第九話 隠し事 ー渚視点ー
ちゃぽーん
「お風呂が大っきい!!」
月海が興奮してる。私も家のお風呂よりずーーっと大きいお風呂に感激!
でもやっぱ気になるよね…。
「ほら!渚!なに隠してんの!」
「ちょ、月海ー!」
タオルで隠してたのを剥ぎ取られる。
あーもうこんな情けない!
どうせまた月海にバカにされるんだろうなぁ。
「…いいなぁ」
「へ!?」
月海からでてきた言葉は意外だった。
「な、なななんで?」
「えー?だって超きれいじゃん!」
「でもなんか情けないし…」
「そんなことないじゃん!ほら私なんてちょっと太ってきちゃって…」
ほら、と月海が見せてくる。でも月海はスポーツ得意で筋肉がついてるから引き締まって見えるし全然太ってないと思うんだけど…。
「まぁまだまだこれからだよ!大人の女になっていくには!」
「月海~」
今日は月海がすっごくかっこよく見えるなぁ。
「じゃ私先に上がるね~!」
「あ、うん私も少ししたら行く~」
月海が先に浴場から出て行く。
確かこの後は夕ごはんだっけか。
「ねぇ渚ちゃんちょっといい?」
「あ、星香ちゃん」
星香ちゃん今日楽しそうだったなぁ。
…尋音と。
「あのさ、渚ちゃんって尋音くんと仲いいじゃん?」
「え、っと、まあ、うんそうなるのかな」
「尋音くんのこと好き?」
「!」
ひ、尋音のことを!?
と、友達としてっていうか幼なじみとしてっていうなら好きになるんだけど、
今星香ちゃんが言ってるのって恋愛感情としてってことだよね…。
「どうなの?」
「尋音のことはべつになんとも思ってないよ!?」
「ホントに!?よかった~」
よかった?どういうこと?
「そうならさ~、あ、そろそろお風呂出よっか」
「あ、うん」
さすがにちょっとのぼせてきちゃったかな。
脱衣所に入って辺りを見まわす。
脱衣所にも月海はいないからたぶん出口のほうで待っててくれてるのかな?
「でさ~。ここだけの話だよ?」
「うん」
星香ちゃんが私の耳に手をあててくる。
「私尋音くんのこと好きなの。」
ふーんそっかぁ。………………え?
「えええぇぇ!」
「ちょっと、シー!」
星香ちゃんが口の前で人差し指を立てて注意してくる。
「あ、ご、ごめん」
「いいよ。で、そこで、なんだけどさ。渚ちゃんに協力して欲しいのさ~」
「何を…?」
「尋音くんとうまくいくようにいろいろ手伝って欲しいんだ!」
「え…」
「お願い!」
両手を握って目を見つめられながらお願いされる。
え、っとその前に服着させてください。
今は上半身裸とちょっと恥ずかしいかっこうになっている。
「うん、いいよ」
「ほんと!?」
星香ちゃんが目をキラキラさせて見つめてくる。……かわいいなぁ。
星香ちゃんはかわいいし、明るい性格だし、人に好かれるタイプだし、長い髪はきれいだし、うらやましいとこだらけだ。
そんなひとに好かれるなんて、尋音もモテるなぁ。
その後のご飯も結局そのことを考えてて味がわからなかった…。
部屋に戻るとベッドに月海が横になっていた。
「あ、渚!」
「月海」
「…なんかさっきからずっと考え事してない?」
「!」
やっぱ月海にはお見通しか…。
さすが親友だね。
「なんか悩みでもあるなら話してよ、ね?」
「月海~。あのね実は…」
と言いかけたところで言葉がつまる。
『絶対に誰にも言っちゃダメだよ!』
あ、星香ちゃんに口止めされてたんだった。
「ゴメン!やっぱなんでもない!」
「え?」
「あはは、どうでもいいの。なんかゴメンね」
「ホントに?」
「本当にホント!」
「ならいいんだけど…」
月海ゴメン。
私嘘ついた。
でも約束は破れないもんね…。
「それでは今日はこの川で活動したいと思います!昨日より川幅が広くて少し底が深いところもあると思うので、気をつけて遊ぶようにしてください!」
佐々木さんから注意事項などが話されて二日目の活動に入る。
ここに来るまでに星香ちゃんといろいろ話した。
「今日は勝負することになってるから楽しみだなぁ!」
「そっかぁ」
「それでね!帰り道になったら尋音くんにいろいろきいて欲しいんだ」
「いろいろって、好きなタイプとか?」
「うん!さっすが渚ちゃん!わかってるね!」
「あはは、うん任せて」
「お願いだよ!」
と、その後も好きになったキッカケとか、
恋ばなをした。
「今日は絶対負けないぞ!!」
「どうかなぁ?」
あはは!と星香ちゃんと尋音が楽しそうに遊んでる。こうして見てるとやっぱお似合いなのかも。
「ヤッホー渚!」
「あ、雪乃ちゃん!」
元気なこのひとは三浦 雪乃ちゃん。私は背がクラスの中でギリギリ前から数えたほうが早いくらいの高さだけど、雪乃ちゃんはダントツで1番前。
髪型はツインテールで、なんとなく美咲と似てる気がするからなんかほっとけないっていうかちょっと危なっかしいところもあるんだよね。
ちなみに宿舎で部屋が同じ。
「もー!ちゃん、はダメだって言ってるじゃん!」
「えーでもさー」
「ユッキーでいいんだよ?」
「…雪乃?」
「…まぁそれでいっか。」
「俺も仲間に入れてよ!」
「雄星くん」
「あ、ゆうちゃんじゃーん!」
「よ、ユッキー」
ってアダ名で呼び合ってるんだ!
「ちょ、ちょっとバカ!」
「あ、ゆうちゃん危ない!」
川の中で追いかけっこをするように遊んでたら、足を石につまずかせた雪乃が転びそうになって、その方向に運悪く雄星くんがいて、
見事に衝突!
二人して転んじゃったよ…。
「だ、大丈夫?」
慌てて二人のほうに駆け寄る。
「うちは平気…。」
「俺はダメかも…」
「あはは!二人ともビショビショ!」
「もー渚~!えい!」
「ちょ、冷たいって~」
「ユッキーどいてよ~」
そうやって三人で楽しく遊ぶ。
やっぱ楽しまないとね!
「ちょ、俺トイレー!」
「そういうことはうち達に隠れて行きなよ!」
あはは、この二人のいいコンビかもね。