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私の世界~エピローグ~

これで終わりです。後日談的な話です

「体の具合はどうですか?」月夜が気遣うように訊いた。


「あぁ、急所は外れてたし、問題ないですよ」

と、いつもの笑みを浮かべながら蔵元が答える。


「あの血の海に沈んだ時は、俺も焦ったぜ~」

一也が、大きな吐息を1つついた。


緋色は蔵元の隣のベッドで3人のやりとりを聞いているだけだった。

一也、月夜は警察の監視の下で入院中の蔵元の所へやってきている。

蔵元はベッドで上半身を起こしていて、その隣には一也と月夜が

並んで座っていた。2人はある事を訊くためにやってきたのだった。


「一也君、最後に君は『脳内投影』が消えた、と言ったよね?」


「はい、弾丸が俺に当たりそうになって・・・それで」


「ふぅむ」と顎にを手をやりつつ、何かを考えている様子の蔵元。

「やはり、それは君の友達の言う、『脳内投影』による『脳内投影』の

打ち消し、というのが最も有力な考え方だね」


一也は1番知りたくて、聞きたい話の確信に迫る。

「じゃ、じゃあ!・・・俺にも能力があるってことですか?」


少しの沈黙があり、間が開いた。少しして、蔵元が

「検査結果に規則性の見られない者も『スキル持ち』ということが

わかった今、君は既に立派な能力者だよ」と優しく微笑んだ。

「しかし━━」蔵元は話を続ける。

「この規則性のない人間は世界でも、少数しか存在しないだろう。

現に私は、こんな結果パターンをもたらす人間を自分と君しか、

知らないのだからね。だから、どんな能力かはわからないが」


「やっぱり、そうですよね」と一也は肩を落とす。


「そうがっかりするな。あの時に言った通り、君の能力は

他人依存型のものっていうことは確かだ。しかし、今は

何も使えない。そうだね?」


無言で一也は1つ頷いた。


蔵元は緋色の方を一瞬見てから話を始める。

「私の-mind jack-も『今』は緋色の持つ風の力しか使えない。

なぜだか、わかるかな?」と、一也に質問を投げかけた。


う~ん、と唸りながら一也は頭を掻いた。

「いや、さっぱりわかりません」


「私の能力発動の条件下に存在するのが緋色だけだからだ。

-mind jack-はその名の通りに『他人の能力は乗っ取る』

というもので、対象が有効半径内に存在してくれないと、

この『精神乗っ取り』は発動できないんだよ。そして、

乗っ取られた側は有効半径に入る限り、能力を使えなくなる」

と、蔵元が自ら能力を説明してくれた。


現代社会において、スキル持ちが自分の能力を他人に知られると

不利益なことしか起きないために、あまり自ら喋る事はない。


「しかし、一也君が風圧砲を使えた時に緋色も同じく

スキルを使っていたのを見ると、私の能力とは同タイプだけど

違う部分も多そうだ。そして、能力発動にも条件が、それなりに

付いているものらしい」

厄介そうに顔を歪めて、蔵元が言った。


一也がいきり立ち、手の平を見つめた。

「今から、電気を起こしてみせる!!」


しかし、何も起こらない。月夜の溜め息がこぼれた。


「じゃあ、今度はあそこの花瓶の花!あれを浮かせてみせる!!」

花瓶に向かって手の平を向ける一也。


もちろん浮かない。花瓶にはお見舞いで貰ったのか沢山の花が

飾られていて、咲いている花、まだ蕾のままの花等があった。

それらが部屋中にあった。そのお見舞い用の花の多さが来客者の

多さと共に蔵元の人望をも表していた。


やけくそ気味に一也が叫んだ。

「何でもいいから、起こってくれよ!!!」


すると、部屋中にある蕾のままの花が、急速に成長し

花を開かせるまでに到った。その光景は見るものを

圧倒させた。部屋の中は一気に花の心地よい香りが満ちた。


「これは・・・?」月夜は驚きながら部屋中の花を見渡している。


緋色も何が起こったのかわからず、部屋中をきょろきょろしていた。


「君の持つ花のイメージとは、『咲き誇り美しい姿』というもの

ではないか?」

と、蔵元が訊いた。どこか高揚しているのがわかる。


「花ってのはパーって咲いてて綺麗な物だなぁってイメージですね」

と、ぶっきらぼうに答える一也。


「それだ!これは『脳内投影』だ!君の持つイメージ、つまりは

『概念』を花達に投影したものだ!」蔵元が声を上げた。


「でも・・・」ここで月夜がポツリと呟き、

「『脳内投影』を持ってれば電気も浮遊もできると思うのですが・・・」

と、疑問を口にする。


「そう、理論上『脳内投影』で不可能なことはない。が、この能力は

使用者の深層心理にとても強く依存している。心のどこかで、発電や浮遊は

『自分の能力ではない』と思ってしまったのだろう。『概念』がなかった

ということだ。だから電気は起きないし花も浮かなかった。」


「そして、ここで、また1つ仮説が立てられる」蔵元が口火を切る。

「やはり、君の能力は『複製』だ。そして、その発動条件だが

『最後に“体感”した能力』が使えるというものではないだろうか」


「面会時間終わりますので、そろそろお帰りくださいね~」という

看護士さんの声が病室にした。


「いいところだったのに!!」一也が絶叫する。

「諦めなさい」冷ややかな月夜の対応だった。


2人は蔵元、緋色に頭を下げると、病室を後にした。暗くなり始めた

道を歩きながら2人は家路に着く。


「そう言えば、あの大蛇はどうなったんだ?」


「睨んだら逃げたわ」


睨むだけで逃げるとは思えないが、月夜にだったら充分有り得そうな

話でもある。一瞬、一也がかたまった。


「冗談よ、騒ぎが収まって、警察が来てる頃には姿を消してたわ。

逃げたっていう表現は、あながち間違っていないわね」

艶のある豪奢な茶色がかった長い髪を払いながら、月夜が言った。


「神谷もいたけど、光は『戦わずして勝った!』なんて

言ってたしな~」と一也。


「なんで、あの女がいるのよ」


「あそこの研究施設から祓いの依頼をよく受けてて、今回も

それで居たんだってさ」頭の後ろで手を組みながら一也が言った。



「ふ~ん」興味無さ気に月夜だ。



こうして、2人は自宅に帰った。一也にしては自分が能力者

であるということがわかり、とても良い一日になったのだった。


私の世界~END~

よんでいただきありがとうございました!!

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