光の災難な1日
一也の能力お披露目&光について書きたくて
書きました。よければ読んでくださると嬉しいです
ある日のこと、光は銀行にいた。親が海外へと派遣されているため
お金のやりとりは銀行を通すことになっている。
いつも通り、手際良く入力し、今月分の生活費を引き出している
ところだった。突如、銃声が鳴り響き、遅れて女性の悲鳴が聞こえた。
「全員、頭の後ろで手を組んで、跪け!!!お前はこれに金を
ありったけ詰めろ!」と、受付の人間に言いつつも
銃を天井に向け、続けて2発3発と弾丸を発射する。
やや長めの銃身で、犯人自体も重そうに持っていた。
いかにも、銀行強盗です!と言わんばかりに格好をしており、
顔には覆面を被り、目と口の所には穴が開いていて、前を見れる様に
できていた。そのありきたりな格好に光は小さく笑ってしまう。
それに気がついたのか、強盗の足が光へと向かった。
気まずそうに光は目を伏せて、視線を下へと向ける。すると、頭上で
銃を構える音がした。頭に何かが当て付けられるのを感じる。
「お前、今何か笑ってたよなぁあ!?」
一触即発の事態とはこういうことを言うのだろうか、等と光が考えている。
犯人に応えることもなく、光は突き付けられた銃口へ電機ショックを流す。
「ぐっあ・・・!」
強盗は白目をむいて悶絶した。残った電気のせいか、時折、強盗の体が
痙攣しているのがわかった。
その様子を見て、光は痛そうに顔を歪める。
「ちょっと強すぎたかな」
一瞬、光の視界がブレた。視界が一気にぼやけ、体を前へと吹き飛ばされる。
朦朧とした意識をなんとか繋ぎ止め、痛みが走った後頭部に手を当てつつ
振り返った。
「痛た・・・」
「お前、何かの能力者だな?」
下衆な視線で光を見下ろす男がいた。こちらは覆面は付けておらず、
銀行に一般の利用者として来ているかの様な服装だ。どこも怪しい部分は
見当たらないが、その目だけは、男の本質を語っていた。
男は、金を入れる手が止まっている受付の人間へと怒号を飛ばす。
「ぼさっとしてないで、金を早く詰めろ!!」
受付の人間は弾かれたように、動くのを再開した。
再び、銀行内は恐怖で支配された。聞こえてくるのは、泣きすする声や
それを安心させまいと気遣う者の声だけだった。
「お、お兄さんも強盗さん?」
まだ残る痛みに口の端を引き結びつつ、光が訊いた。
「言う必要はねぇな、お前はここで殺すからだ」
男は胸ポケットから先程の強盗は違ったコンパクトなサイズの銃を取り出す。
それを光に向けると、引き金を躊躇なく引いたのだった。
乾いた銃声が轟き、続いて薬莢が床に落ちて高い音がした。
光は顔を逸らし、目を強く閉じた。男と光の距離は2~3メートル程。
この距離で弾丸を電気で打ち落とす芸当などできる筈もなかったからだ。
(撃たれたのに、痛みがこない・・・?)
ゆっくりと、目を開き、正面へと向き直る。放たれた弾丸は
空中でふわふわと停滞している。綿飴のように、雲の様に軽い動きで
光の目の前で浮かんでいた。やがて、それは地面へと力なく落ちた。
この現象に男は狼狽をあらわにしながら口を開く。
「な、なんだこれは!?こんなこともてめぇはできるのか!?」
もちろん、光の能力ではないし、応用したところで『物の動きを止める』
なんて言う事は実現不可能だ。光自身も、目の前の不思議な光景に
首を傾げた。
「『脳内投影』・・・初の実践投入にしちゃ、上出来だな!」
光の聞き覚えのある声がした。長年連れ添った親友の声だ。
「一也!!」
歓喜に満ちた声で、その名を呼んだ。当の本人、一也は笑顔で光に応える。
不意を突き、男が再び銃を撃った。2人に向けて、まばらに乱射した。
しかし、そのどれもが不可視の壁にぶつかると、そのまま地面へと落ちていく。
「な、なんで当たらないんだ!??」
男のうろたえる様子を見て、にやり、と一也の口元が動いた。
そして、口をゆっくりと凄みを携えて開くのだった。
「弾丸と同じように、お前の寿命もここで止めてやろうか?」
悪魔の笑みを浮かべつつ、言い放つ。
男は、そのまま卒倒した様で、力なく倒れこんでしまった。
突如、銀行内が歓声で満ち溢れた。人々は抱き合ったり、嬉し泣きを
していたりと、恐怖から解放され喜んでいた。
「それにしても、助かったよ。撃たれた時は終わったって思っちゃった」
大きく吐息をつきつつ、胸を撫で下ろす光。
本当に危機に直面していた様で、冷房の効いた銀行内だと言うのに
その額には汗が浮かんでいた。
「俺も、犯人が2人って知った時は焦ったよ」
頬を掻きながら、焦りを隠しつつ一也が言った。
一也の気まずそうにしているところを見ると、助けられるかどうか
自信がなかったかの様に窺えた。
そんな一也の様子には目もくれず、光が腕を組みながら
「それでも、すごいよ。今の・・・『脳内投影』だっけ、
一也の能力だったんでしょ?」と、訊いた。
「俺の能力の本質は『複製』って言うらしいんだ。
まだまだ謎の多い能力で詳しくは俺にもわからない」
と肩をすくめながら一也が答える。ついでに、溜め息もこぼす。
「じゃあ、今のは・・・?」光は視線を向け、話を促した。
コホンとわざとらしい咳払いを1つ。どこかの偉い学者の様に口を開く。
「今のは、ある女の子の、理論上、完全無欠の能力だ。それを
『複製』で俺が使ったってことだ。でも、俺と『脳内投影』の
深層心理での精神のシンクロができていなくて、まだ物を止める程度しか
できないんだけどな。それも少しの時間だけな」
「その女の子って、かなりやばい存在なんじゃ・・・?」
訝しげに眉根を寄せ、光が訊いた。
「本人も幼くて、精神が発達してないから、能力を危ない方向へと
使うこともないんだとよ。そにれ『スキル持ち』という自覚も
持ち合わせていないらしい」
「そうなんだ~」と光が興味津々と言った様子で聞いていると
自動ドアが開き、ようやく警察の人達がやってきた。
犯人の男2人は、それぞれ手錠をかけられると連行されて行き
ようやく、強盗事件は幕を下ろすこととなった。
やがて、再び業務を再開した銀行内で声がした。
「一也、今回はありがとう」
「ま、気にすんなよ」
2人もこうして、銀行を後にしたのだった。
読んでくださり、ありがとうございました!
色々と物語に説明を加えたくて書いたもので
おかしな部分とかあると思います。その事も踏まえて
感想を頂けたら嬉しいです