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心の奥の扉の先の可能性  作者: 天衣無縫
第二章 戸惑い多き時間
22/25

第二十一話 廃部阻止!! -尋音視点ー

あの三種の汚名を着せられた事件(?)からあっというまに日が過ぎてしまった。


その後の部員はどうなったかというと、はっきり言う。収穫0だ。

ここまで調子よく集まっていたのが奇跡なくらいだ。


そしてついに明後日が大会。期限は先週末までだったんだけど伸ばしに伸ばして今日まできたけど・・・。


「さすがに今日が限界。」

「大会の運営側にも無理言って待ってもらってるからなぁ。今日ではっきりさせないといけないか」

部室で俺と誠司で向き合ってため息をはく。


「部長!」

そこに部長がやってきた。


「・・・さっき顧問の先生と話をしてきた。」

「それで!?」

「あとで校長先生と部室に来られるそうだ。」

「校長と!?それって・・・」

「・・・ああ。覚悟を決めといたほうがいいな」

「!!」

そんな・・・。ここまで頑張ったのに。あと一人だってのに・・・。


「ちくしょう!!」

「尋音・・・。しょうがない。廃部になった後でもどこか地元ののクラブに編入して・・・」

「俺はこの学校の選手として・・・兄貴と同じ立場で全国目指してたのに・・・!!」

くそ・・・。ホントにできることがもうないのか?


「先生方がいらっしゃいました!!」

渚が勢いよく部室に入ってくる。


「いよいよか・・・」

部長がグッと目を閉じる。ホントにここまで、なのか。



ここ最近見慣れた顧問の、とはいっても最低限のことをしてくれるだけで校長にごまをすってばっかの先生とひげを生やしてふくよかな体型をした校長が入ってくる。



「「「「「ちわーーっ!!」」」」」

「うむ。」


あいさつにとりあえずうなずいて校長が部室を見回す。



「齋藤君。これで部員は全員かね?」

「はい。」

ひい、ふう、みい・・・と校長が俺たちをカウントする。そして俺を指さしたところでピタッと止まる。


「おや、約束の人数より一人少ないみたいだが・・・」

ニヤリとしながら言う。校長め・・・分かってて言ってやがる。その後ろでくすくす笑ってる顧問もだ。普通なら顧問がなんとか廃部にしないように校長に言ってくれるんじゃないのかよ!もともと期待はしてないけどな・・・。


「これでは残念だが廃部にするしかないねぇ」

残念なんて言葉心の隅っこにも存在しないくせに!!


「待ってください校長先生!!」

今の状況で一番頼れる人が声をあげる。


「残念だが齋藤君。これ以上は無理なんだよ。君も学年主席の学力だ、それくらいはわかるだろう?」

「ですが・・・今までには偉大な先輩もいました!!そんな部を潰していいんですか!?」

「偉大な先輩・・・?過去の栄光は確かにすばらしいものもある。だがここ最近はどうかね?」

「くっ・・・」

先輩の眉間にしわがよる。言い返せないのが悔しいんだろう。こんな大人の身勝手、俺だって悔しい!


「正直迷惑なんだよ。・・・我が校は勉学においても、運動面においても県内トップレベル、いや全国と戦っても活躍できる生徒を育てたいと思っている。だからこのような成績は我が校のイメージダウン、ましてやほかの生徒のやる気まで損ねているといっても過言ではないと思っている。君たちもテニスは諦めて勉学に励むべきではないのか?」


「!!」

もう我慢できない・・・。


「学校のイメージ、学校のことがそんなに大事で生徒は二の次だって言うんですか!?教師なら生徒の可能性を伸ばすべきなんじゃないんですか!?」

「なんだね君は・・・。だから可能性を伸ばすための方法なのだ。勉学という可能性のね」

「!!!そんなの大人の身勝手だ!!生徒の「沢村!!」

思わず口調が荒くなる俺を部長が怒鳴って止める。


どうして・・・どうして止めるんですか先輩・・。



「・・・失礼しました。ですが先生。私たちにはテニスの可能性も十分に・・・」

「フンッ。どうも往生際が悪いね齋藤君。可能性?キミはきっと沢村海斗くんのことを知っているだろう?彼は確かにすごい選手だった。十年、二十年に一人と言われたほどに。だがたった一回の事故で彼は再起不能になってしまった。それでは意味がないんだよ。使えないんだよ。」

「!!先生!それは取り消してください!!」

「部長、ちょっと俺にも話、させてください。」


すっと校長の前に出る。


そしてゆっくりと、大きく息を吸って…


「てめぇ!!もういっぺん兄貴のこと侮辱してみやがれ!!ぶっ潰してやる!!」

吐き出す!



「な、それが教師に対する口調か!?」

「さ、沢村落ち着け!」

「止めないでください部長」

ここまで言われて、兄貴がまるで学校の知名度を上げるための道具として言われて、我慢できるわけがないだろ!!


「成績だ?イメージだ?そこまで学校が大事ならいいよ、明後日の大会、ベスト8なんてちんけなことじゃなく優勝してやるよ!!」

「はあ?そもそも君たちは今日で解散。大会にも参加はできないのだよ?」

「ふざけん「沢村っ!!!」

またしても部長に怒鳴られる。


そして一呼吸置いてから部長が口を開く。


「それですが、交渉があります。・・・マネージャー」


部長が合図を出すと月海が待ってましたと言わんばかりに前に出てきてなんかの機械のスイッチをいれる。


『・・・ないんだよ。使えないんだよ』


その機械からはさっき聞いた不快な言葉が聞こえてくる。ボイスレコーダーみたいだ。


「ここまで言ってしまえば教育者として危ない立場になってしまうでしょう。」

「ぐぅ・・・っ!」

今まで余裕の表情だった校長の顔がここにきて初めて苦い顔になる。


「大会参加を許可していただければこのボイスレコーダーはいますぐ先生方に差し上げます。」

スッと月海が校長に差し出す。それをガバッっと奪い取る。


「・・・いいだろう。だが優勝しなければ廃部だ。これは譲れないよ」

「わかりました。ではお願いします」


校長がのそのそと部室から出ていく。そのあとを金魚のふんのように顧問がついていく。


「ボイスレコーダー渡してよかったの?」

誠司が月海にたずねる。確かにあいつらならずるいことをしかねない。


「もちろんバックアップ済みよ!」

月海がSDカードをかかげる。なんつーかさすがっていうのか、よくあの状況で冷静にそれができたな。


「と、とにかくひとまず廃部は免れた」

「「「「「・・・・・っしゃあーー!!!」」」」」


誠司の声にワンテンポ遅れてみんなが歓声をあげる。

ちょっといらついたけどこれはこれでよかったの、かな。



「沢村」

「はい?」


呼ばれて


振り返った瞬間




パァン!


と音が響いた。



え?殴られた?


誰が?・・・俺が。


誰に?・・・部長に。







「ってぇ・・・」

「さ、齋藤部長!尋音だいじょうぶ!?」

渚があわてて俺にかけよる。

びっくりしたのと殴られた衝撃で俺は今床にしりもちをついている状態だ。

いきなりの状況に部員のほとんどが、え?って顔をしてる。


「確かにあの校長の態度、そして海斗さんをバカにされたことに対しては俺も怒りを感じた。でも、それでおまえがキレてどうする!?マネージャーが機転を利かせてくれたおかげでよかったが、もしかすればおまえは退学だったぞ」

「・・・。」

「おまえがやめたらどうする?ただでさえ部員がいないのに、おまえみたいな主戦力が欠けたら優勝なんて夢のまた夢だぞ!!」

「!!」


・・・そこまで考えてなかった・・・。

先輩が俺のことをそう思ってくれていたなんて。あの場で止められなかったら俺殴りかかってたかも。


くそっ!周りが全然見えてなかった自分が悔しい!!


「・・・でも部長。あそこでお兄ちゃんがいかなかったら僕が代わりに怒ってたかもヨ」

「ボクも。あそこまで言われて悔しい。」

亮と誠司がフォローしてくれる。


「ったく。お前らは・・・。今回うまくいったのは尋音のおかげでもあるのは事実だ。だがこれからは頼むから無茶はしないでくれ。」

「・・・はい」















帰り道。渚と並んで帰る帰り道。


「あ、その!よかったね廃部なくなって!」

重い空気をなんとかしようとしてくれたのか渚が話をする。


「・・・おう」

「・・・うん」

さっきからずっとこんな会話の繰り返し。


過程はどうであれ渚の言ったとおり廃部はのがれたんだからまずは明後日の大会に向けてしゃきっとしなきゃいけないのに。それはわかってるんだけど、でもなんか、すっきりしない。


「よっ!!」

後ろからガバッと抱き付かれた。家の近くでこんなことをすんのはこの人しかいない。


「今日はこんな感じからスタートして彼女を襲った☆」

「・・・放せよ兄貴。」

相変わらず渚は顔真っ赤だし。


「・・・なんか暗いな。おまえがツッコミいれてくんないとおれがばかみたいじゃんか」

兄貴が苦笑いを浮かべて俺の前を歩いていく。


それから間が3mくらいあいたところでピタッと止まる。


「今日の話聞いた。亮とか、齋藤から」

「!!・・・あっそ」

「ありがとな」

「!!・・・・・兄貴?」

兄貴からありがとうなんて言葉いつから聞いてないかな。

もしかすれば小学の低学年の時以来かも。



「俺のことかばって怒ってくれたんだろ?だから。」

「…べつに」

「ふっ。・・・まぁその、あれだ。おまえは気にすんな。」

「・・・。」

「俺は確かにもうテニスはできない。でもそれ以外にも道はある。可能性は一つじゃないってこと、俺がすっげー医者になって校長見返してやるからよ」

「兄貴・・・」

「だからおまえはテニスにだけ・・・じゃないなテニスと勉強にだけ集中しろ」

「げっテニスだけで勘弁・・・」

「お、やっと笑ったな。苦笑だけど。・・・怒ってくれたことホントに嬉しいぞ」

「兄貴・・・」


なんか・・・照れる。

それは兄貴も同じだったのか

「・・・さ!そうと決まったら練習あるのみ!!稽古つけてやっからいつもの公園な」

って言ってそのまま歩いて行った。


「・・・うしっ!!頑張るとするか!!」

パンパンと顔を叩く。


「尋音、表情明るくなったね」

「おう!いつまでもへこんでられねーもんな!!」


「・・・やっぱブラコン」

「それはホント違うって!!!」

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