休息
過酷な訓練を終え、ついに訓練兵二名と教官が一緒に雪原を歩いていく。夜道は暗かったが、どういうわけかジンクスに付着した赤いペイントは妙に明るかった。
「あの、あれって本当に空包での訓練だったんですか?」
「ああ?これか?実は俺が勝手に空包って呼んでるだけで、本当の名前はシャドウ・バレットだ。」
リーベは周囲を見渡し、二人の隣を歩く。闇に侵食された自然を鑑賞しながら、動物でもいないかと好奇心が彼女の目を森へと向けさせたのだ。
「シャドウ・バレット?そんな弾もあるんですか?」
隣でフォーゲルとジンクスは、その弾に関する話を交わす。先ほどまで殺伐と戦っていた彼らだが、あくまでそれは訓練の一部に過ぎなかった。
「ああ、今回ドミナントで新しく開発された訓練用弾薬らしい。俺も実は初めて使ったんだがな。」
「あー、そういうことでしたか。」
ドミナントとは、フリーデンで武器を製造する最も有名な会社の一つだ。そこでこの弾は「シャドウ・バレット」という名前で新しく開発された、一種の訓練用装備だった。
「弾が途中で何かが落ちていくのを見たろ?あれは俺が聞いたところでは『解体技術』とか言ってたかな?とにかくそういうもので、見た目は実弾と変わらないが、空中で回転する時に自動的に分離して、先端の鈍い部分だけが残るから遠距離用の訓練に適しているらしい。そして、その弾が飛んできて物体に触れるとすぐに破裂して、こうやって塗料が付くってわけだ〜しかもこれは蛍光塗料でな…」
理論的な説明をするジンクス。フォーゲルはその話を聞きながら、すでに別のことを考えている最中だった。そしてリーベもやはり空ばかり見ていた。
「おい!お前が聞いたくせに、聞いているフリもしないのかよ!」
「あ、ごめんなさい。」
自分の話を無視するフォーゲルにジンクスが突っ込みを入れる。もちろんフォーゲルは、うわべだけの謝罪をするだけだった。彼らは教官と訓練兵という垂直な関係では珍しい、じゃれ合うような様子だった。
部隊に戻り、武器を整理する。そしてすぐに就寝の準備をし、リーベは女性兵舎のテントへと去る。フォーゲルは挨拶をして、広いテントへ行き、硬い床を背にして横になる。
「今日の俺、ちょっとかっこよかったな…」
自分の手を持ち上げ、いろいろな方向に回して見て、自らを褒める。もちろん周囲にはすでに寝入っている他の兵士たちがいたため、心の声に近い小さな声だった。
次の日の朝、朝早くから起きて集まり点呼が始まる。最初は緊張していた点呼も4週目に近づくと、かなり慣れてきた。
「33番、フォーゲル・フリューゲル!」
「はいっ!」
「34番、リーベ・ロートゥス!」
「はい、ここにいます!」
途中、合計5つの番号が飛ばされた。他でもない戦死者の番号だった。そして番号が飛ばされ、名前を呼ばれた兵士たちは表情が沈んでいて、どこか寂しそうに見えた。その様子を見守るのは今日で4日目だが、まだ慣れていなかった。
「一等兵さん…」
「もうやめよう。これ以上懐かしむのは、軍人として一等兵さんに対する礼儀ではない気がする。」
リーベがホーケルを思い出させると、フォーゲルがそれを制する。最大限断固として言ったのだが、表情はこわばっており、声が少し震えていた。
そして今日も二人の少年兵、そして訓練兵は訓練を続ける。いつものように寒く、過酷な訓練だった。ジンクスも徐々に訓練の強度を高めているため、さらに疲労がたまりがちだった。
疲れた体をひきずり、リーベは女性兵舎へ、フォーゲルは男性兵舎へと向かう。そこで彼らを待っていたのは、日課を終えてカードゲームをしたり、おしゃべりをしたりする兵士たちだった。
フォーゲルは彼らと交じり、雑談を交わし始める。
それぞれに大変な一日を過ごした兵士たちの中でも、少年兵であるフォーゲルは特に他の人々の目に留まった。
「お、来たか?フォーゲル。」
フィンが短い自分の亜麻色の髪を掻きながら話しかける。彼はホーケルの出来事を乗り越えたようで、いつものおどけた様子にいくらか戻っていた。もちろん、まだ寂しそうな様子が少なくなかった。
「上等兵さん!僕が勝ちました!」
フィンが気を取られている間に、隣でオアンがフィンにカードを突きつけながら叫ぶ。フォーゲルはそれを見て、疲れが吹き飛んだように笑い声を上げるだけだった。
「おい!挨拶している間にカードを奪うのはひどすぎるだろ!」
二人の馬鹿はそうやって日常的な会話をする。だが、後ろから紫色の髪をなびかせた誰かが登場する。
「お前たち、うるさすぎるだろ。少し静かにしろ。」
ティエルシが二人の馬鹿に近づき、不平を言う。いつものように高飛車でとげとげしい口調だった。
「ティエルシ〜お前、本当は参加したいんじゃないのか?毎日この時間帯はアベルとばかり一緒にいただろ?偵察しながら。」
フィンがいたずらっぽい笑みを浮かべながら、ティエルシに来るよう手招きをする。隣でオアンも意地悪く笑っているのは同様だった。
ティエルシとアベルは今日、別の兵士が小隊長の指示で夜間偵察任務を負ったため、することもなく休んでいた。
「私があなたたちのような馬鹿と遊ぶわけがないだろう?今日は単に偵察任務を別の奴が引き受けたから休んでいるだけだ。」
ティエルシは髪をかき上げ、落ち着いているふりをして拒否する。だが、すでに彼の目はカードに釘付けになっていた。
「フォーゲルとティエルシ、お前たちも加わってやるぞ〜」
「え?僕もですか?」
「当然だろ?そういえば、お前は毎日戻ると寝るだけだったからできなかったが、今回はやってみよう。」
フィンがついにフォーゲルとティエルシも呼び込み、4人でのカードゲームが始まる。
「…」
ティエルシは拒否する時は頑なだったが、いざ強制的に加わると、4人の中で最も真剣にゲームをしていた。
「.....あいつ…加わらないのか?」
ティエルシは、せっかくの休息なのに隅っこでしゃがみ込み、テントの掃除ばかりしているアベルが心配になった。
「おい!アベル!お前も来い!」
「…?」
アベルが一瞬首を回してティエルシを見つめる。彼の金色の瞳には戸惑いが浮かんでいた。
「アベルも呼ぶのか?まあ、いいぞ!」
快くフィンが承諾し、ついに5人へと人数が増える。ストーブ一つに頼る寒くて狭い兵舎のテントだったが、彼らには情という温かさが心を潤していた。
.........
「ふぁあ〜」
「上等兵さん…これで僕の5勝ですね。」
「ありえない!おかしいだろ!ああ、フォーゲル!なんで俺だけ集中攻撃するんだよ!」
「それは一番点数を取りやすい相手だからですよ…」
フィンだけを集中的に攻略し、結局3回ゲームをしてすべて勝ち取ったフォーゲル。実はオアンもこれに同調し、あくびをしながらフィンばかりをいじめていた。
「あ、俺も取られた…」
「おい、ひよっこ!」
「はいっ!?」
オアンは油断してフォーゲルにやられてしまう。そして
ティエルシが突然自分を呼ぶと、大きく戸惑うフォーゲル。彼らは顔見知りではあるが、実際には会話も交わしたことがなかったため、親睦を深めるためにティエルシがさりげなくフォーゲルに近づいたのだ。もちろんこれはフォーゲルにとっては脅威として感じられたのだが。
「お前はなんであの馬鹿ばかり取るんだ?私とも勝負しようじゃないか。」
その言葉を最後に、フォーゲルとティエルシの間で真剣なカードゲームが始まる。カードをめくる音だけが残り、とうに脱落したオアンとフィンはそれをじっと見守る。
「........勝った…」
そして最終的な勝者はアベルだった。二人が心理戦をしている間に漁夫の利でカードを置き、結局一番静かだった彼が勝ったのだ。
「おい!それはずるいだろ!」
「あ、負けましたね…」
フォーゲルは敗北を受け入れるが、ティエルシはアベルに拗ねたかのように顔をぷいと背けて立ち去ってしまう。そんな二人の関係を、フォーゲルは推測することができなかった。




