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アッテーザ・ヴィブランテ 震える期待

「用意はいいかしら」美咲は問う。船の準備は整っているのはもう知っている。各人の心構えの用意ができているかを問うているのだった。艦橋にそろった六人全員がうなずく。

「マイケルを含めたヴァースのテレパスたちは、先だってのサスキアからの最高指令に沿って動くネクサス・ウンブラの下で、差し迫った危険性がない状況。もちろんそれは歓迎されるような待遇ではないけど。みんなで話あった通り、より優先順位の高い行動に取り掛かる。セリア、サスキア、申し訳ないけどマイケルの救出を今すぐは実行しないわ」

「マイケルには申し訳ないし、会えないのは残念だけど、同意します」新しく作った通信席に座るサスキアは期待と興奮で顔をやや紅潮させながらはしっかりと答える。セリアもうなずく。

「私たちの喫緊の目標は、ヴァース全体を保全すること。そのためにもテレパスについてもっとよく知ることが必要。具体的には、ハインリヒとカオルを見つけて話を聞くこと。でも盲目的に探しても見つかるわけはないし、そもそもヴァースに近しいどこかにいるということはほぼ確実」

「二人がヴァースの崩壊を悟って雲隠れしてなければね」セリアが注釈をつける。

「そう。でもたとえそうであっても、ヴァースから情報を引き出すことがとっても重要。したがって、あたしたちにとって優先順位が高いことは、もう2か月後になったゼータ・サルガタナス星系でのヴァースの会合とアップデートを大成功させること。そこで二人についても情報を得るし、何よりヴァースの保全の第一歩を行わねばならない」

「そして第一歩と言うのは、新しい最高命令の発出」観測席に座るヴァレリーが軽やかに言う。「そして、資金供給なわけよね」

「そう。各星系のネクサス・ウンブラたちは各星系で売りさばかれた薬物のアガリをもってゼータ・サルガタナス星系に集合するだろうけど、彼らへ供給する薬物はもう存在しないしあったとしても渡さないから、とんでもない大反発が起こるかも。それを黙らせるために活動資金は供給できるだろう。しかしそこで不信感を持たれると、ネクサス・ウンブラの連帯もヴァースも一気に崩壊しかねない。」

 美咲は全員が話についてきていることを確認するために言葉を切った。

「一方で、薬物が絶たれると、薬物で汚染されつつ薬物でどうにか社会を保っている星系は、それはそれで一気に崩壊するし、それを止める方法はない。侯爵は、俺たちがヴァースを乗っ取ろうとしていることは知らないだろうし、ネクサス・ウンブラの工場を叩き潰したわけだからこのまま一気にセクターの実効支配にかかるだろう」航法席からエリックが続ける。「つまりセクター中が大混乱に陥る中でも、俺たちはネクサス・ウンブラの首根っこをつかんで餌を与え、飼い主が変わったことを不審がられないようにしないといけない。あるいは飼い主が変わってないと見せかけるか」

「と言うことは、ネクサス・ウンブラの上層部とずぶずぶだった侯爵にご登場いただくという可能性を拒否できない。つまり先日のタラントのリングでの戦闘はネクサス・ウンブラ上層部の内紛であって、結果として侯爵が勝ったということにする。これなら各星系のネクサス・ウンブラは不審に思いにくく、それでいてこんな上層部の争いに首を突っ込みたがらないだろうと思うわ」

「核攻撃も辞さない相手だしな」機関席に座るマーカスがつぶやく。

「だから、今からオルディナ星系へ戻り、侯爵を脅しつけて、ゼータ・サルガタナス星系会合の『顔』になってもらうようにする。侯爵にとっても悪くない話のはず。私たちが侯爵のネクサス・ウンブラとのかかわりを、情報局や連邦中央政府に伝えないことを約束すればね。もちろん、ヴァースの実権は私たちが取る。なんだか超腹立つけど、全体としてみると巨悪が少し弱まって、弱者がちょっと助かる道筋が始まるってこと。ヴァースを完全に昼間の世界にお迎えするところまではまだ無理だけど、夜明けくらいまでにはまずもっていこう。まあ後は臨機応変ってことよ、スワンズらしく」

 侯爵の脅しについて、何を持ち出すかはゆっくり話し合わねば。特に連邦内の特定の星系への不安定化工作は、それらの星系の領主からしたら殺意がわくような話。それとも侯爵が受け取る金の流れも脅しの材料になろう。これが最も穏便な選択肢だと美咲は感じていた。気に入るかどうかは別として。

 美咲は艦橋の操縦席から全員を見渡す。「異論はなさそうね」

「よし、オルディナへ向けて出港するわ。エリック、離床を。大気圏外に出たら、船をオルディナへのジャンプ・ポイントへ向けて巡行させてね」

「アイ、マム!離床する」エリックは航法席でサブパイロットとしての仕事をこなす。

「それでは出発~」船主席に座ることに慣れてきたセリアが明るい声で叫ぶ。


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