらいの心意気じゃなきゃ」と加奈に言われてしまう

「はい、僕が悪いです」即答

 加奈にこう言われたからには木下の鞄攻撃を甘んじてうけるしかない。

「いいお返事です」

 加奈の顔にはわざとらしいほどの笑顔。



 退屈であろうと思っていた入所式。俺は考えが浅かった・・・でも誰だって「こういうとこの偉い人の話ってのはつまんねぇくせにやたら長い」と思うだろ?俺だじゃない、万国共通の認識のはずだ。

 だがしかし、ここの所長さんの話ときたら面白いのなんのって。話の内容は普通に施設使用上の注意とか布団のたたみ方とかそんなんなのに話し方が上手いからさっきから生徒一同爆笑の海。根っからのツッコミ気質な俺は律儀にツッコんでしまう。それが周りの笑いに拍車をかける。

「おい、そろそろツッコミやめろよ。笑いすぎて腹いてぇ」

 クロがこっちを振り向く。そうとう笑ったらしくちょっと涙目だ。

「んなこと言ったって、あのおっさんがいちいちツッコミどころ満載なこと言うからしょんないだろ」

 まったくもって困ったおっさんだ。俺はなにかあったらツッコまずにはいられない性質なので今の俺を止めたけりゃ前で喋ってるおっさんを止めねばならんのだ。

『いやぁ、この学校にはなかなか優秀なツッコミ役がいますねぇ。どうです、私とコンビ組みますか?』マイクを通した所長の声が響く

 生徒の爆笑に気をよくしたらしいおっさんは調子に乗って俺に話をふってきた。さすがに予想外だ…

「そっすねぇ、とりあえず卒業までは待ってください」

 ツッコミ気質なだけあってアドリブは得意だ。しかも満面の笑み。俺は作り笑いには自身があるのできっと接客業が向いているだろうと自負している。

『おやおや、断られてしまいました』

 もちろんさほど残念そうではない。真剣に残念がられたら反応に困ってしまう。

『思わぬ相方(仮)のおかげで話が予定以上に盛り上がってしまいましたね。では、ここらへんで私の話はおしまいということで』

 そう言うと満足そうな顔でおっさんは引っ込んでいく。代わりにうちの学校の先生が出てきて今後の予定を説明した。事前に配られたしおりに載っていることなので適当に聞き流す。

 暇なんで周りを見渡すとそう遠くないところに加奈がいた。

(おもしろかったよ)

 加奈が口だけ動かして俺に伝える。

(あんくらい余裕だっての)

 とは言ったものの加奈が気に入ってくれたのは嬉しかった。きっと今の俺は顔の筋肉が弛緩しきってるだろう…単純なもんだ。

 う〜む、俺ってもしかして・・・加奈にベタ惚れ?

初めて後書きに手をつけます。

だいぶ間があいちゃいました。というのも事実を元に話を作っていたものですからだんだんとネタが尽きてきたのです。これから先も更新が遅くなるでしょうけども怒らないでくだせぇ


最後に一言。「この小説、恋愛ってよりコメディじゃね?」と思い始める今日この頃・・・

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