表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の奥の扉の先の可能性  作者: 天衣無縫
第一章 幼すぎた時間
7/25

第六話 遥ちゃん ー尋音視点ー


そしてまた一週間が過ぎ、悪夢の一日が始まった。


「すっげえ憂鬱なんだけど…。」

「尋音が憂鬱って言葉を知ってるってことに僕は驚いてる。」

「バカにしてるだろ」

「…僕も今日休めばよかったなぁ」


こうやって誠司と嘆いてる間にも刻一刻と時間は過ぎて行く…。





「さぁ二年生の子達を迎えに行ってきてください。」


先生の声と同時にみんなが席を立って歩き出す。


「行くか…。」

「…うん。」


俺も誠司を誘って教室へ向かう。


「相変わらず元気ないわねぇ」

「月海達には分からないよ…」


少し呆れた顔をしながら話しかけてきた月海と渚に誠司が力なく返す。


確かに男子と遊ぶなら簡単だけど女子と遊ぶってなにしたらいいのか分かんないもんな。


「尋音は昨日何したの?」

「話して終わり。」

「ええ?!遊ばなかったの?」


「だってなんか…うん。難しいんだよな」

「意味が分からないよ」


渚が苦笑する。でもホントに難しいとしか言えないって。




「せーじ先輩行こっ!!」

「…うん。」


…ご愁傷様。


「はぁ…遥ちゃーん」


……返事を待って十秒。

でも返事はない。


「あれ?遥ちゃん?」


次第に教室からは人がいなくなり、ついに誰もいなくなってしまった。


カーテンの裏など探したが人がいる気配がない。


ちょうどそこへ二年生の担任の先生が通ったのでたずねても今日は普通に学校に来てたのだそうだ。


「…トイレかな?」


でも抵抗が…。


いくら人探しだとしても、健全な私男子が余裕ぶっこいて女子トイレに入る訳にはいかないでしょう!!



…うーん、やっぱちょっと見ただけじゃわかんないか…。…緊急事態だししょうがない!



「尋音何してるの?」

「ぎくっ!」


今時ぎくって声出すって、オイ。

振り返るとそこには飽きれた顔をした渚が。


「尋音…。まだ五年生なのに…」

「や、え、違うって!」

「この状況でどう言い訳する気?」

「いや、実は…」


ということでとりあえず今の状況を話す。


「……なるほど。まだ手を汚そうとしてた訳じゃないんだね。」

「それは神に誓います。…ってか渚もどうしてここにいるんだよ」


「私のペアの男の子がお腹痛いって言ったからトイレまで一緒について来たの。

…そしたら尋音が」


あーそりゃぁ勘違いしますよね…。


「で、見て来てくれないか?」

「うん!オッケーだよ」


渚がするりと女子トイレに入って行く。


渚があと数秒遅れて来てればなぁ…。

ってダメだ!俺はそんな気絶対ない!

…と思いたい。


それからちょっとして渚がトイレから出てきた。……泣いてる遥ちゃんを連れて。


「!どうしたの!?」

「……。」


きっとけっこう泣いたんだろう。目が赤くなってる。


「…とりあえず教室行こうか?」


今なら誰もいないからきっと話しやすいはずだ。遥ちゃんもこくりと小さく頷いてくれた。


「あ、渚はペアの子ほうにいてやれよ」

「え、あぁそっか。うん。出て来たら一応そっち行くね」

「うん」



教室に入ってとりあえず向き合うようにして座る。


「遥ちゃんどうしたの?」

「…。」


やっぱり泣き止んでくれなくてうつむいちゃってる。


俺が小2のころには泣くときにはすっげえ大声で泣いてその度に「うるさい!」って母さんに叱られてたな…。


やっぱ遥ちゃんは根っからおとなしいんだ。


「俺でよかったら聞かせてくれないかな。少しなら力になれると思う。」

「…。」


くぅー!ガード硬いなぁ!


「あ、あのさ

「尋音さんは転校したことある?」


!…しゃべってくれた!

まだ下を向いてるけど。


「いや、ないけど…」

「私ね、今年の四月に転校して来たの。でも…」

「でも?」


「…。」


ありゃりゃ。また静かになっちゃった。


「ゆっくりでいいから聞かせて?ね?」

「も、もう、すぐ一ヶ月たつのに、とも、友達できなくて、み、みんな仲良し、さん同士で遊んでる、から、私、私だけ一人ぼっち」


…。そっか。俺はずっとここに住んでるし、ずっと友達には恵まれてたからそんな悩み一回も持ったことなかったよ…。


「…遥ちゃん。大丈夫」

「大丈夫じゃ、ない!」


「俺はもう遥ちゃんの友達だよ」

「…え?」


「ま、まぁ遥ちゃんが嫌がるなら違うかもしれないけどさ、少なくとも俺はそう思ってるよ。」

「…ありがとう」


遥ちゃんがニコッと笑う。笑顔すっげえ可愛いじゃん!やっぱもとから可愛い顔つきをしてるし、同い年なら惚れちゃってるかも。


タタタタッ!


その時男の子が走り寄って来た。この子は確か渚のペアの…。

と思ったら渚も教室に入って来た。


「ねえ!君名前は?」

「え?は、遥…内海うつみ遥。」


「そっか!俺は高坂建こうさかたける!タケでいいよ!…こんなとこにいないで遊びいこーぜ!」

「え、ちょ。ちょっと!」


「じゃ渚センパイ!俺たち先に行きますから早く来てください!」

「あ、うん」


そういうと手を繋いで、というか手を引っ張るようにして走って行った。


「はは…行っちゃったな。」

「あはは、そうだね。でもなんか懐かしいなぁ…」


「え?」

「なんでもなーい。さ、私たちも早く行こ!」

「?お、おう」


結局なんだったんだ?

…ま、いいや俺たちも行こう。



「遥ちゃんってかわいい子じゃん」

「ん?ああそうだなぁ。でもいろいろと大変だったんだなぁこれが。」

「なにそれw」


あははーと笑いながら校庭へ向かう。


「あー!渚ー!尋音ー!」

「おっ月海じゃん!それに誠司も」

「どうしたの?みんなで集まって」


「俺が言ったんだ!みんなで遊んだほうが楽しいって!」


建くんが自慢げに言う。なるほどねぇやってくれるじゃないか小2!


でも遥ちゃんはすこしもじもじしてるみたいだ。

よし!ここは俺が!


「はーるかちゃん!」

「!ひ、尋音さん」

「大丈夫だよ!自身持って!」

「で、でも」


んーそうだなぁ。

…うん、こうしよう!

そしてみんなに遊びの提案をする。


「みんな!氷鬼やろう!」

「「「「「さーんせーい!」」」」」

「でもちょっとルール変えるよ?」


みんなの頭の上にはてなが浮かぶ。


「氷状態から抜け出すためには、ただタッチするんじゃなくて、握手をしなきゃダメ」

「ええー!逃げにくくなっちゃうよー」

「それが狙いだから☆」


まぁ本当の狙いはべつにありますが…。


「じゃあとりあえずやろうか!鬼は……、

よし!渚と建くんね!」

「よし!みんなつかまえるぞー!」


「えぇー尋音ー!私走るの苦手なのにー」

「だから下級生相手でも丁度いいじゃん」


「!…ならいいよ!意地でもみんなつかまえる!頑張ろうねタケくん!」

「うん!」


ということでスタート!


スタートから十秒後に鬼がスタートする。


「待て~!!」

「キャーキャー!」


みんながすごく楽しそうに走り回る。

やっぱこうじゃなくっちゃ!


「はい遥タッチ!」

「あっ早いよ~」


お、遥ちゃん捕まっちゃった!


「はい!こっち!」

「え?」


遥ちゃんに一人の女子が手を出す。

それに少し躊躇したけど遥ちゃんもちゃんと手を出して握手をした。


「あ!逃げられちゃった!待てー!」


「ほら早く逃げよ!」

「あ、うん」


「私マコ!あなたは?」

「えと…遥」

「そっか!あ、来ちゃった逃げよ!遥ちゃん!」

「…うん!」


よかったー遥ちゃん大丈夫そうだ。

あのマコちゃんってたしか誠司のペアじゃ…

…うんまぁきっとうまくいくだろう!


ちなみに狙いはここ!仲良くなるきっかけを作ること!


ここまでうまくいくとは…我ながら

「ターッチ!」

「げっ!渚!」

「ぼーっとしてるのが悪いんだよー!」


ちくしょー情けない!

あ、あれは!


「誠司ー!ヘルプ!」

「…無理。監視が厳しい。」


振り返るとそこには渚が。


「ごめん」

「薄情者ー!」

「誠司くん自分の心配は?」

「え!?」


渚が笑みを浮かべる。

気づいた時にはもう遅い。

「ターッチ!!!」

「建くん!」

「頭脳プレイだよー!」

「ナイス、タケくん!」


いつのまにこんな連携が…。


「尋音さん」


小声で誰かが俺を呼ぶ。あ、あれは遥ちゃん!


よし、渚が少し目をはなした時がチャンスだ。……………今だ!


「はい!握手!」

「ありがとう!」


その声に渚が気づく。でももう遅い!


「逃げられた!」

「ざーんねーんでしたー!」


一気に走り去る

「尋音、助けて…」

「さっき見捨てようとしたの誰だっけ!?」

「く…」


この時ばかりはペアなんてカンケーない!




___________________




楽しい時間も終わりが来て


「ありがとーございました!」


「また今度も氷鬼やろうねー!」

「約束だよー!」



二年生が教室に戻って行く。


「…小さい子も可愛いもんだな」

「えー?尋音前と言ってることが全然違う~!」

「はは、まぁ楽しけりゃいいんだよ~」


「助けてくれなかった…」

「はは…テニス頑張ろうぜ…」


誠司はやっぱ不機嫌か…ってあれ?

一人でこちらを見て手招きをする女の子が。



「どうしたの?遥ちゃん」

走り寄って声をかける。


「あのね…今日はすっごい楽しかった!お友達もできたし、ほんとによかった!」

「そっか。よかったね」

「それでね、ちょっと耳かして」


なんだろうと思いつつも遥ちゃんの口元に耳を近づける。


チュッ


え?なんか今ほっぺに柔らかい感触が…。


「えへ。今日のお礼!じゃーね!」

走って戻って行く。


遥ちゃんも明るくなれてよかったなぁ。



…………って!!!今キスされた⁉

マジですか⁉やばくないすか⁉


やばい顔が赤くなる!


「あれー?尋音顔赤いけどどうしたの?」

「あ、もしかして尋音ロリコン?」

「!!ば、ばっかじゃねえ!?月海はほんとにま、まったく!」


あれ?俺、動揺してる?



………ってロリコンではない!!!

俺には好きな人が!…まだいないけど。

でもロリコンではない!うん!それは絶対!


「助けてくれなかった…。」


…うん絶対!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ