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心の奥の扉の先の可能性  作者: 天衣無縫
第一章 幼すぎた時間
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第三話 恋ばな。 ー尋音視点ー


夜の七時過ぎ。


俺は兄貴と二人っきりで病室にいた。


「おまえは頑張れよ」

「なんでだよ、なんでそんなに余裕なんだよ。」

「しょうがねーだろ?もう復帰はできないんだから。」

「ホントに諦めんの?」


「・・・ああ。」

「! ・・・俺は絶対兄貴を超えてみせる」

「おまえが?ぷ、まあせいぜい頑張れよ」

「俺今週から始める。兄貴には絶対負けねえから!」


そう言って俺は病室を出た。

途中母さんとすれ違ったけど俺は家に直行。



病院からは小学生の俺の足で走っても20分かからずに着く。

部屋の壁に寄りかかってるまだ新品のラケットを持って近くの公園に行った。


なんだよ兄貴のやつ!あんだけ頑張って来たテニス奪われて悔しくねえのかよ!


怒りに任せてラケットを振り続ける。


気付けばもうクタクタになってた。


その日は風呂に入ってそのまま寝た。



___________________



次の日、いつもは迎えに行くはずの渚が今度は家に来ていた。


「おはよう」

「ああ」


自分でも不機嫌な声を出してたことには気づいてた。でもなんか落ち着けないんだよな。



渚と歩く通学路も今日はなんだかちょっと気まずかった。きっと渚も兄貴が事故ったことも、もう・・・もうテニスできないことも知ってるんだろうなあ。


「ど、土曜日頑張ってね!」

「ん、お、おう」

「私、やっぱ無理だけど見に行くから」

「そっか、ありがとな」


ちょっとぎこちないけど渚から話しかけてくれた。そうだよな、いつまでも気にしちゃいられないよな。超えるって決めたんだから。




・・・もちろんその日も素振りをした。



__________________



いよいよ入団日。


まだ着慣れない新品のウェアを着て、昨日おとといと使ったおかげで慣れて来たラケットを持って近くのテニスコートへ行く。


「今日から入団します、沢村尋音です!小4です!」

「同じく、空野 誠司です」

「「よろしくお願いします」」


パチパチと拍手をされて少し恥ずかしいような気もする。



練習はまだ基礎的なもので、まずは当たり前ながら、ルールとか、あとはフォームなどを教わった。


兄貴の試合とか見てたからだいたいのルールは知ってた。でもフォームは少し崩れていて修正するのが大変だった。


こうして無事に入団することができた。


「あ、渚ー」

「あ、尋音。どうだった?」

「うん!楽しかったよ。」

「尋音に誠司も頑張れよー」

「あ、月海も来てたんだ」


何気にいつものメンバーが集まっててすこし面白い。


「俺腹減ったから帰るな」

「あ、じゃ解散ってことで」

「よし、じゃあ帰るか誠司」

「ちょ、月海。」


誠司が月海に引っ張られて行く。あいつらあんなに仲よかったっけか。


「海斗お兄ちゃんいつ退院?」

「ん?二週間後だって。」

「そっか、早く良くなるといいね」

「ああ。」

「・・・あ、そーいえばね!内緒話なんだけど・・・」



渚があきらかに無理やり話題転換をした。まあ一応気遣ってくれてるんだろうし乗っておくか。


「なに?」

「月海が誠司くんのこと好きなんだって」

「ぶっ!マジで?」


だからあんなことをねえ。なるほど、面白くなりそうだ。


「でさー尋音にも協力して欲しいんだって」

「俺が?」

「うん。一番仲良さそうだしね」

「まあいいけどね。おまえは?そういう奴いないの?」

「わ、私はいないよ!」

「ふうん」


ウチのクラスで渚のことを好きな人、ざっと数えて五、六人。ウチのクラスは40人くらいで男子はその半分くらいだから、えっと約分をして・・・四分の一の奴から好かれてる。

ほんと羨ましいくらいだ。


「そっちは?」

「あ、俺?・・・いない、かな」

「えーホント?」

「ホントだっつの!ま、まだ小学生なんだから焦ることはないじゃん?」

「確かに・・・」


俺たちは二人とも告られたことも告ったこともない。俺が言うのもなんだけど、やっぱまだ小4なんだし、今はテニステニス!


早く試合に出れるようになりたいなあ。

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