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傲慢

暗闇の中から、徐々に光が差し込み始めた。ここがどこなのか、状況がどうなっているのか、見当もつかなかった。その時、周囲から誰かの声が流れ込んでくる。

「お目覚めですか、兵長殿。」

「……そのようだな。」

「無理はしないでください。ただ目を開けているだけで十分です。」

イバンの中性的な声が耳に響いた。アドラーはそのおかげでゆっくりと、そして完全に目を開けた。彼の赤い眼光を、青い空が映し出していた。

「状況は……どうなった?」

「我が小隊の勝利です。完璧にね。これほど鮮やかな勝利があるものかと少し疑いたくなりますが……今のところ戦死者もゼロです。」

「そうか……良かった。俺は……何をしようとして……」

アドラーは記憶を辿る。そして自分をショットガンで追い詰めたあの中年の男を思い出したかのように、アドラーは頭をかきながら上体を起こした。

「あぁ……すまない。今回の戦闘では、あまり役に立てなかったようだな。」

「一体どんな奴に出会えば、兵長殿が倒れるんですか? 医務室には一度も来なかったような方が、こうして足と頬を焼かれて戻ってこられるなんて、それなりに驚きましたよ。」

「うちの兵士共は、兵長殿が運ばれてきた時にパニックになって、敵をまともに見ていなかったそうです。無能な奴らだ。ちっ。」

イバンが無造作に言葉を吐き出した。彼女は純粋な畏敬の念から、アドラーをここまで追い込んだ敵が何者なのかを知りたがっていた。あのイバンでさえ、これまで一度も毒づいたことのない唯一の味方がアドラーだったからだ。

散弾銃ショットガン使いだった。俺が気づかないうちに接近し、散弾を浴びせてきた。」

「ショットガンですか……? そんなものをこんな雪山で使う狂った奴がいるんですね。兵長殿が気づかないほどとは、かなりの手練れのようですね……」

「そういうことだ。もちろん、俺にも油断があったのは否定できん。」

アドラーは目撃したあの男について語り、その実力を認めた。彼は顎をさすりながら、自分の足を確かめた。

「ところで……歩けるのか?」

「いいえ。2、3日は大人しく寝ていてください。あ、それと小隊長殿からも、兵長殿が目覚めたら知らせるようにと言われているので……私は呼びに行ってきます。」

イバンが席を外すと、アドラーは自分の周囲を見回した。自分が敵陣の内部にある移動式ベッドに寝かされていることに、ようやく気づいた。

「本当に……全て終わったようだな。」

彼を囲む部隊の壁には血がべったりと付着しており、敵の死体はゴミの山のように隅に積み上げられていた。それに反する青い空は、なぜか二律背反アンビバレントに感じられた。

「あ……兵長殿?」

その時、背後から少女の声が聞こえてきた。彼女は隣にいる少年と共に近づき、目を見開いてアドラーを見つめた。

「起きられたんですね……?」

「へ……兵長殿……?」

「あぁ、今起きたところだ。お前たちに無様な姿を見せたな。すまない。」

「いえいえ! どうしてそんなこと言うんですか!?」

「小隊員を守るべき俺が、こうして気絶していたというからな。エリートと呼ばれながら。」

「そんな、誰にだって失敗はありますよ!」

突然謝罪を口にするアドラーに対し、フォーゲルは慌てて手を振って否定した。アドラーは自分の手のひらだけを見つめ、顔を上げることができなかった。

「兵長殿。」

「……何だ?」

「ご自身を、部隊を支える『エリート』だと思っておられるのですか?」

「……?」

突然のリーベの問いに意味を測りかねたアドラーは、瞬間的に戸惑い、言葉を継げなかった。彼の赤い瞳が、初めて揺れ動く姿を見せた。

「私ごときが失礼な言い方かもしれませんが……兵長殿は英雄ではありません。」

「……どういう意味だ?」

「リ……リーベ! 何を言ってるんだよ?」

リーベの意味深な言葉は、単なる嫌がらせには見えなかった。彼女の性格上、そんなことは不可能に近かった。フォーゲルは驚いてリーベを止めようとしたが、彼女は近づこうとするフォーゲルを腕で制した。

「兵長殿は英雄でも、私たちを支える大木でもありません。ただ狙撃が上手なだけの、普通の人間です。人間なら、失敗は誰にでもあるものです。自分をエリートだと言い、他人を守れなかったと謝るのは、謝罪ではなく『傲慢』です。」

「……」

リーベが階級を離れ、アドラーを一人の人間として対峙した瞬間、彼の重い手がわずかに震えているのが見えた。この雪山の寒気の中でも一度も震えたことのなかったアドラーが、この少女一人に対して震えるというのは、意外な衝撃だった。

「結果として、兵長殿がいなくても、私たちの小隊は生き残りました。一人も死なずに。」

「……俺は必要ないということか?」

「いいえ。兵長殿は私たちの、大切な戦力であり仲間です。そして仲間としての役割は……一人で全てを背負い込むことではなく、協力することです。」

「……」

その瞬間、アドラーは目を見開き、リーベの言葉の意味を理解し始めた。仲間とは一人で全てを背負うのではなく協力するものだという言葉は、アドラーの世界観を根底から揺さぶる発言だった。

「だから、一人で成し遂げられなかったと、仲間を守れなかったと自責するよりは……一度、ご自身を冷徹な狙撃手としてではなく、『人間』として扱ってみてはいかがでしょうか?」

「……!」

アドラーは、この小さな少女に自分の本質的な存在を認められたということが信じがたかった。部隊の誰もが彼を「エリート」として扱い、同じ「人間」としては扱わなかった。そのもてなしは、アドラーに寡黙な狙撃手の役割を強要し続けていたのだ。

「エリートとしてではなく仲間として……小隊員たちと共に行動するのはどうですか? いつも一人で任務をされていますよね。」

「……しかし……」

「皆、喜びますよ。兵長殿は誰よりも頼もしいんですから。」

「……」

アドラーの目から、一筋の滝が流れ落ちた。この部隊の周囲にある荒々しく騒がしい滝とは違う、静かで温かい滝だった。

「……兵長殿……」

「……っ、うぅ……」

「フォーゲル、待って。」

フォーゲルが驚いてアドラーに駆け寄ろうとすると、リーベは再び腕で彼を遮った。その腕は、しっかりとフォーゲルをアドラーから引き離す仕切りのようだった。

「……ふっ、う……すまない……無様なところを見せてしまったな……」

「……いいえ。泣いてもいいんです。兵長殿……いえ、アドラーさんが一番頼もしい瞬間は、今ですから。」

リーベは温かく、彼が泣き止むのを待った。彼女の待機は、アドラーの周囲に誰も近づかせなかった。彼はそうして「エリート」ではなく「アドラー」として、しばらくの間、声を上げて泣いた。

「来たぞ、アドラー。状況の整理に手間取って遅く……」

フェルカー小隊長が、イバンの案内を受けてここへやってきた。常に冷静なフェルカーも、目に涙を浮かべたアドラーを見て、初めて当惑の色を見せた。


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