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閃光の瞬間

空から落ちるミサイルは、フォーゲルとリーベの故郷ともいうべきシュティンゲン村を猛烈に引き裂いた。その閃光は村を焼き尽くし、建物を木の枝のようにへし折った。

「…これは…」

リーベは呆然としてそれを見つめ、絶望していた。彼女の表情は、つい先ほどまでの生気が失われており、手に持っていた斧は、すぐに手から力なく落ちた。

燃える村を見て、少年は震える声で現実的な言葉を発する。

「おばさんを探すぞ…!」

少年は少女の手を強く握り、真紅に包まれた村へ向かって、ありったけの力で走り出す。彼の表情はリーベの目には見えなかった。彼が涙を流し、怒りで燃え盛る表情を背中で隠しながら走っていたからだ。

村に到着すると、最初に見えたのは人々の悲惨な姿だった。空の爆撃機を突き破って聞こえる悲鳴、爆撃を受けて全身が破裂し、血が噴水のように吹き出した人間の形、そして、火に焼かれて全身がミイラのように干からびていく、形を留めない誰かがいるだけだった。

「イアンのおじさんが… ホラお姉さんが…」

「見るな!今は家に着くことに集中しろ!」

少年は、以前親しかった村人たちの遺体を見て名前を呼ぶ少女の口を片手で塞ぎ、相変わらずもう一方の手は握ったまま、そこで初めて顔を合わせた。リーベが見たフォーゲルの顔は、獣のように野蛮だった。彼の金髪と青い瞳は、今や彼の感情をさらに激しく表す媒体となっているに過ぎなかった。

口を塞がれた少女は、言葉を最後まで発することができず、ただ涙を流しながら、火に焼かれる人々を後にして少年と走り出す。走りながらも、やはり見覚えのある顔があったが、フォーゲルの野蛮な表情を見ては、知らないふりをするしかなかった。

リークケアと住んでいた家があった場所にたどり着くと、炎と共に崩れ落ちた建物の残骸が見えた。フォーゲルはそこで初めて少女の手を放し、素早く崩れた家へ行き、火に焼かれて皮膚が溶け落ちる苦痛を必死にこらえながらリークケアを探す。

「ここにはいないはずだ… おばさんは… きっと… 別の場所に避難したんだ…」

少年は現実を否定しながら、ひたすら残骸を掘り返す。リーベもそれを手伝い、共に苦痛を分かち合い、リークケアがいないことを願う気持ちを共有しながら、壊れたその場所を掘り起こす。

空からの爆撃はすでに終わり、今は炎だけが残った状態だったため、リークケアが生きているという「もしも」は、実際にあり得る可能性だった。その遺体を見るまでは、だが。

「フォーゲル…」

少女の頬に涙が流れ落ちる。彼女の瞳は、炎から出る光の反射によって見えない。しかしフォーゲルは、自分の名前が呼ばれた直後、すぐに悟った。リークケアが発見されたことを。

「おばさん…………?」

「うっ…くっく…うっうっ……だめ…だめだよ……くっ…くっく…」

少女がすすり泣きながら残骸の中を見つめる。彼女の可愛らしい顔は、すでに涙と鼻水、唾液という分泌物で覆われて久しかった。

フォーゲルとリーベは、リークケアの遺体を呆然と見る。彼女はフォーゲルの母親の友人で、生まれた瞬間から両親を亡くして孤児だったリーベが、先に彼女に引き取られて育てられていた。リーベが引き取られた理由は、他でもないリークケアの広い心と賢明な人柄のおかげだった。彼女は見返りを求めずにリーベの面倒を見ており、たとえ食べ物が底をついても、子供を捨てるような人では決してなかった。後にフォーゲルの母親が亡くなり、フォーゲルも一緒に育てられるようになり、リークケアは二人の出会いを繋いだ接点のような存在だった。

その大切で家族のようだった黒髪の女性は、今やもう人の形をしていなかった。彼女の通った鼻筋と美しい二重まぶたがあった顔には、現在、脳髄が流れ出し、鼻は奇怪にねじ曲がっていた。また、細く優雅だった腕と脚は、崩れた家の残骸のように体の方に折れ曲がっており、残骸に敷かれたせいで、さらに肉体が崩壊していた。

「は…早く出してあげよう…!!」

少年は震える声で言い、15歳の体で炎を顧みず、リーベと力を合わせ、残骸からリークケアを運び出す。

リークケアを詳しく見てみたが、彼女の目はすでに生気がなく、市場で売られていた魚のように死んでいた。

「おばさん… おばさん… 生きてるんだろ…?な…?そうだろ…?」

フォーゲルは現実を否定しながら、リークケアの遺体を抱きしめる。彼女の血がフォーゲルに移り、流れ落ちる。リーベも母親同然だった彼女を見て、脳髄が流れる顔に自分の顔をこすりつけるしかなかった。

「リーベ…行くよ。」

「どこへ行くの…?」

少年が「行く」と言葉にすると、少女はすすり泣きながら、どこへ行くのか尋ねる。その言葉には、単純な好奇心、行く当てもない少年の境遇への心配、自分を置いていくのではないかという恐れが、全て込められていた。

「軍隊に。」

そう言って、フォーゲルはリークケアを自分の腕の中から解放する。現在、フリーデンは兵力が非常に不足しており、国際法を破って少年兵も強制的に徴用している状態だった。しかし、その過程を経てもなおフリーデンは負け続けており、ウンステアがなぜこの民間人の村を襲ったのかは、二人の15歳の子供たちにとっては依然として疑問のままだった。この村は毎日雪が降り、寒い地域に位置しており、軍人もここまで来て少年たちを兵士として連れて行くことはなかったが、フォーゲルは堂々と自ら入隊を宣言したのだ。そして、その言葉を聞いたリーベは、頬をリークケアから離して言った。

「そこは危険だよ…いくらあなたが…ウンステアが…世界が…憎くても…あなただけは…」

少女は危険だから行かないようにと懇願するが、この事態が起こった以上、少年のその決意は決して折れないだろうと予想できた。

「俺だけが行くから心配するな。俺が必ずこの戦争をフリーデンが勝つように、あいつらを殺してやるから。」

フォーゲルの鉄壁のような言葉は、決して哀願には変わらなかった。

彼は拳を握りしめ、リークケアの遺体を楽な体勢に寝かせると、言葉を続けた。

「お前は純粋で、まだ世の中が平和であることを願うようなやつだから、静かな所へ行って暮らせ。俺は俺だけの道を切り開く。」

フォーゲルがリークケアを完全に安置し、背を向けて立ち去ろうと別れを告げようとしたその時、リーベはようやく今までの優柔不断でいかにも少女らしい返事を止め、彼の肩を白い手で掴んだ。

「私も行くわ。」


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