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心の奥の扉の先の可能性  作者: 天衣無縫
第一章 幼すぎた時間
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第十三話 困り顔、笑顔、怒り顏 ー尋音視点ー

「ありがとうございましたー!」


あいさつを済ませてふと空を見上げる。


「ああ、終わったんだなぁ」


今日は小6になって迎えた最後の全国小学テニス大会の日。


苦労しながらもなんとか地区大会を勝ち抜き勝ち取った全国大会の切符。


でも全国の壁はすっごく高かった。


シングルスでは二回戦敗退、そして今さっき終わった、誠司と組んだダブルスは三回戦敗退。



「でも逆にまわりはもっと小さい頃からテニスしてたのに、ボク達はまだ二年ちょっと。それでここまで来たんだから中学ではもっと上に行けるよ」


「…そうだな。俺たちのテニスは小学で終わりじゃないし…。よし!中学ではてっぺん目指そうぜ!」

「うん!」


そうだ、これは終わりじゃなくて始まり。

そしていつかは兄貴のいたところまで行ってその上まで行く!





今年はたまたま全国大会の開催地が近くの県だったから、移動はバス。勝ち抜けば泊りだったんだけど…例によって日帰り。

でもいくら隣県だからってさすがにけっこう時間がかかる。


緊張が溶けて、時間もあるせいか、急激な眠気に襲われた。


小6。ついに小学の集大成となる年。普通の奴は公立の中学に進むけれど、中にはレベルの高い私立中学を受ける奴もいる。ちなみに俺は前者。


とてもじゃあないけど、俺の学力でそんなところに行ける訳がない。



渚は…どうすうるんだろう。頭がいいあいつのことだからもしかすれば私立に行くのかもしれない。


次に会った時にでも聞いてみよう。


そんなことを考えながら目を閉じた。






「……………たよ……いたよ!」

「んぅ?」

「着いたよ!」



目を開けると誠司が。ああ、俺を起こしてくれてたんだ。


目をこすってなんとか目を覚ますと辺りは少し暗くなってきていた。


「今何時ー?」

「17時。」

「…それって何時?」

「はぁ~。…………午後5時」

「ああそっか。」


…なんで今ため息つかれた?

まぁそれはいいとして、だいぶ寝たせいか腹が減ってきた。早く家帰ろう。


「じゃ、帰るか誠司」

「うん」


誠司の家は俺ん家のほうにある。家とそんなに遠くなく、近くもない、そういう距離。








「じゃ、また明日な~」

「うん。また明日。」



誠司とわかれて、家のまえに立つ。


あー兄貴に笑われそうだ……。

でも過ぎたもんはしょうがない!

出場できたことに胸を張ろう!


そう意を決してドアを開く。


「た、ただいまー」

「おかえりー尋音!」

「あれ、渚?」


母さんが真っ先に出てくると思ったんだけど。それに渚はここの家に住んでる訳でもないし。


「あ、おばさんならお買い物だって」


俺の様子を見て察したのか渚が教えてくれる。


「って渚に留守番させて買い物かよ…」

「いいんだよー。なんかね今日は尋音の全国のお祝いをするんだって」

「ぐ!」


二、三回戦負けなのにか…。


「おー尋音じゃん。今日どうだったんだ?」



そこにタイミング悪く兄貴が二階から降りてくる。


「あーそれ、私も知りたい!」


渚も乗ってくるし…。あーもういいよ!言えばいいんだろ!言えば!


「シングルスが二回戦負け、ダブルスは三回戦負け…だよぉ!」


もう後半投げやりだけど。


「そうなんだ…それってどうなの?」

「まぁ残念だよ」

「そっか…でもすごいよ!全国大会だもん!」


はは、渚は優しいよ。……でも兄貴は。


「へぇ~やるじゃん尋音」

「え!?」

「だって俺小学のときはダブルス一回戦負けだったぜ?」


そ、そうだったんだ!もしかして俺、兄貴を越え…


「まぁでもその負けた相手は優勝ペアで、シングルスは俺ベスト4だっだけどな」


越え…越え…越えられるのか!?俺はこんな兄貴を!

今更ながら目標の高さを実感するよ…。


「海人お兄ちゃんすごいねー」

「だろー?」


くそーいつか見返してぇ!


「お、俺は中学で優勝してやるから!」

「おお!大きく出たな!でも俺はもう優勝したからそれでも俺は越せないぞ?」


も、もう勘弁してください…。

なんだこの化け物兄貴は…。


「あれ?そういやなんで兄貴いんのに渚が留守番してたんだ?」

「俺もさっき帰ってきたばっかなんだよ」


「どこ行ってたんだ?」

「弟よ、花の高校生がすることと言ったらただ1つ!彼女と遊んでたに決まってるじゃないか」

「このバカ兄貴!」


兄貴がニヤニヤする。そうだ。こいつはやたらとモテるんだった。テニスがすごかったのもそうだし、なにより頭もいい。顔もいい。どうして兄弟でこんなに差があるんだ…。

神様は不平等過ぎる。


「でさ~すごいったらなんの!俺も思わず疲れちゃったよ」


出たよ兄貴の下ネタ惚気話。俺は純粋な小学生なはずなのに兄貴のせいでそっち系の知識が頭に入ってしまった。


「何したの?」

渚が聞き返す。っておいそこは聞き返しちゃ


「ふっふっふ。渚ちゃん、知りたかったら俺の部屋を行こうか?」

「バ、バカやろう!!」


ななな、何を言い出すかと思えばうちの兄貴は小学生にまで手を出すってのか!


「冗談だよ。さ、お子様はお子様同士お部屋で遊んできな」

「く、なんかむかつく…けど」


でも兄貴といるより数倍マシだ。


「行くか渚。」

「え、あーうん。」


階段を上がって、すぐ左の部屋、そこが俺の部屋。ちょうど窓からお互いの部屋が見えるようになってて、話しする程度なら普通にできるくらいの距離だ。


「ねぇさっき海人お兄ちゃんが言ってたのって何だったの?」


げっ!!まだそれ聞きます!?


「べ、べつになんでもないよ」

「なんでもないなら教えてよ!」

「え、いやだから~言ってもしょうがないっていうか」

「いいじゃーん!」


なかなか引き下がりませんか…。


「後悔しない?」

「なんで?するわけないじゃん!」


内容が内容ですから…。


「その、あれだよ、あれ!」

「あれって何?」


察してくれよ~(泣)


「だ、だから、その、き、キスしたり、裸で……」

「も、もーいい!!!」


ほらみろ!だからごまかそうとしたのに!


渚の顔真っ赤になってんじゃんか!

真っ赤っていうより肌が白いからピンク色って感じだけど、それがちょっと可愛い…。


って何考えてんだ!!


話題を変えないと!


「「あのさ…!」」


見事にハモった。たぶん渚もきつかったんだろう。


「なに?」

「いや、尋音こそ、」


「え、ああ、渚ってさ中学どうすんの?」

「中学?」


「ほら、おまえ頭いいだろ?だから私立でも行くのかなって」

「ああ…ううん、普通に近くの中学だよ」

「そっか!で、そっちのようは何?」


「ええと、こ、告白されたんでしょ?星香ちゃんから…。」

「え!?」


ま、まぁそれは確かだけどなんで渚が知ってるんだ?


「それで、どうするの?」

「いや、ええっと、なんで知ってんの?」

「いいから!質問に答えてよ!」


な、なんか渚怒ってないか?


「好きじゃないやつとは付き合えないから」

「……ホント?」

「お、おう」

「そっか」


渚がニコッと笑う。さっきからとまどったり、怒ったり、笑ったり忙しいやつだなぁ。


「ただいまー!」

「あ、母さんかえってきたんだ」

「じゃ、一階行こっか!」




……月島か…。

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