尾行
ドゥエルが発見した物体は、不気味極まりないものだった。中央では赤い光が凸レンズを通り抜けて漏れ出し、至る所に電線とパイプが連結されて一つの塊を成している物体だった。
その物体は、ある意味では屋根裏部屋とも言えるような、何も見えない真っ暗な空間の中で、巨大な姿で闇を遮っていた。闇は銀色、あるいは灰色を帯びた機械によって隅々まで遮られ、屋根裏部屋に閉じ込められていた。
ほのかに漏れ出す赤い光は、血に染まりつつある兵士たちのように危うげな姿で、ドゥエルの眼光を照らした。そのおかげで、彼の緑色の眼光は赤色に染まった黄色味を帯びて煌めいた。
これを見たドゥエルは直感した。この物体は尋常なものではないと。彼は目を見開き、即座に開けたレンガを閉じた。素早く棚から飛び降り、息を整えた。
「……機械……か? いや。到底フリーデンやウンステアの技術力じゃない。なら、あれは一体何なんだ……?」
彼は頭の中でらゆる推理を巡らせた。敵の秘密兵器なのか、敵基地を統括するシステムなのか、あるいは単なる調理用機械なのか。ドゥエルは、自分が敵軍基地の真っ只中にいることさえ忘れてしまっていた。
「とにかく、俺一人じゃ危険だ。フェルカー少尉に知らせなきゃ。しっかりしろ、ここは敵陣だ。いつ敵が踏み込んでくるか分からない場所なんだ。はぁ……出なければな。」
ドゥエルは気を引き締め、自分の銃に手を置いた。弾倉が正しく装填されているかを改めて確認し、この食料倉庫の外へと続く通路を警戒しながら足を進めた。
「コツ……コツ……」
軍靴がくすんだ灰色のレンガの床に触れる静かで硬い音だけが、周囲を包み込んだ。その時、前方の分かれ道から別の音が響いた。
「……」
ドゥエルはその音を聞くや否や、近くにあった柱に身を隠した。柱の冷たい質感が彼の背中を伝わった。
「このままじゃ……全滅だぜ。」
「なんで副小隊長の野郎は『あれ』を出さないんだ! くそっ!」
(あれ? ああ……さっきのあの機械か。戦闘は後回しだ……少し話を聞く必要がありそうだな。)
ドゥエルは敵の言う「それ」に焦点を絞り、彼らをもう少し尾行することに決めた。彼らは銃声の絶えない外へと無理やり駆り出されているように見えた。
「全くだぜ……はぁ……俺たちが犬みたいに従ってるからって、駒だと思ってやがる。これじゃ全滅だ。」
「クソ、外になんか出たくねぇよ……いっそ脱走するか。」
「脱走……? 可能かよ。敵の小隊の奴ら、見える端から皆殺しにしてるみたいだぜ。」
「ここで死ぬのもフリーデンに殺されるのも同じだろ。まあ……生き残る可能性はフリーデンに膝をつく方が高いんじゃねぇか?」
「少しは考えろよ……この前捕まった二人、戻ってこなかっただろ。誰が見ても無惨に殺されたに決まってる。」
「うわあああ!!! クソったれだ!」
二人の兵士を背後で見守っていたドゥエルはため息をつき、ゆっくりと姿を現した。彼は会話の主題が脱走にそれたことで、これ以上は情報を引き出せないと判断した。
「ゴンッ!!!」
ドゥエルは彼らの背後から密かに近づき、銃床で一人の頭を強打して気絶させた。殴られたのは脱走に反対していた兵士だった。隣にいた「それ」の話を持ち出した兵士は、一瞬の出来事に驚愕し、銃口を向けようとした。
しかし、ドゥエルの方が速かった。彼は腰を落として銃口の下に潜り込み、足にタックルを仕掛けて敵の均衡を崩した。倒し込んだ後、彼はその上に乗りかかり、銃口を頭に突きつけた。
「さっきまで話していた『それ』について、教えてもらおうか。」
「うあああああっ!!! た、助けてくれ!!」
「黙れ。俺の問いに答えろ。お前が生きるか死ぬかは、お前の行動次第だ。」
ドゥエルは非情な眼差しで、組み伏せた敵兵をじっと見据えた。悲壮な彼の姿にすっかり怯えきった兵士は、すぐに口を開いた。
「な……何を話せばいいんだ?」
「さっき副小隊長が『それ』を出さないと言っていたのを聞いた。『それ』とは何だ?」
「そ……それは! お……俺たちの小隊の……切り札だ! そ……『スルースアクト』っていうんだが……」
「用途は何だ?」
「き……聞いてくれ! そんな機械があるんだが……つまり……兵器だ。もの凄く強力な……兵器! お前たちの部隊を食い止めるための兵器だ……!!」
「……およそ危険なものだということは分かった。だが、どこにある?」
「し……し……食料倉庫にある……隠されてるって話だが……俺も出したことがないから分からないんだ……!」
敵兵がしどろもどろに秘密兵器についての説明を並べるのを聞いて、ドゥエルはさっきの物体がそれであることを確信した。それが起動すれば、ドゥエルの属する06小隊が危機に陥ることも察しがついた。
「……分かった。」
ドゥエルはそう言い放つと、敵の項首を掴んで銃を荒々しく奪い取り、人目のつかない空間へと引きずっていった。頭を強打され、目を回して気絶した兵士も、もう片方の手で床を引きずりながら進んだ。
そうして、柱に囲まれて音が漏れ出さない一坪ほどの空間に敵二人を引きずり込み、ドゥエルは周囲に転がっていた針金で彼らを柱に固く縛り付けた。
「妙な真似はしない方がいい。そうすれば、俺もある程度は慈悲を見せるつもりだ。」
「は、はい……!!!」




