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ダンジョンが出来て、能力を貰った

「……どんな状況でも寝れるスキル、ですね」


能力鑑定センターの職員さんは、申し訳なさそうにそう告げた。


思わず、間抜けな声でオウム返ししてしまう。


「どんな状況でも……寝れる、スキル……?」


「ええ。その、羨ましいですよ? 疲れが取れるのは大事ですし」


気遣いの笑顔。

はい、察しました。ハズレ枠ですね。


順番待ちの間に鑑定を終えた人たちは、皆キラキラした顔で帰っていったのに。

俺だけ、帰り道の足取りが重い。

駐車場に止めている自分の車だけ、不幸のオーラでも纏っているかのようだった。


――こんなしょうもないスキルで、どうしろってんだ。


世界中にダンジョンが出現して、

そこで一攫千金を掴んだ連中がニュースを賑わせている。


現代のゴールドラッシュ。

ドロップはどれも希少、ランダム性が高く値崩れもしない。


うちの店長でさえ転職を考えてるし、

「危険だけど夢がある」と言われれば、そりゃ揺れる。


しかも、スキル次第で難易度はベリーイージーにもなるらしい。


……俺のスキルじゃ、間違いなくベリーハードだ。


残念ながら、鑑定結果を見ると

「寝たらレベルアップ!」とか

「寝て起きたら覚醒しました!」みたいなボーナスも無いらしい。


貰えるスキルは一生に一つだけ。

それなのに……こんな能力いらねぇよ……はあ。

支援スキルなら大手チームに所属してウハウハ、

――のはずだったのに。


「ついてねぇ……」


どんよりとした気分のまま、家に着く前からネガティブな妄想だらけ。

身体がだるい。その勢いで、半ばヤケクソでスキルを使ってみた。


「寝る」


――短いスキルの発動ワード。分かりやすい。

鑑定から出た発動ワードはこれだけ。つまり、本当に寝ることしかできない。

だが、驚くほど心地いい。


最高の寝心地……すぅ……すぅ……



「ふあぁ~……よく寝た……」


明るい? いや、そんなに寝たか?


スマホを見る。

――一分も経っていなかった。


「……は?」


そして、理解する。


疲労ゼロ。

体も軽い。

なのに、現実時間は一分も動いていない。


脳裏に、電撃のようにひらめく。


――金欠サラリーマンの、禁断のビジネスモデル。


「今まで寝てた時間、全部労働に回せるなら――給料、倍どころじゃないよな?」


実働八時間、休憩一時間、月百六十八時間。

計算? 無理。だが稼げるのはわかる。


さっそくスマホで求人広告を手当たり次第に開く。


「……“超法規的措置、適用”?」


【急募】

都市迷宮管理公社・中枢鑑定課

オペレーション職 若干名


――鑑定、査定、出品手続き。

――選別と記録、探索者登録、支援窓口。

――階層情報の整理、モンスター・データの統合。


【勤務時間】

ご希望に応じ柔軟対応


【給与】

勤務時間により変動・要相談


「こ・れ・だ!」


迷わず電話する。


「もしもし、求人を見て電話しました。

月……六百時間働きたいんですけど、大丈夫ですか?」


『――大丈夫です。採用です。今日から来てください』


即答だった。


電話一本、即日採用。今日から勤務。


普通ならブラック企業確定案件だが――


俺には、このスキルがある。


「くくく……上等だ。

寝る時間が、全部“稼ぎ”に変わるんだからな」


しょぼいスキルだと落ち込んでいたけど――


今は、世界がちょっとだけ俺に傾いた気がする。


ええーと、割と近くだな。

こんな身近にブラック企業があるとは……恐ろしい。

さてと、ちょっくら毎日23時間労働してやるか!!


1年後が楽しみだなぁ~。

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