夢
夢、それは虚像だろうか、実像だろうか。眠りにつき、夢という行為に入り込むと、誰もが本来の生活を忘れ、内面の隠された真実へと生まれ変わる。そこでは自分が誰なのかも、なぜここにいるのかも知ることは難しかった。
「ただいま。」
「おかえり。ご飯にするから少し待っててね。」
聞き慣れた声が聞こえてくる。そして上を見上げると、誰かの揺れる黒髪が目に入った。顔はどういうわけか見えなかった。しかし確かなのは、今が幸せだということだった。
リーベは靴を脱いで上がり、木のテーブルに今日拾ったドングリと松ぼっくりを広げる。取るに足らない小さくて丸い森の贈り物だったが、少女はそれを大切に一つ一つテーブルに並べた。そしてそれらを触りながら、満足そうに微笑むだけだった。
「おばさん、今日の夕ご飯は何?」
「うーん、久しぶりにビーフシチューでも作ろうかしら?」
「あ、うん!いいよ!」
黒髪の女性は振り向き、台所へ向かう。その姿をリーベはぼんやりと見つめながら、再びドングリに視線を戻す。丸いが荒々しく、歳月の痕跡が描かれたように土がかなり付いたドングリだった。
「一人で遊ぶのは退屈だな…」
そう言って、すぐに飽きたようにそれらを放っておき、リクケアのそばへ行く。視線はずっと下を向いており、リーベの目には野菜を切っている手だけが見えた。
「退屈だよ…」
「ふふ、そう?もう少し待ってて。すぐできるからね。」
やがてビーフシチューが食卓に並べられる。味はなぜか感じられなかったが、温もりは伝わってくるようだった。シチューの赤みがかったスープは、この寒さの中で体を温めてくれるストーブのようだった。
「ごちそうさまでした。」
「はいはい。じゃあ、本を読んであげるね。」
食卓から食器が片付けられ、すぐにリーベはリクケアの膝の上に座り、絵本を見始める。可愛らしい動物たちと豊かな自然が共存する寓話だった。
「昔々、可愛らしい動物の友達が住んでいました。その動物たちは、それぞれ異なる見た目と性格を持っていました。そんなある日、エナガはいつものように森へ出かけ、歌をさえずりました。」
「ウサギさんウサギさん〜歌を歌ってね〜ぴょんぴょん跳ねて体を揺らしてね〜」
「ウサギさんウサギさん〜へへ。」
リクケアがエナガの歌を真似ると、リーベもそれに倣い、無邪気に笑う。白紙のように純粋で澄んだリーベの目が、絵本の中のエナガに向けられる。エナガは白い毛に小さな体を持ち、可愛らしい姿で描かれていた。
「そうやってしばらく歌を歌ってから、エナガは家に帰ることにしました。一人で遊ぶのも退屈になってきたからです。ところが村に帰ってみると、住民が一人もいませんでした。」
「あれ…?なんで?」
「ふふっ。『ママ〜パパ〜どこ行ったの?』エナガは家に入って、ママとパパを探し始めました。でも、どこにも二人は居ませんでした。」
リクケアの穏やかな声が響き、リーベはそれを聞きながら好奇心に満ちた顔で本を詳しく覗き込む。腕はリクケアの腕を抱きしめるように回しており、ふかふかの膝の上でリラックスして座っていた。
「エナガは言いました。『あれ…?おかしいな?』そしてその言葉を言って家を出て、村を歩き回ることにしました。人は誰もいませんでしたが、初めて見る花が井戸のそばに咲いていました。」
「その花はまるでエナガのように小さくて白い色をしていました。その花をぼんやりと見ていたエナガは、すぐに今日が狩人が来る日だということに気づきました。いつもその日には、皆が洞窟に隠れていたのです。エナガはその花を摘み、いつも人が隠れていた洞窟へ行ってみました。」
絵本の単純だが興味深い物語は、子供たちの好奇心を刺激するものだった。リーベは笑いながら、リクケアが次のページをめくってくれるのを待った。そしてすぐに紙がめくられる音と共に、炎で満たされた絵が見えた。
「洞窟に行ってみると、現れたのは熱い火だけでした。人がいるかどうか確認することも難しい状態でした。そしてエナガは悩みましたが、勇気を出して炎の中に身を投げました。」
「う…熱そう…」
「火の中に入ると見えたのは、火に体を震わせ、恐れているママとパパ、そして人々でした。彼らはエナガを見て、早く逃げるように叫びました。」
「ところが、突然エナガが持ってきた白い花から光が放たれ始めました。そして一瞬にして炎は消えました。わけがわかりませんでしたが、その花の神秘的な力は、押し寄せる狩人たちまでも追い払ったのです。」
「わあ…花、かっこいいね。」
一枚一枚紙がめくられる。童話らしく厚く、めくるたびに見えるのは文字ではなく絵だった。絵の中では白い花が輝いており、エナガはそれをにっこり笑って掴んでいた。
「エナガは勇気を出して火に飛び込んだおかげで、人々を救うことができました。そして、小さなものも大切にするその美しい心のおかげで、花を持ち続けることができたのです。」
「そうして人々は歓声を上げ、エナガに感謝の意を表し、エナガは両親との幸せな日常を取り戻すことができました。
…おしまいよ。どうだった?リーベ?」
「小さなものも大切にするってことがわかった気がする…私も今日拾ったドングリを大切にするね。」
「うん。いつでも小さなことにも感謝して、勇気を持って行動しなきゃいけないよ、リーベ。あなたも大きくなったら、きっとエナガのように立派な人になりなさい。」
リクケアの教訓が終わり、視界がぼやける。ぼやけた背景の中で目を閉じて開けると、見えたのは薄暗いテントの天井だった。
「夢だ…あれ…?」
リーベの頬には涙が流れていた。懐かしさと親愛の情が、リーベの目元をしっとりと濡らした。




